10.14.2025
エコノメソッドで賢い選手を育成する指導者が解説! 守備から攻撃へのトランジションを改善する方法
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「エコノメソッド的ゲーム分析とプランニング」。講師はアメージングアカデミー山梨の監督を務める、パウ・ガルナチェ氏だ。パウ氏は認知を重視したエコノメソッドのコーチとして「賢い選手」の育成に注力している。
前編のテーマは「試合映像の分析とトランジションの重要なコンセプト」。エコノメソッドが定義するトランジションのポイントを、アメージングアカデミー山梨U-13の映像を見ながら解説していく。(文・鈴木智之)
エコノメソッドが重視する「認知」と「質問」
パウ氏が指導するアメージングアカデミーでは、エコノメソッドを採用している。
エコノメソッドとは、スペイン・バルセロナで発祥した「認知」を大事にしたメソッドで、「自分の周りで何が起きているのか」を把握し、それに基づいたプレーを行うことを重視している。
「エコノメソッドはゲームに近い状況をトレーニングで作り出し、ゲームでサッカーを理解するところにフォーカスしています。我々は賢い選手の育成を目指しており、質問を通じて、選手がよりゲームを理解できるように促していきます」
今回の動画では、U-13の試合映像を見ながら、分析して課題を抽出していく。そこから攻撃時のトランジションのポイントについて説明。
「前回の試合では、クローズドリカバリーの場面で課題が見られました。クローズドリカバリーとは、ボールを奪い返した後、周辺に多くの相手選手がいて、ボール保持者にあまり時間がない状況です」
動画では、ボールを奪った選手の周りに5名ほどのチームメイトがいるのだが、誰もリアクションを取れていない場面があった。
「このような状況でパスをつないでも、相手からプレスを受けてしまい、簡単にボールを奪われてしまいます。一方、良い例では2人のチームメイトが動きながらボールを受け、別の場所にボールを逃がすことができています」

3つのレーンに選手を配置する
オープンリカバリー(注・ボールを奪った後、周囲に相手選手がいない状況)の場面では、さらに別の課題が浮かび上がった。ボールホルダーに時間とスペースがあるにもかかわらず、周囲の選手の動き出しが遅く、パスコースが作れなかった場面だ。
「相手のディフェンスラインとミッドフィルダーのラインの間に大きなスペースがあるので、中盤の選手、ウィングの選手は、そのスペースにサポートする必要がありました。しかしその動きがなかったので、ボールを下げざるを得ない状況になってしまいました」
周囲の動きで重要なのは、3つのレーン(中央、左サイド、右サイド)に選手が配置されることだ。これにより、ボールホルダーは複数の選択肢を持ちながらプレーできる。
パウ監督は良い例として、右、左、真ん中の3つの選択肢を持ちながら、最終的にシュートまで持ち込めたカウンター攻撃を紹介。詳細は「COACH UNITED ACADEMY」の動画で確認してほしい。
ボール周辺の選手が認知しておくこと
ゲーム分析で抽出した課題を、どうトレーニングに落とし込むか。パウ監督は「これらのアイデアを元に、我々は1週間のプランニングを立てていきます」と話す。
まずはポイントの整理からスタート。トランジションが起こる前に、ボール周辺の選手が認知しておくことにフォーカスしていく。
「ボールを奪う可能性の高い選手、あるいはボールを奪った選手に対して、周辺のディフェンダーが、今しているマークを振り切り、違う選手へアプローチに行きそうなのか。それと同時に、どのようにプレスしてくるのかを認知しておく必要があります」
動画では具体的に、どのような種類のサポートがあるのかを説明し、トランジションの際の優先順位、トランジションの終点についても言及。
「トランジションの終わりは、相手が2ラインの守備を作った時点です。トランジションとはアンバランスな瞬間であり、相手チームの立ち位置が整理されたら、トランジションは終わったと考えます」
動画ではエコノメソッドが考えるトランジションについて、どのような考え方のもとでプレーするのかを、パウ監督が紹介している。トランジションの考え方を整理するためにも、ぜひ動画を視聴し、日々のトレーニングに役立ててほしい。
次回の後編では、トランジションのコンセプトを選手に落とし込むための、1週間のプランニングを紹介する。
【講師】パウ・ガルナチェ/
1995年生まれ。2019年から2021年までFA THAILANDにてチーフアナリストとして活動。2021年にはVILLARREAL ACADEMY SYDNEYにて監督をつとめる。その後REALRACING CLUB DE SANTANDERでチーフアナリスト、2023年にPAFOS FCでは監督及びメソッド部門部長を経験して現在に至る。
取材・文 鈴木智之