06.09.2025
サッカーはボールではなく、人とつながるスポーツ！ ペアリングの理解を深めるトレーニング
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「ボールを前進させるための必須アイテム"ペアリング"」。多くの選手が「ボールを受けること」が目的となってしまう現象を解消し、サッカーの原則である「味方とつながってプレーする」技術を身につけるトレーニングを紹介したい。
そのために必要なペアリングの概念と、状況に応じたポジショニングの原則について、指導歴12年目を迎え、小学生を対象に2つのスクール（蹴和サッカースクール/対人式スクール）と1つのチーム（FK JADRAN）で指導を行うCorsole FA代表の清宮優斗コーチに教えてもらった。
「ボールと目的の両方とつながる」ペアリングの概念を身につけるとともに、「味方を見るタイミング」にアプローチすることで、ボールを受けるだけでなく、次のプレーを見据えた認知・判断・実行を養っていく。（文・鈴木智之）
ボールを受けることが目的ではない
COACH UNITED ACADEMY動画、前編のテーマは「サッカーはボールではなく、人とつながるスポーツ！ ペアリングの理解を深める」。最初のトレーニングは「パス交換の基準・パスを受ける4つの状況」を実施。
清宮コーチは「サッカーにおいて、ボールを受けるのは目的達成のための手段であり、目的は他に存在することがほとんどです」と説明。この場合の目的とは、ドリブル、パス、シュートなど、次のプレーに移行することだ。
ここでは、以下の4パターンでパス＆コントロールのトレーニングを行っていく。
1：角度なしでのハーフターン
2：止まって受ける（フリー）
3：離れて受ける
4：寄って受ける
技術的なポイントとして、清宮コーチは「軸足のブレーキを外す」ことを強調。軸足をジャンプしながら、軸足よりも目的地側でボールに触ることで、スムーズなターンが可能になることを指導していった。
ペアリングの概念で視野を広げる
続いて清宮コーチは「ペアリング」の概念を説明。「ペアリングとは、ボールと目的の両方とつながるという意味で、ボールと目的地を線として結んだ交点がいいポジショニングです」と説明。
ここで重要なのは「見るタイミング」だ。「ポジションをとっている時は味方を見て、ボールの移動中、もしくはボールを触った時には相手を見る」という原則を徹底。
さらに「ボール、味方、相手」の順番で見ることを指導し、「しっかり見なくてもいい。ぼんやりと見ることで、より多くの情報を取り入れることができる」とアドバイスしていった。
続く「ペアリング概念パス」のトレーニングでは、DFをつけることで、相手と駆け引きしながら、味方とつながる考えを身につけていく。
ここでは、以下の流れで実施。
1：縦パス
2：リターンからの縦パス
3：DFが食いついてきたら縦パスを入れてリターンを受ける
清宮コーチは「ボールが出る前にディフェンスが食いついているんだったら、（パスを1つ）飛ばしちゃおう」と声をかけ、相手の動きに応じた選択肢を提示。また、「2人以上の味方とつながることが基本」と強調し、1人だけとのペアリングでは選択肢が限られてしまうことを説明していく。
さらに、「声でもつながれる」として、コーチングの重要性にも言及。「周囲を見忘れてしまう時や、ボールを保持している選手がいっぱいいっぱいの時は、周りのコーチングでペアリングさせてあげることができる」とアドバイスし、チーム全体での連携の大切さを伝えていった。
4対1で実戦的なペアリングを習得
前編最後のトレーニングは「4対1ロンド」でペアリングの意識を強化。パスの優先順位は「対面の選手」「逆サイド」「同サイド」の順で、それも無理ならDFからボールを隠しながらプレーする。
清宮コーチは「最低2人以上の味方とつながることが重要」と話し、「ボールを持っている人と目的地を結んだ線が交わるところがいいポジショニング」とアドバイス。
また「相手が来ていない時はコントロールし、プレッシャーが来ている時はワンタッチでプレーする」という使い分けについても言及。
「ワンタッチの選択肢を常に持ちながら、相手の状況を見て判断することが大切」と、判断力の向上を促していった。
以上で前編のトレーニングは終了。清宮コーチは「前編では味方とつながる意識づけにフォーカスしてトレーニングを行いました。適切なタイミングで何を見るかが大切で、最終的には相手を見て判断できるよう指導していきます」と総括した。
今回のトレーニングでは、清宮コーチがディテールを細かく説明しているので、「何が大事なのか」が非常にわかりやすい動画になっている。
このエッセンスがチームに浸透すれば、ボールポゼッションや前進において、主導権を持って試合を進めることができるだろう。ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画を繰り返し見てコーチングのポイントを理解し、チームに落とし込む際の参考にしていただければと思う。
【講師】清宮優斗／
埼玉県にて18歳の時に指導者を志しその道へ。指導者8年目からはフリーランスで活動を始め、これまでに6つのスクールやチームにて指導。現在は2つのスクールと1つのジュニアチームで指導をしており、自身のCorsole FAでは、パーソナルトレーニングという形で、『関わる人の心に寄り添う』という指導者フィロソフィーのもと、選手のみならず保護者の心にも寄り添う形で活動している。埼玉県坂戸市トレセンスタッフとしても活動。
取材・文 鈴木智之
