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サッカーで速く走るための原理原則。そのカギは『地面反力』にある

※サカイクより転載※

年代によって身につきやすい要素が変わることは、広く知られてきました。U-12年代はボールコントロールなどの技術面、運動能力は神経系が発達しやすいと言われています。中学生年代になると持久系など心肺機能を高める時期、高校生になると筋力系と年齢に応じて移り変わっていきます。(もちろん、成長には個人差があります)。

U-12の年代でボールにたくさん触り、技術の習得を中心に指導するチームが増えてきました。それはとても素晴らしいことだと思います。私はその年代で足とボールの感覚を高めると同時に、身体の動きづくりの要素が入ってくるといいなと思っています。

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■「サンドニの悲劇」が教えてくれたこと

よく「昔の子どもは運動能力が高かった」と言われますが、それはいろんなスポーツを遊びの中でできる環境があったからです。野球をやっていれば、ボールがどこに落ちてくるかを繰り返すことでわかるようになります。その動きが身についていれば、サッカーの浮き球をヘディングするときも目測を誤ることはありません。

私が小さい頃はどろどろの田んぼで、オニゴッコをしたこともありました。現代はそのように遊べる場がないので、大人が工夫して作ってあげる必要があります。私がジュニア年代を指導していたときは、わざとグラウンドに水をまいてジョギングシューズで走るトレーニングをしたこともあります。滑りやすい状態を作って、その中でどう動けばいいかを体験させたのです。何も考えず、普段どおりに動くとツルンツルン滑ります。しばらくすると、一気に力を出さずに少しずつ動く、止まるときに細かく動くなど、工夫し始めます。このように、身体の動かし方のベースがないと、ぬかるんだピッチで滑ってしまうのです。

私が身体の動かし方について考え始めたのは、ぬかるんだピッチがきっかけでした。覚えている方も多いかもしれません。2001年、日本代表がフランス代表とサンドニで親善試合を行い、0対5で大敗した「サンドニの悲劇」です。日本代表の選手たちは、ぬかるんだピッチに足をとられ、ツルンツルン滑っていました。そんななか、海外でのプレー経験が豊富な中田英寿選手だけが、ピッチに適応できていました。その試合がとにかくショックで、「いままで身体の動かし方の原理原則を深く考えずに、指導していたのではないか」と気づいたのです。その後、どんなトレーニングをすればいいのかを考え、実践したところ選手の動きが変わり、スピードもアップしました。


■速く走るための原理原則とは?

地面反力とは、地面を押して返ってくる力のことを言います。走りやターンなどの動作に必要な推進力は、地面反力から得ます。それでは、どうすれば一番強く地面反力を得られるのでしょうか? そのための足幅を「パワーポジション」と言います。そこに足をついて地面を押し、足が上がれば、地面反力を使って速く動くことができます。

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足幅の間隔が広すぎるとグリップが小さくなり、地面を押すことができません。反対に、足幅が狭すぎると得られる推進力が小さくなります。ちょうどいいポジションを知ることがポイントで、『進行方向に対して、もっとも大きな地面反力を得られる足の付き方をすること』をアジリティのトレーニングで身につけて、ラダーを使ってそのスピードを上げていきます。この原理原則を知っていれば、どんな態勢になっても、どんな状況にも対応することができますし、ケガの予防にもなります。

直線的な走りに関しても、一生懸命走ろうとしてストライドを広げると、地面反力がブレーキになったり、気持ちが先行して前傾姿勢が強くなると脚が流れてしまい、脚の回転速度が遅くなったりしてしまいます。このメカニズムを説明すれば、10歳であれば理解することができます。正しい走り方、方向転換の仕方を知って、スピードを上げるためのトレーニングをする。それがトレーニングの順番です。


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谷真一郎(たにしんいちろう)
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』

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