03.21.2014
スペインフットサルの強さの秘密は、基礎論理を基にした「準備」と「考えること」にあり
日本にはJFA公認の指導者ライセンスがありますが、海外にもそういった指導者ライセンスがあります。ブラジル、スペイン、ドイツ、フランス、イギリス、サッカー先進国の指導者ライセンスは日本のそれとは内容が異なり、熱心な日本人指導者のなかには、海外の指導者ライセンスを取得するためにその国に赴く人もいます。しかし、費用がかかるうえにその国の言葉がわからなければ、内容も満足に把握することはできません。日本で海外の指導者ライセンスを取得できたらいいのに。そんなふうに考えたことのある指導者も多いのではないでしょうか?
ブラジルではリフティングで「手を使ってもいい」
一般社団法人IFCO代表理事の伊藤聡氏は、7年前に一度サッカー王国を訪れている。現地のフットサル指導者ライセンスの取得を思い立っての行動だ。
「2002年からアミティエ・スポーツクラブという西日本で最大級のNPO法人でコーチをしていました。指導をもっと深く追求したいという願望と、ほかの指導者たちとの差別化を図りたいという気持ちから、ブラジルのフットサル指導者のライセンスに目を付けました。きっと私のような欲求を抱く指導者は多いと思います」
もう一度行けと言われたら断るかもしれない。24時間以上の空の旅は辛かった。言葉もわからない。文化の違いに戸惑いも感じた。しかし、やはり本場ブラジルの指導者実習は新鮮だった。
「日本の指導との考え方の違いにカルチャーショックを受けました。まず、日本の練習は凝りすぎていると感じました。ブラジルは本当にシンプルです。たとえばリフティングひとつとっても、日本ではダイレクトでできない場合は『ワンバウンドでやるといいよ』と言います。それがブラジルの場合は『手を使ってもいいよ』と言う。それがすごく新鮮でした」
なんだ、これでいいのか。それに気づかせてくれたのが、当時ブラジルでフットサルの指導者ライセンスの講習を担当していたバウミールだった。帰国後はブラジルで学んだことを活かし子どもたちの指導にあたった。
「最近は海外の指導法がインターネットで簡単に手に入ります。けど、記事を読んで学ぶことと実際に講習で学ぶことは全然違うと思います。覚えやすい、忘れにくいというのはもちろん、そのトレーニングの負荷もわかります。本やインターネットに書いてあったことをやってみたけど、子どもたちができない。それは指導者が自分で体験してないからというケースが多いと思います」
講習では、実際に自分がトレーニングを体験することにより、ある程度そのトレーニングにかかる負荷や効果がわかる。例えば、バウミールのフィジカルレーニングはやってみるととてもきつい。次の日は筋肉痛で身体がバキバキになる。その体験を踏まえて「子どもにこのトレーニングをやらせるときには、負荷が高いから時間を短縮してやってみよう」というふうに考えることができる。これはやってみて初めてわかること。
「結局、ブラジルの指導者ライセンスを取るために費やした費用は40万円以上かかりましたけど、それだけの価値がありました。バウミールの指導は当時からとてもおもしろかったです。けど、現地の言葉ではなく日本語で学べたら、もっと理解できていたと思うし、なにより移動は大変です。日本の指導者が学ぶには「時間」「お金」「言葉」とあまりにハードルが高い。その頃からです。ブラジルに行かなければブラジルのライセンスは取れない、スペインにいかないとスペインのライセンスは取れない、という現状を打開できないかなと考え出しました」
そして、実際に海外の指導者ライセンスを取得するサービスを設立した。バウミールを講師に招いて行われたブラジルフットサル指導者取得プログラムは大きな反響を得た。
「受講者の方々はみんな新鮮だったと言っていました。ジュニア年代からフィジカルが大事。根本的にはフィジカルがあるから技術を活かせる、という考え方です。日本にはフィジカルコーチがいないクラブがほとんどのため、バウミールが言っていたことを受講者の方々がチームに反映させていけば、変わってくるのではないかと思います」
サッカーに正解はない。様々な国のサッカーを勉強して良い部分を吸収していくことが指導者には必要だと、伊藤氏はブラジルでの体験を通じて感じた。日本の子どもたちに合う要素もあれば合わない要素もあるだろう。それをチョイスするのがコーチの役目である。引き出しは多いに越したことはない。
スペインフットサルの基礎論理を学ぶ
5月にはスペインのフットサル指導者資格取得プログラムを日本で初めて開催する。コーチとして来日するのは、フットサルスペイン代表として活躍し、引退後はフットサルの指導者として研鑽を積むアンドリュー・リナレス氏。
(左)アンドリュー・リナレス氏。(右)伊藤聡さん
「ブラジルのフットサルは個人の技術が際立っています。テクニック面で言えばブラジルは常にスペインよりも秀でていると思います。攻撃は常にゴールを目的としており、その基となっているのは選手のタレント性や個人主義になります。一方で、スペインの戦術は個人としてではなく、集団として動く事であり、コートの上では個人ではなく多くのグループ・連携を大切にします。グループとすることで多くの厳しい試合を精神的に強く戦うことができます。また、ボールを長い時間保持することを目的としてしており、常に戦術を意識したプレーをしています。」(アンドリュー氏)
スペイン代表のフットサルは基礎論理を基にしている。そのうえで動作を練習で調整し試合相手に合わせて戦術を変えていく。実際の試合では監督から指揮権を任された選手が戦術を決めるスタイルだ。
フットサルとは規則正しく動く競技。「準備」と「考えること」を重要視することで、試合のなかで連携をスムーズに行うことができる。ブラジルと比べるとテクニカルではないがタクティカル。日本人向きと捉えることもできるスペインのメソッドを日本で、そして、日本語の通訳が付く待遇で受けることができる。移動に必要以上の時間を割くこともない。興味を持った指導者は、ぜひアンドリュー氏から多くを吸収してもらいたい。
伊藤聡
西日本最大級のNPO法人アミティエ・スポーツクラブで理事を務めながら、スクール運営、指導者育成を行う。
自らが立ち上げたフットサル事業部で、競技の普及やキッズ、ジュニア年代を中心にフットサル専門スクールにて指導を行なう。現在は一般社団法人国際サッカーコーチング&マネジメントスキル認証機構(通称IFCO)代表理事を務める。
[募集概要]
参加条件 サッカー・フットサルの指導者およびそれを目指す方
※講習会は実技を中心に行ないますが、
フットサル初心者の方でも大歓迎です
参加費用 148,000円(税込)
開催場所 FC東京パーク小平天神(東京都小平市)
開催日 2014年 5月3日(土)- 5月4日(日) 11:00~18:00
定員 30名
お問い合わせ先 tel : 03-6804-6062(担当:伊藤)
mail : info@ifco-soccer.jp
取材・文 出川啓太(COACH UNITED編集部) 写真 ユーロプラス,COACH UNITED編集部