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体力づくりの「走り込み」はサッカーのトレーニングに効果的なのか?

中高生のサッカー部員向けフリーマガジン「Spike!」には、連日読者の中高生プレーヤー達から多くの質問が寄せられます。その中で多いのが「走り」に対する質問。

COACH UNITEDの読者である指導者のみなさんも「学生時代はとにかく走らされた・・・」という方も多いでしょう。サッカーにおける走りのトレーニングについて、どのようにアプローチしていけばよいのか。ヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチ谷真一郎さんに、選手からの質問に回答してもらいました。

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Photo:Team Run by Jarrett Campbell

Q1:走れる体力をつけたいんですけど、どうしたら良いですか?

ものすごくシンプルな質問ですが、奥の深い質問でもあります。

私がこの質問にシンプルに答えるとしたら『サッカーをすることによって、サッカーで走れるようになることが最も効果的である』となります。サッカーのフィジカル的な特性としては、『常に動く方向とスピードが変化し、「いつ、どこに、どのくらいのスピードで走るのか」ということが求められます。この判断なくしてサッカーで走れるようにはなりません。個人・グループ・チーム戦術を実践するサッカーのトレーニングの中で、判断したことを身体を動かして実践することを積み重ねていくのです。

走れる体力をつけようとした時、陸上競技的に長い距離を延々とランニングしたり、中距離を高強度で追い込んで走ったり、ピッチの端から端までのダッシュを何十本と繰り返したりしてしまうことを多く耳にしますが、これらの運動はサッカーの競技特性と一致していません。

サッカーの試合は90分ですが、実際にプレーしている時間(アクチュアリー・タイム)は約60分。そのうちの約70%はウォーキングとジョギングなどの有酸素運動、残りの30%はスプリントや連続した動きです。その30%の内の9割が30m以下、更にその5割が10m以内、というのがサッカーのゲームの中身です。

人間の身体はトレーニングしたことに適応していきます。サッカー的ではない走りのトレーニングは、「トレーニングをした」という充実感を得るのかもしれませんが、その後サッカーをした時に、動き辛さを感じませんか?何故なら、そのトレーニングがサッカーの動きに即していないからです。

私がボールを使わないでトレーニングをする時は、1,サッカーをする準備をするため、2,動きの質を上げるため、の2点を目的としています。後は、サッカー的に技術と判断を伴ったトレーニングの中で、サッカー的に走れる体力を養います。トレーニングの習慣的に、追い込んだトレーニングをしないと不安になる選手も多いかもしれません。

しかし、競技特性から離れた走り込みはゲームには活かされません。追い込み過ぎて怪我をしてしまいプレー出来なくなっては本末転倒です。サッカー的なトレーニングで身体をサッカーに適応させてゲームに臨む。そして「試合に勝ちたい」という思いで、持てる体力を駆使してギリギリの所で戦う。これが最も良いトレーニングとなり、この繰り返しがサッカーで走れる体力を養っていくのです。

ただ、ゲームに良い状態で臨まないと走れなくなるので、試合に向けた前日や前々日は試合当日に疲労が残らないように気を付けなければなりません。我々も、サッカーに必要な要素を試合当日に疲労が残らないようにデザインして取り組んでいます。サッカーに適応した状態の選手達は、頭も身体もフレッシュな状態でゲームに臨み、キレ良い動きを出来るだけ長く続け、ゲームの最後まで走り続けることができるのです。

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Photo:poU11.nov.indoor.practice1 by Potomac U11 Soccer 2013-2014

Q2:練習後、ただ走るだけのトレーニングは意味がありますか?

日々のトレーニング後のランニングは、走るスピードによって目的が変わります。スピードの違いの基準は走っていて足が張るのか張らないのか、つまり乳酸が出る強度なのが出ない強度なのか。足が張らないレベルのランニングは有酸素能力のベースを高める効果がありますし、乳酸が出る強度のランニングは乳酸に対する能力が高まります。つまり、何を目的にして、どのくらいのスピードでトレーニング後のランニングを行うかということです。

足が張らない強度のランニングは、サッカーのゲームの多くを占める有酸素レベルのエネルギー効率を上げることができ、節約出来たエネルギーを勝負どころで使えるようになります。乳酸が出る強度のランニングに関しては、可能であればサッカー的な判断を伴ったトレーニングで行っていきたいです。なぜなら判断を伴わない単純なスプリントやランニングは実際のプレーに繋がらないからです。

ゲームでの走りとは、「いつ、どこに、どのくらいのスピードで走るのか」ということが重要です。いくら走力を鍛えても、この判断が出来なければゲームで走れるようにはなりません。素走りをする時間があったら、サッカーをして判断力を養って下さい。それがゲームで走れるようになる近道なのです。

ただ、与えられた場所や時間、人数の関係でサッカーのトレーニングがやりきれない状況で、コンディションだけは維持、向上させたいという場合には、割り切って素走りで負荷をかけることは、一つの手段としてあると思います。

いずれの場合も、トレーニングの目的をはっきりとさせて行うことが大切です。


Q3:試合の最後まで走りきれるようになるためには、どうしたらよいですか?

持久力を高めるためには、2つのアプローチ方法があります。1つ目は、一般的な考え方でもある、心肺機能や筋肉の耐久性など、身体の持久的な能力に対してトレーニングをすること。
2つ目は、あまり普及していない考え方でもありますが、動きの効率を上げて持久力を高めていくというもの。つまり、求められる動きやスピードに対して、必要最小限のエネルギーで動いていくということです。
今回は2つ目の、効率の良い動きによって、エネルギーを節約し、持久力を高めていくということについて解説していきます。

具体的に良くある局面としては、スペースに出たボールを相手と競争してマイボールにしようとする時に、全力疾走で走ってしまう。全力疾走で走ると力みが生じてスピードは落ち、無駄なエネルギーも消費してしまいます。こういった状況で、力みを取り除き、自分が一番速く走れる出力感覚で走ることができれば、エネルギーを節約できるだけでなく、いつでも自分が出せる一番速いスピードで走り続けることができます。一番速く走れる出力感覚は、個人差がありますが、多くの場合、70%から90%のところにあります。それなのに、試合になると100%で走ってしまう。例えば、70%の感覚の時に最速で走れる選手が、100%で走ってしまうと、常に30%の力を無駄に消費していることになります。この積み重ねが試合での持久力を落としてしまうのです。まずは、自分の最速で走れる出力感覚を探る。そして、速さを求められる状況で、常にその感覚で動くことができるようにトレーニングしていくことによって、試合での持久力を高めていくことができます。

また、1対1の構えなども、重心を低くし過ぎると、ももの前に必要以上の力が必要になるだけでなく、全身に力みが生じ、次の動き出しも遅くなります。膝がつま先よりも前に出てしまうような構えではなく、肩と膝と拇指球が地面と垂直なラインにそろうくらいの構えをしてみてください。そして、その時のもも前の力の入り具合、次への動き出しやすさを比べてみてください。エネルギーを節約して速く動けることがよくわかると思います。

これらのことは、始めは意識して取り組む必要がありますが、それを繰り返していると、意識しなくても力みを排除して動けるようになってきます。また、この感覚で動けるようになってくると視野も広くなり、動きの心地良さも生まれてきます。トッププレーヤーで力んでいる選手はいません。是非、経済的な動きを身につけて、試合の最後まで走りきれる選手になってくださいね!


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谷真一郎(たに・しんいちろう)
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』

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