05.26.2025
プレッシャーを受けても前へ運ぶ! 相手を引きつけるパス交換とスペース活用トレーニング
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「自陣エリアで前からプレスをかけられた時のボールの前進方法」。現代サッカーの特徴である「ハイプレス」をかいくぐり、どのようにして相手ゴールに迫るのか?
そのために必要な相手を引きつける技術と、状況に応じたパスの原則について、鹿島アントラーズアカデミーで15年間の指導経験を持つ、蹴和サッカースクール代表の上田原剛コーチによるトレーニングを紹介したい。
「まず考えて頂きたいことが「そもそもサッカーとはどんなプレーなのか?」ということ。この出発点がズレるとトレーニングに一貫性がなくなり試合に活かせなくなってしまいます。蹴和サッカースクールでは、
サッカーとは戦い。ゴールを奪う、ゴールを守る。
そのためにスペースと時間を奪い合う戦いである。
攻撃ではどこに相手ゴールへのルートがあるのか?
また守備ではどのように相手のゴールルートを遮断するのか?
それを個人ではなくチームとしてやる戦いである。
と定義しています。」と上田原氏は言う。
「相手を引きつけることや手前と奥の使い分け」を身につけるとともに、「パス交換の原則」にアプローチすることで、前線からのプレッシャーに対応できる、実践的なサッカー観と技術を養っていく。(文・鈴木智之)
相手により多くの影響を与えるプレー
COACH UNITED ACADEMY動画、前編のテーマは「ボールを前進させる為のパスの原則とグループでの共通認識」。ウォーミングアップでは「5対2」を実施。攻撃側はボール2つを使用し、片方のボールは足で、もう片方のボールは手を使ってパスを回す。
12本で「貯め1」を目標に、足でのパスが守備側に奪われそうになったら、攻撃側は手でボールを持ち、防ぐことができる。その際、もう片方の手でパスをしているボールを足でのパスに変更。このようなルール設定で、相手を引きつけることの重要性を体感させていく。
上田原コーチは「いいプレーというのは、相手により多くの影響を与えるプレー」と声をかけ、「目の前の相手と戦うのではなく、2人目、3人目と戦うことが重要」と、効果的なプレーの概念を、デモンストレーションを交えて指導。
加えて、スペースの使い方にも言及し、「中に人がいるから外の人が有効になり、外に人がいるから中が有効になる」と、ポジショニングの相互関係の重要性を伝えていった。

角度をつけてパスを受ける基本原則
続いて上田原コーチは「パスの3つの原則」を説明。「パスをもらうときは、必ずボールに対して角度をつけましょう。これは絶対原則」と話し、移動中に状況を確認することの重要性を伝えていく。
「1回目で状況確認、2回目でボールの移動中に一番近いディフェンスが来ているのか、来ていないのかを確認しよう」とアドバイス。
他にも「斜め後ろに下がりながらのサポート」時の具体的なポイントや、様々なパス交換のトレーニングを実施しているので、詳細はぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画で確認してほしい。
6対3で手前と奥の使い分けを練習
前編最後のトレーニングは、実戦に近い「6対3」の状況で、手前と奥の使い分けにアプローチしていく。
設定としてはコートを2分割し、Aのグリッドで5対2を実施。パスを10本回すことを目標に、3本パスが回った時点で、Bのグリッドから1人、守備が助けに入ることができる。さらに攻撃側はパスが3本回った時点でBのグリッドにパスを出し、そちらのグリッドでパス回しを継続することができるというルールだ。
上田原コーチは「いつ手前を使った方がいいのか、奥を使った方がいいのか。その使い分けの練習です」と話し、「同数になってやばいと思ったら、スペースへボールを出し、相手の変化、様子を見て判断しよう」と声をかけていく。
続いて「3人目のDFがこっちに来るかどうかで、手前なのか奥なのかの判断をしてください」と問いかけ、守備の人数に応じて、ボールをどこへ運んでいくかを指導。それによってリズミカルにボールが動き始めていた。
最後はシュートに持ち込む形にトライ。そのために、どういう風にボールを動かすことで、奥のスペースに運ぶことができるのか。具体的な動きを説明しながらトレーニングしているので、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画を見て、コーチングの内容を注視していただければと思う。
以上で前編のトレーニングは終了。
上田原コーチは「ウォーミングアップとして、ボール2つを使い、鬼ごっこ形式で相手を引きつける、奥のディフェンスと勝負をすることを伝えました。次にパス交換の原則、そして6対3のボール回しで、手前と奥の使い分けというテーマで行いました」と総括した。
後編では、より前からプレッシャーが来た状態でトレーニングを行い、人とスペースを同時に守ることができないディフェンスの特性を逆手に取った攻撃を磨いていく。
【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。
取材・文 鈴木智之