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ペップもバイエルンで実践した。フットサル戦術「エントレ・リネアス」とは?/鈴木隆二

大学卒業後にフットサル選手に転向しながら、フットサル日本代表のみならずイタリアやスペインでのプレー経験も持つ鈴木隆二さん。

現在、鈴木さんはバルセロナのSALA 5 MARTORELLというクラブでフットサルの選手としてプレーしながら、マルトレイ市が運営するフットサルクラブの育成年代の指導者としても活動しています。


■フットサル=数的同数の競技


カタルーニャ・フットサル協会のカジェ会長と共に「サッカーのためのフットサル講習会」を開催するなど、スペインと日本で精力的に「育成年代におけるフットサルの有効性」を打ち出す鈴木さんですが、そのきっかけについて次のように説明します。

「フットサルが数的同数な競技であるのに対し、サッカーは数的優位な競技です。数的同数なフットサルでは『どのようにしてサッカーと同じ数的優位な現象に持っていくか』という考え方からスタートするので、フットサルの戦術、個人技術・戦術、二人組の連携プレーというのはサッカーにも非常に有効だと考えています」

さらに鈴木さんはバルセロナを活動拠点とし、FCバルセロナの試合を頻繁に観戦するようになってから「バルサのポゼッションを可能にしているポジショニング、ボールの動かし方と逃し方がすごくフットサル的であることに気づきました」と述べています。
 
今回はそのバルセロナやグアルディオラ監督が今季から率いるバイエルン・ミュンヘンといった世界トップレベルのサッカー選手も行なっているフットサルの戦術「エントレ・リネアス」を紹介してもらいます。

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■「ライン間」とは、横だけではない

「エントレ・リネアス(Entre Lineas)」というスペイン語は直訳すると「ラインの間」で、鈴木さんによると、「エントレ・リネアスというのは相手ディフェンスのライン間に侵入していく動きのことを指します。ディフェンスのライン間というのは横のラインだけではなく、縦のラインも含みます」とのこと。

例えば、バルセロナのセスクが左インサイドハーフに入り、相手が4-2-3-1のシステムを採って守備ブロックを構築してくると、彼は右CB、右SB、右ボランチ、右サイドハーフで形成される四角形の真ん中にポジションを取ることが多くなります。

逆に、ブスケッツ、シャビは中盤でも低めのポジションを取る選手なので、1トップとトップ下のライン間、トップ下と両サイドハーフのライン間にポジションを取ってピケ、マスチェラーノといったCBからビルドアップのパスを受けることが多くなります。
 
バルサの各選手がエントレ・リネアスのポジショニングを取ることで相手はライン間のパスコースを閉じるかどうかの決断に迫られることになります。

しかし、パスコースを閉じるポジションを取ると当然バルサの別の選手へのパスコースを空けることになるため、安易にその決断を下すことができず、迷いと同時に時間と空間が生じます。

この観点でバルセロナの試合を見れば、セスクやイニエスタの効果的なエントレ・リネアスによってバルサの左ウイングや左SBがフリーでパスを受けていることに気づくはずです。

また、育成年代からエントレ・リネアスのポジショニングを意識させることで、「どこにスペースがあるのか、どこに味方がいて、どこに敵がいて、どこにライン間のスペースができるのかという認知能力が非常に高くなります」と鈴木さんは説明します。
 
「その動きを意識することで敵と味方の位置の把握も同時にしなくてはいけないので、味方と敵の位置の認知能力も高くなります。それからもう一つ、ライン間というのは常に移動し、場所が変わっていくので、継続して見つけ続ける、動き続けなくてはいけません。そうすると一人一人の味方の選手の距離感が一定に保たれます。ある程度保たれるというのがすごく大事なことで、そうなると三角形、四角形が形成しやすくなります」

また、鈴木さんは「常にボールに対して意味のあるポジションを取ることが大切です」と続けます。

「結果として、各選手がボールのないところでもゲームのイニシアチブを握り、縦と横のライン間のディフェンスに迷いを生じさせ、相手にとって嫌なポジション取りとはどこかを学ぶことで、スペースを共有する近くの選手同士の連携が向上します」

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■ポイントは「ランニング程度のスピード」

鈴木さんによれば、日本代表の試合でも非常に上手くエントレ・リネアスしている場面はあると言います。

しかし、「エントレ・リネアスが継続されていないことが多く、最終的に逃がしどころがなくてボールを失うということが散見されます」という課題も見えるようです。

このように試合においてはピンポイントではなく、継続的にエントレ・リネアスを行うことで本当の効果が現れます。

そのためのポイントは、「トップスピードではなく、ランニング程度のスピードでエントレ・リネアスをかけること」だと鈴木さんは説明します。

確かにバルセロナの試合を見てもメッシを筆頭に、セスクやシャビといった各選手は全力、トップスピードで走らず、ふらふらとジョギングをするような低速でポジション取りをしています。

グアルディオラ監督のバイエルンも含めて、鈴木さんは「欧州トップレベルのチームになると、エントレ・リネアスだけで相手ディフェンスのラインを突破して行ってしまいます。

スピードと技術だけを持って相手のディフェンスのラインを超えていくのではなく、ポジショニングだけで相手のディフェンスラインを超えていく。これこそがエントレ・リネアスの本当の効果だと思います」と話します。
 
昨年末に開催された講習会において、鈴木さんの指導実践ではエントレ・リネアスを導入するためにまずはシンプルなグローバルトレーニングから始めて徐々に内容を発展させながら、意図的にエントレ・リネアスを発生させ、ボールの逃しどころ、オプションが増えていくことを実感させる指導を行なっていました。

段階を踏んだトレーニングが必要となりますが、少なくとも日本においても育成年代の指導者が鈴木さんが提唱するエントレ・リネアスの重要性や有効性を認識する時期に差し迫っているのではないでしょうか。

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小澤一郎(おざわ・いちろう)
1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。(株)アレナトーレ所属。スペイン在住歴5年、日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、育成や指導者目線の原稿を得意とする。現在は多数の媒体で執筆の傍ら、サッカー関連のイベントやセミナー、ラジオ、テレビなどでトークもこなす。著書に『サッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『日本はバルサを超えられるか(共著)』(河出書房新社)、『サッカー選手の正しい売り方』(カンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書・監修に『レアルマドリード モウリーニョの戦術分析(オフェンス・ディフェンス編)』(スタジオタッククリエイティブ)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、『モウリーニョvsグアルディオラ』(ベースボールマガジン社)。

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