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後編「サッカーの発展とは、サッカーが好きな人を増やすこと」 前田秀樹(東京国際大学サッカー部監督)×幸野健一

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<<前編「サッカーの原点は遊び。教育では育たない部分もある」 

幸野健一(以下、幸野):以前、前田さんに提案させてもらったのが、大学をベースとしたプロのクラブを保有することです。海外に行けば、「ウニベルシダ(大学)」という、大学をベースとしたクラブがありますよね。

前田秀樹(以下、前田):メキシコのパチューカなど、南米やヨーロッパには大学が持っているクラブがありますね。

幸野:日本サッカーが発展していくために、良いと思うことは積極的にやっていくことが大切だと思っています。具体的には、トップレベルの育成と同時に、サッカー人口を増やすこと、つまりは普及です。日本では、大学サッカーが一部のエリートのための場になっていますよね。スポーツ推薦者でなければ、入部できない大学もありますし、「大学のサッカー部でやっています」となると、「すごいですね」と言われるわけです。

前田:東京国際大学では、サッカー部に入りたい生徒は、全員受け入れています。

幸野:底辺の普及とともに、トップレベルの選手の育成を両輪で回している部分はすばらしいことだと思います。

前田:6年前はサッカー同好会で8人しかいないところからスタートして、いまは400人の部員がいます。シャワー施設、食堂、ジム、クラブハウスを作って、授業が終わったら、グラウンドにすぐ移動できるようにバスも揃えています。選手から、それほど部費は徴収せず、みんなが気軽に楽しめる環境を作っています。

幸野:400人もいると、試合に出られない部員がたくさんいるんじゃないかと思うのですが、前田さんのところはそうではないんですよね。

前田:いま、東京国際大学サッカー部は11のチームがあって、それぞれに専門的な知識を持った指導者がいて、試合の場もあります。練習は1時間半~2時間で女子チームもあります。各学年100人が最大と考えると、400人がマックスですね。

幸野:部員数はダントツで日本一ですね。最初から、部員を増やしていくことを考えていたのですか?

前田:エリート選手だけを集めて、鍛えている大学はたくさんあります。誰もが『良い選手を連れて来なければ、結果を出すことはできない』と考えています。そこで私は、優秀な選手を獲得することだけを考えるのではなく、優秀な選手をどうやって育てていくかを考えて、実行することのほうが先決なのではないかと思いました。『東京国際大学でサッカーがしたい』と思っている子を連れてこない限り、発展にはならないんですね。だから、サッカーが下手でもいいんです。『ここでやりたい!』と言う子のほうがいい。いまは環境も整って、スタッフも揃ってきているので、ここでやりたいという子が増えてきました。

幸野:サッカーの発展として考えると、すばらしいことだと思います。

前田:サッカーの発展とは何かと考えると、サッカーが好きな人を増やすこと。それはプレーヤーであったり、サポーターであったり。彼(彼女)らが結婚して子どもができた時に、「サッカーをやらせよう」と思ってもらうことが大切で、そのためには、自分がサッカーをしていて楽しかった、プラスになったという経験が必要です。これまでは、サッカー部には入ったけど試合に出してもらえない、応援での声出しや走らされてばかりで楽しくないという子が大半でした。サッカーを嫌いになる人を作ることは、サッカー界全体のことを考えるとマイナスなんです。たとえ所属チームが優勝したとしても、一部の選手たちはそれで良かったかもしれませんが、その背後に控える試合経験のほとんどない選手たちのことを考えるとナンセンスです。そのような状況を放っておくと、サッカーは良い方向には行きません。サッカーはあまりうまくないかもしれないけど、試合にもたくさん出られたし、芝のグラウンドでプレーできたし、おもしろいと思ってくれる人をどれだけ増やすことができるか。東京国際大学では、トップレベルの選手の育成と同時に、普及にも目を向けています。

幸野:サッカーが好きで、サッカーを大切に思う人を増やすことが、一番大切なことですよね。

前田:そう。その積み重ねが、何十年後かに、ワールドカップの結果として現れてくるんです。

幸野:ワールドカップで優勝するためには、A代表だけを強化すれば良いのではなくて、サッカーに関わる多くの人々のレベルを上げていくことが必要です。

前田:うちの大学では、たとえ高校時代に試合に出られずに応援ばかりしていた子たちであっても、人工芝のグラウンドで練習をし、試合に出られる体制を作っています。サッカーが文化になるためには、一部のエリートのスポーツにしてはだめなんです。みんなが日常的にサッカーを楽しむこと。それが、最終的に日本サッカーの財産になるんです。

幸野:前田さんはトップの育成とサッカーの普及を同時に行っていて、トップチームは昨年、最短で関東大学リーグ1部に昇格しました。トップレベルの選手の育成については、どのような考えで行っているのでしょうか。

前田:トップチームの目標は、関東大学サッカーリーグ1部で優勝すること。簡単な目標ではありませんが、優勝するためになにが必要かを日々考えています。チーム内での競争やプレッシャーに打ち勝つために、何をすればいいかを自分で考えないといけません。トップチームの選手はプロになりたい、サッカーでご飯が食べられるようになりたいと思っています。そのためにも、甘いことは言っていられません。部員400人の頂点であることを自覚して、日常生活から手本にならないといけない。トップの選手に対する要求は厳しいですよ。

幸野:関東大学リーグ2部に昇格して、初年で優勝し、1年で1部リーグ昇格は新記録ですよね。

前田:そうですね。選手たちはいい経験をしていると思いますよ。うちの選手たちは高校時代、表舞台に出られなかった子ばかりです。それが大学に入って、地元の有名選手と同じ舞台に立って、試合で勝つわけですから。選手たちには良い思い出になりますよね。

幸野:閉塞感がある大学サッカーにも、こういうチームがあると証明していますね。

前田:高校時代は無名だった選手が、うちの大学を経て、J2のチームでレギュラーになったケースもあります。チャンスはどこに転がっているかわからないですし、努力を続けていれば形になるんですよ。

幸野:そのためには、ベースとなる環境や体制が必要で、トップチームの選手はプロを目指す一方で、チームで300~400番目の選手は、サッカーを楽しんでプレーする環境があるわけですよね。トップを引き上げることと、ボトムを広げることの両輪を実行している。それは日本サッカーの発展にとって、大切なことだと思います。これを他の大学でもやることができたら、日本のサッカー人口はもっともっと増えると思います。これからも、東京国際大学と、前田さんのご活躍を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

前田:ありがとうございました。

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