09.24.2026
少年団の指導者必見! "スペイン・カタルーニャ式"1日のセッション設計とコーチング術
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「カタルーニャ式1日のセッション設計とコーチング」。前編に続き、Jリーグの鹿島アントラーズや東京ヴェルディ、松本山雅FCでトップチームのコーチやメソッドダイレクターを歴任し、スペインに12年間在住して育成年代の指導にあたってきた、坪井健太郎氏による講義をお届けする。
後編では、1日の練習セッションをどう時間配分し、どの要素をどの順番で取り組むべきかというデザインの原則から、選手の認知・決断・実行にアプローチする「導かれた発見」型のコーチング術を解説してもらった。(文・鈴木智之)

疲労と学習曲線を交差させる

たとえ少年団であっても、日々のトレーニングは行き当たりばったりではなく、週末の試合のパフォーマンスを分析をして 課題を抽出し、 それに基づいたテーマを選びたい。
坪井氏が紹介するのは、75~90分の練習を「準備」「メイン」「最終」の3パートに分けるタイムマネジメントの考え方だ。
約15分の準備パートで強度を徐々に高めてウォーミングアップし、続く45~55分のメインパートで技術・戦術・フィジカルを統合的に鍛え、最後はストレッチをしながらフィードバックを交わす最終パートで締めくくる。
「大事なのは、頭を使う繊細なメニューほど、練習の最初に置くことです。時間がたって集中力が落ちた状態で、新しい技術を習得するのは難しいので、新しいアクションの獲得は、必ずフレッシュな段階で行うようにします」
坪井氏によれば、練習が進むにつれて脳の集中力は下がり、身体の疲労は反比例して高まっていくという。この交差する2つの曲線を理解した上で、練習を設計する必要があるのだ。
フィジカル要素にも順序がある
1日のセッションの中で「フィジカル要素を鍛える順序にも、原則がある」と坪井氏は言う。ここでは、コーディネーション、スピード・アジリティ、筋力、持久力の4つを、疲労が少ない順に配置していく考え方を紹介。
「スピードやアジリティは、疲労がたまると最大速度が出なくなるので、練習の早い段階で刺激を入れる必要があります。逆に持久力は、疲れた状態でもパフォーマンスを維持できるかを鍛える要素なので、最後に置くのが合理的です」
注意すべき点として挙げるのが、練習の最後にスプリントを行うことのリスクだ。
「疲労も乳酸もたまった状態でダッシュをさせると、肉離れなどの怪我のリスクが跳ね上がります。その日は大丈夫でも、繰り返していると数週間後に怪我をしてしまうことがあるので、気をつけてプランを組んでほしいです」
「導かれた発見」型のコーチング
サッカーのプレーは、周囲の情報を集める「認知」、最適なプレーを選ぶ「決断」、そして「実行」という3つのプロセスからなる。

指導者は目に見えやすい実行の部分だけでなく、認知と決断にどこまでアプローチできるかが重要だ。
「パスをカットされた選手に『なんでそこで取られるんだ』と言うのは、実行の部分しか見ていない良くない例です。『パスを出す前に相手の位置は見えていた?』というように、認知の部分に働きかける質問をしてあげることが大切です」
坪井氏はコーチングのスタイルを、答えを直接与える「直接的な命令」と、質問を通じて選手に気づかせる「Guided Discovery(導かれた発見)」の2つがあると整理する。
プロなど勝利が優先される場面では、前者が有効な一方、時間の余裕がある育成年代では、選手の主体性を育てる後者が重要になるという。
「質問をしたら、選手が答えるまで黙って待つことも大切です。答えられないからと質問を重ねてしまうと、選手にとってプレッシャーになってしまいます。選手が安心して考えられる環境をつくることも、指導者の大事な役割です」
指導の詳細や、それぞれの具体的な質問例をさらに知りたい方は、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」動画で全容を確認してほしい。

前編・後編を通じて坪井氏が伝えてくれたのは、選手を指示によって操作するのではなく、選手自身が解決策を見つけられる環境を設計することの大切さだ。
「指導者の仕事は大人のミニチュアを操作することではなく、適切な質問で気づきを与える『導き手』になることです」
これを頭に入れて指導をすることが、クリエイティブな選手の育成につながっていくだろう。
【講師】坪井健太郎/
2008年にバルセロナへ渡り、コーチングライセンスを取得。UEコルネジャとCEエウロパで高校年代を指導。現在ラ・リーガやスペイン代表で活躍する選手も多数輩出。2013年には指導者育成プログラムを展開する「プレサッカーチーム」を創業し、日本からのスペインコーチ留学の道を拓く。コーチ育成プログラム「PSTアカデミー」は現在14期目を迎え、これまで約50名の卒業生がJリーグや海外クラブで活躍している。2020年に帰国後は、東京ヴェルディ強化部メソッドダイレクター、鹿島アントラーズトップチームコーチ、松本山雅FCトップチームコーチを歴任。現在はプレサッカーチームを軸に書籍執筆・講演活動・次世代育成に取り組む。
取材・文 鈴木智之

