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一流のFWほど「捨てシュート」をする――GKコーチ目線から見た「本当に怖いストライカー」

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――武田さんから見て、一流の選手ほど「捨てシュートをしている」という印象があるのですか?

武田 「捨てシュート」という言い方をしていいか分かりませんが、一流の選手は1回シュートを止められたら、次は絶対に違うタイミングで打ってきますよね。「このタイミングで打ったら反応される。なら、もっと早いタイミングで」とか、シュートを打つ時のひざ下を引く動きは速いけど、最後のミートのところで少し緩めたりする、ということはあります。

 相手がボールを見た時にGKが寄せて止めたとなれば、次は下を見ないようにシュートを打ったり、同じシチュエーションでも2メートルぐらい後ろからやってみたり、あるいはもう少し近付いて同じことをやろうとしたりします。

――そういう判断は、トレーニングで積み重ねていくのも大事ですが、試合の中で「これができたけど、これはできなかった」と考えるのも必要だということですね。

武田 そうですね。例えばある試合でシュートを5本打って1得点だったけど、枠内シュートは4本で、なおかつそれが決定的な場面だったということもあります。

――スタッツだけで見れば「決定力が足りない」と思いがちですが、そうではないと。

武田 そういうスタッツでも、しっかりとGKとの駆け引きをやっている場合があります。GKがあるシュートを止めれば、確かに「あのGKは上手い」と言えます。けど、それを受けて次にストライカーが少しやり方を変えてみて、それに対してもGKがリアクションして止めているというケースも実はあると思いますね。

――ネイマール以外に怖いストライカーはいますか?

武田 メッシと言っておきたいところなのですけど、いくつかの映像を見てすごく気になった選手は、個人的にはアルゼンチンのイグアインです。メッシもネイマールのようにズラしてシュートを打つのが上手い選手ですけど、イグアインはタイミング良くクロスに対して入って得点を決めたり、味方がズラしたシュートに対して的確かつ落ち着いてシュートを打てる選手だと思います。

 その動きが駄目だったら、もう1回ボールを流したり、切り返してシュートを打つこともできます。W杯予選の映像をいくつか見ていて、「皆は『メッシ、メッシ』となるだろうけど、もしかしたら(本当に怖いのは)メッシではなくイグアインやディ・マリアじゃないか」と。そういう伏兵が、意外と怖いのではないかなと思いますね。

――アルゼンチン代表で言えばメッシは確かにスーパーなストライカーで、周りのDFを引きつけてくれる選手でもあります。イグアインなどは、そういった仲間の特徴や意図を汲み取ってプレーできる選手ということでしょうか? 

武田 そうですね。「イグアインってストライカーじゃないよね」と言う人もいるかもしれませんが、私はシャドーストライカーという言い方をしても良いのではないかと思います。仲間が引きつけた時に、効果的に得点を取れるタイプの選手じゃないでしょうか。W杯予選でも、イグアインはかなり得点していたはずです。(※注 9得点、南米予選の得点ランキング3位)

 チャンピオンズリーグで活躍したディ・マリアも、直接シュートを打って得点に絡むことは少ないですが、クロスともシュートともつかないタイミングで効果的なボールを入れてきます。例えば左サイドから左足でクロスを入れると、ボールはどうしてもゴールから離れる軌道を取ります。GKはファーに対応してクロスをキャッチしたり、中に対して守備をしようとします。「シュートはないだろう」、「クロスしかないはずだ」と考え、ニアを空けがちになります。
 
 そういう時に、ディ・マリアは直接シュートを打ってきたり、ゴールから距離がある時は中に入ってくる人を使ったりできる選手です。先ほどの話にあったように、ゴールから距離があればあるほどGKが見る時間が増えてきますので、シュートコースに人が入って来たりすればより怖さが出ます。ネイマールのように個人で打開するタイプに対して、ディ・マリアはそういった選手を活かして良いタイミングで点を取る、気の利くタイプの選手と言えるのではないでしょうか。

■日本代表のグループについて

――日本のいるCグループにはコロンビア、ギリシャ、コートジボワールがいますが、このグループの中で気をつけるべきプレー展開、シチュエーションなどはありますか?

武田 まず、日本代表のGKで誰が先発になるか。ザッケローニ監督がGKに対して何を求めているのか考えてみると、足元の技術などもあるとは思いますが、個人的な見解で言えば単純に「ゴールをどれだけ守れるのか」だと思います。シュートストッパーとしてGKを見た時に、3人の中で誰が一番ゴールを守れるのかと言うと川島永嗣ではないかと思います。

 彼はシュートストップに対して絶対的に自信を持っているでしょうし、実力も持っています。そういう彼のスタイルが、イタリアらしいと言うか、爆発的な前に対する強さ、スマートさではない泥臭さに合っているのではないかと感じます。もちろん、ザックはそういう考えじゃなくて、インテリジェンスな部分を求めていて、川島を選択しているのかもしれませんけどね。

 そういった強さを彼が持っている分だけ、やはりアーリークロスや深いクロスも含めたサイドからの攻撃に対してどれだけ前に出ることができるか。サイドに揺さぶられながらも、最後はどこで体を当ててゴールを守れるのか、そういったところが求められるのかなと思います。
 
 日本代表は、セットプレーからの失点が多いじゃないですよね。もしかしたら、サイドから入ってくるボールに対して、守備との連係が足りないのかもしれません。ただ、これはGKだけの問題ではなく、代表の守備全体について言えることだと思います。

――ある程度ボールを散らしたり、サイドに能力の高い選手がいるチームというのは、GKにとって怖いということですか?

武田 やはりワイドアタッカーが強烈だったり、それに対して中に飛び込んでくる選手がすごく強靭だったりすると怖いですよね。そういうところから守備は崩壊していきます。もちろんワイドに開かせて、その裏を抜けていくというのもあります。そういった意味では、Cグループというのは、皆が皆サイドから出てくるチームではありません。

 コートジボワールについては、放り込んでくるボールや飛び込んでくる相手に対して我慢強く守備ができるか、もしくは相手の裏を突くような攻撃に対しどれくらい対応できるのかというのもあると思います。

 ギリシャについては目立ったストライカーはいないですけど、堅守速攻のコンセプトがしっかりと根付いています。ギリシャも攻撃というよりも守から攻の切り替えのスピードのところで、日本はどれだけ対応できるのか。GKで言えば、DFの背後のスペースをどれだけケアできるか。
 
 コロンビアについては技術もあり、サイドに速い選手もいる一番の難所と言えます。どういう勝ち方をするのか、どういう試合展開をするのかによってこのグループで突破できる、できないというのが変わってくると思いますね。

 あとは、どんなチームを相手にしても重要となるのが、ボールがどこから配球されるのか。DFラインから長いボールが放り込まれるのであれば、そこに対しての守備をしっかりできるFWを置いておかないといけません。中盤のボランチであったりもしますから、相手の攻撃の起点がどこなのかによっても潰しどころを考えないといけません。攻撃的な強い選手のところを守るというのも大事ですけど、配球元についても見極めて対処していく必要があります。

――逆に、日本代表の攻撃陣について、GKコーチ目線で注目すべき選手はいますか?

武田 私は岡崎選手が、日本が勝つ上ですごくキーマンになるのではないかと感じています。彼がネイマールのように技巧派なテクニックを持っているのかというと、そういうタイプではありません。ただ、ブンデスリーガでもそうだと思いますが、大型の選手に対して割って入って行くようなプレー、相手の脇下を抜けていくようなプレーは、GK側からしてみると素直にシュートを打たれるより怖いと感じます。

 その他にも、上手いポジション取りから懐に入って反転シュートをしたり、アップダウンの細かい動きを長くやるといった、守備にとって嫌なところに動くプレーをすごく繰り返している印象です。そこにボールが入ることで、岡崎選手がブンデスリーガで得点を積み重ねてきたようなシュートもあり得ますし、DFやGKが引きつけられてスペースが生まれ、周りの選手がそのスペースに入り込んでシュートを打つということも可能性としてはあります。即興性のあるアイディアとはまた違った、日本人に合ったインテリジェンスのある崩し方でゴールが生まれている印象を受けますね。
 
 もちろん、そういった中で大久保選手が今回は召集され、彼がどういう使われ方をするのかというのもあると思います。ですが、岡崎選手のような上手く入り込んでいく選手のおかげで、周りにいる選手がより活きると感じます。ですから、個人的には岡崎選手を推したいですね。


■GKコーチから見た"本当の"怖いストライカーの育て方

――最初に、武田さんから見た怖いストライカーというのを説明していただきました。これからそういったストライカーが日本から出てくるために、GKコーチもしくは指導者としてすべきこと、できることというのは何かありますか?

武田 まず1つは、「良いGKを育てることは、良いストライカーを育てることにも繋がる」ということです。GKがうまければ、簡単にシュートは入らなくなるので、「どうやったらシュートを決めることができるのか」と考えるようになりますよね。

 クロスについても同様で、GKの技術が上がっていけばアングルが変わったクロスに対しても中の状況がしっかりと見られるようになり、ニアに来てもファーに来ても対応できるようになります。そうなってくると、「どうやってGKの視点を変えるのか」と考えるようになりますよね。GKのスキルが上がればフィールドのスキルも上がるし、フィールドのスキルが上がればGKのスキルももっと上がると思います。
 
 もしくは、GK目線から「そのシュートのタイミングだと素直過ぎるよね」という問いかけも生まれるかもしれません。私自身GKコーチとしてチームにも帯同しますが、そういう時にフィールドの選手に対して「GKのこと見ていないでしょ?」とか、「見ているけど、もう1回どこかのタイミングで見ると良いんじゃない?」と言ったりもしますね。

 もう1つは、今言った『目線』です。GKとしては見られている状況で飛び込んでいけば簡単にかわされてしまうので、相手に見られているときはあまり動きたくはありません。また、相手がボールを見ようと視線を落とした瞬間にグッと寄せて、シュートコースを限定しにいきます。
 
 だからこそ、ストライカーはたくさん情報を見ておく必要があります。シュートを打つときの目、見ているか見ていないかというのは、その選手の正面からじゃないと分かりません。ゴールに向かっている選手がいて、その後ろにいる指導者が「おい、ゴールを見ているのか?」と言ったところで、指導者が選手の目の状況を分かっているのかと言うと、例えば目が下を向いているのか右を見ているのかは分からないはずです。
 
 ですから、もしかしたら指導者の方も、GKの方向から見てみる必要があるのかもしれません。GKの後ろから見れば、例えばその選手が「ボールを受けてコントロールしたけど、その後何も見ていない」といったことがはっきりと分かりますから。
 
 私たちGKコーチとしてはどうしてもGKの後ろから見ることが多いので、そういう目線の話はよく出てきます。ただ、GKコーチ自身もGKの後ろからでは目線が見えないので、立ち位置を変えることによって、GKが移動中に何を見ているのか、ということに着目しています。
 
 同じように、フィールドのコーチも立ち位置を変えて見ることも大事だと思います。足元の技術やボールを見なくてもコントロールする技術は大事ですが、「GKをどれだけ見ているのか」ということも必要だと思います。GKを見ながらシュートを打つギリギリまでボールコントロールをして、「こっちの方に打つぞ」と見せかけて逆に打つというのもできますから。

 さらに、プレー強度についても工夫することはできます。試合と同じような負荷でやることも大事ですが、ノープレッシャーの中からお互いが駆け引きすることも時には必要だとは思います。ダラダラとやることは意味がありませんが、よく居残り練習とかでやっているようなGKとフィールドの1対1の中で、駆け引きをしながらこだわってやってもいくのも効果があると思いますね。
 
<了>
 
武田幸生(たけだ・ゆきお)
1970年11月生まれ。北海道出身、株式会社アレナトーレ所属。横浜在住。1999年からジュニアユースチームのGK指導を始め、現在は大学でGK指導。また横浜や東京でGKスクールを開校。全国各地でGK講習会などの地方巡業も積極的に行う。草の根からトップまでのGKを指導のスペシャリストを目指して活動中。日本サッカー協会公認B級コーチ、日本サッカー協会公認ゴールキーパーB級コーチ。

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  • JFA技術委員長
    霜田 正浩 氏

  • 湘南ベルマーレ監督
    チョウ キジェ 氏

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    神川 明彦 氏

  • アヤックス アナリスト
    白井 裕之 氏

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