08.17.2026
コーチングの専門家が直伝! 選手の個別欲求を見つけ、才能を伸ばす接し方
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
前回より「子どものまだ見ぬ才能を引き出す、指導力を最大化させるコーチングスキル」をテーマに、株式会社アウェイクの森田市郎氏による講義を公開中。
前編では、サッカーコーチの上田原剛氏との対談を通じて、コーチの在り方やコーチングの役割について紹介した。後編では才能の定義と「その子らしさ」をどう見つけ、指導によって伸ばしていくかを解説してもらった。(文・鈴木智之)

才能とは「息をするようにできること」
森田氏はまず、「才能」の定義について問いかける。
「才能とは人より秀でていること、活躍するための武器など、さまざまな定義があるかと思いますが、私たちのコーチングでは、才能とは息をするようにできること、かつ人の役に立つことだと定義しています」

食欲や睡眠欲といった生理的欲求と同じように、無意識のうちにしてしまう行動こそが、才能の種であるという。
「意識しながら呼吸をしている人がいないように、気づいたらやってしまっている。それが才能に近いものです。だからこそ多くの人は、自分にとって当たり前すぎるがゆえに、才能になかなか気づくことができません」
それを見抜くことができれば、選手一人ひとりに合った才能の磨き方や、適材適所の配置が見えてくる。
「個別欲求」に才能の種が眠っている
森田氏は、生理的欲求と同じ構造を持ちながら、一人ひとり異なる欲求を「個別欲求」と呼ぶ。
「個別欲求とは、生理的な活動以外の分野で、体が勝手に動いてしまうことです。その行動そのものが、本人にとって快感になっている状態を指します」
指導現場では、選手が注意されているにもかかわらず、繰り返しやってしまう行動に目を向けることも重要だと森田氏は語る。
「何度注意しても繰り返しやり続けてしまうことの中にこそ、その選手の才能の種が隠されているのかもしれません。そこには必ず、その子だけの個別欲求があります」
個別欲求を見抜くうえで森田氏が強調するのが、「名詞ではなく動詞に着目する」という視点だ。

「サッカーが好き、という言葉は選手全員が口にします。しかし、その中身を一人ひとりに聞いていくと、点を取ってヒーローになることが好きな選手もいれば、作戦を考えることが好きな選手、仲間をケアすることが好きな選手もいる。同じ『サッカーが好き』でも、そこに紐づく個別欲求はまったく違います」
この個別欲求を見抜くことができれば、選手一人ひとりに合った才能の磨き方や、適材適所の配置が見えてくるという。
ノウハウではなく「在り方」からしか人は導けない
後半、森田氏が時間を割いて語ったのが、指導者自身の「在り方」の重要性について。
コーチが選手に伝えたいメッセージと、コーチ自身の在り方が一致していなければ、その言葉は選手に届かないと指摘する。
「目標に向かって頑張れと言いながら、自分自身は挑戦もせず、目標も持っていない。そんな指導者の言葉には説得力がありません。ノウハウではなく、在り方からしか人を導くことはできないのです」
では、在り方をどのように磨いていけばよいのか。キーワードが「存在意義定義」だ。

「自分がコーチとして、選手たちにとってどのような存在でありたいか。これを言語化することを、存在意義定義と呼びます」
森田氏自身は、コーチという役割だけでなく、親、夫、経営者など人生における役割それぞれに存在意義定義を持っている。
「例えば親としての私は、子どもたちに一生分の勇気と知恵を与えられる存在でありたいと願っています。うまくいかないことの方が多いですが、その存在意義に立ち返って関わろうとする回数を積み重ねることが、自身の在り方を磨くことにつながっていきます」
この点においては、指導者として「自分がどう在りたいか」「選手をどう導きたいか」を明確にすることで存在意義が明確になり、行動が変わっていく。
その上で、選手の個別欲求を見抜くこと。そして指導者自身が在り方を磨き続けること。この2つが、子どものまだ見ぬ才能を引き出す鍵になるという。
詳しい内容やより具体的なエピソードを知りたい方は、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画で全容を確認してほしい。
きっと、選手と接する際の「新たな視点」が加わるはずだ。
【講師】森田市郎/
23歳の時に親友の自殺未遂を機にコーチングと出会い、「人の可能性を引き出す関わり方」を探究し始める。2017年にコーチ・講師として独立後、2,000名以上に個人コーチングを提供。現在はプロコーチ育成、セミナー講師、組織コーチとして全国で活動し、上場企業からベンチャー企業まで人材育成・組織開発を支援。小学校・中学校・高校・大学でもコーチングの授業を行う。コーチ経験13年、育成プロコーチ数700名、セミナー・セッション参加者は累計2万人以上。三児の父としても、子どもの"まだ見ぬ才能"を引き出す関わり方を伝えている。
取材・文 鈴木智之

