07.19.2016

介入の度合いはそのときのシチュエーションで決まる/FC東京育成マイスターが紐解くコーチング学③

７月のCOACH UNITED ACADEMYでは、FC東京の育成哲学を紹介中。最終回となる今回はFC東京の普及部長・川村元雄氏が、自身の指導経験をもとに「選手や保護者との関わり」をテーマに様々な状況や問題に出会う中で、どのように対処すればいいかをレクチャーしてくれた。ここでは一部を紹介したい。（取材・文　鈴木智之）

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■子供が話したくないときはあれこれ言わずに見守ってあげる

川村氏の講義のテーマは「指導現場における疑問、不安について」。担当するカテゴリーを問わず、選手の状況やレベルに応じて、様々な疑問や不安が生じるのがサッカーの指導である。川村氏は選手に対する保護者の関わりについて「試合でうまくいかないとき、家でのフォローの仕方について、どうするのが良いのでしょうか？」と語りかける。

たとえば、子どもがサッカーの試合を終えて家に帰ってきたときや、試合会場への送迎の車中において、どのような会話をするのが望ましいのだろうか。試合でうまくプレーができたとき、子どもは放っておいても「聞いて、聞いて」という形で、饒舌に喋ってくれるもの。しかし、試合で思うようなプレーができなかったり、負けてしまったときは、口数が少なくなりがちだ。保護者としては、そのようなときこそ子どもの力になってあげたいと思うのが、正直なところだろう。

その際に川村氏は「保護者の側から意見を言うのではなく、まずは子どもの意見を聞いてほしい」とアドバイスを送る。そこで大切になるのが「タイミング」（川村氏）だという。

「たとえば、保護者が子どもに対して『今日の試合、負けて悔しかったね』と声をかけたとします。そこで、子どもの方から話をする素振りがあれば、続けて聞いてもいいと思いますが、いまは話をしたくなさそうであれば、あれこれと言わずに見守ってあげることが大切です」

■指導者と保護者がバランスよく声掛けするのが理想

「子どもたちは、勝ちたいと思って試合をしています。そこで負けてしまったときに、『相手が強かったね』と素直に言って、次は彼らに勝つためにどうすればいいかを考える指導者と、周囲のせいや子どものせいにする指導者とでは、子どもの成長という視点から見ても、大きな差が出ると思います。子ども達はたとえ試合に負けたとしても、次の目標に向けて、気持ちを取り戻す性質を持っています。その気持ちをサポートするのが、我々指導者の役割ではないかと思います」

指導者と保護者が力を合わせて、子どもを成長に導いていく。そのスタンスが望ましい。川村氏は「指導者は『子どもを自立させること』を目的のひとつとして、サッカーの指導に当たっています」と語る。保護者の側としても、子どもを自立させたいという思いは同じだろう。川村氏は言う。

「子ども達には、サッカーを通じて、自分のことは自分でするということを学び取ってほしいと思っています。それは、指導者と保護者、そして選手との間での共通語になりうると思います。自分のことを自分でできたときに、指導者や保護者ができることは、その子を褒めてあげること。褒められると子どもはうれしいので、次も自分でやろう、今度は違うことにチャレンジしようという気持ちが湧いてきます。その意欲が成長につながるのではないでしょうか」

川村氏の講義は指導者の立場だけでなく、ときには保護者の視点から、子どもに対してどう接すれば良いかというアドバイスが送られる。指導者、保護者というふたつの立場で子どものサッカーに関わるお父さんコーチの方などは、とくに参考になる話が聞けることだろう。ここでは長い講義のほんの一部を紹介したにすぎない。ぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画を視聴頂き、川村氏の指導エッセンスに触れていただければと思う。

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＜プロフィール＞
川村元雄（かわむらもとお）
東京都豊島区出身。徳島で育成普及に携わり、JFAキッズプロジェクトのメンバーやJFA公認指導者インストラクターとして活動。2010年のFC東京へ加入後、子どもたちへの指導に加え、指導者インストラクターとしても豊富な経験を活かす。2015年、普及部長に就任。

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