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「データをうまく活用することが、選手のパフォーマンスを引き上げる要因になる」CLIMB Factory代表 馬渕浩幸氏インタビュー(後編)

サッカーのプレーが高度になり細分化されるにつれて、データの重要性も高まってきている。トップレベルの クラブや代表チームにおいては、データアナリストを抱えているところも増えてきており、選手交代や戦術面において、今後はさらにデー タが重要視されるだろう。CLIMB Factory代表、馬渕浩幸氏のインタビュー後編では、欧州チャンピオンズリーグでのデータを元に、バイエルンの強さの秘密に迫った。

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HT014293_580.jpg(取材・文/鈴木智之 写真/サカイク編集部・田川秀之)


■パスを受けるために、多くの距離を走っていない


――現代サッカーでは、フィジカル能力の上昇とともに、走力が重要になっています。そのあたりもデータから読み取れるのでしょうか?

馬渕:いま欧州でトップに立つバイエルンやバルセロナなどのビッグクラブはポゼッションサッカーを志向していますが、走力との関係性もデータから浮かび上がってきます。たとえば一昨シーズンのCL王者バイエルン。彼らはリーグ戦においては60%近いボール保持率を誇っています。パスの本数はリーグ最多ですが、1本のパスに対して選手が走る距離はリーグ最短です。

どういうことかというと、バイエルンの選手は『パスを受けるために、多くの距離を走っていない』のです。常に選手同士が近くでサポートできる位置関係を作り、フリーの味方にパスをつないで攻めていきます。サッカー経験のある人はわかると思いますが、動いている味方にピンポイントでパスを通すのは難しいプレーです。受ける方も、走りながら強いパスを止めるのは難しい。バイエルンはむやみにたくさん走るのではなく、選手同士が近い距離でパスをつないでいることがわかります。

――無駄な走りを減らすためには、戦術的に統制がとれていることが重要だと思います。

馬渕:そうですね。それに、狭いスペースであってもパスを通す技術やボールを収める技術も必要ですよね。また、パスを受けるために長い距離を走らないということは、体力の温存にもつながります。フィジカル的に良い状態でプレーすることができるというメリットもあります。バイエルンに関していうと、リーグ戦とCLでは大きく戦い方を変えることがあります。それが一昨シーズンのCL準決勝、FCバルセロナとの1stレグです。

■データ活用が選手のパフォーマンスを引き上げる

――バルセロナに4対0で勝利した試合ですね。

馬渕:この試合、バルセロナのボール支配率は66%、バイエルンは33%と大きな開きがあります。パス本数もバルセロナは694本、バイエルンは354本とおよそ倍です。相手にボールを支配されていながらも、4対0と圧勝しました。バイエルンは相手にボールを保持されていても、ボールを奪うと、1本あたりのパスに対して走る距離を少なくして、カウンターを仕掛けていました。

トップレベルでは映像分析が進んでいるので、このエリアでこの選手がボールを持ったときは、ここへパスが出るというのはスカウティングでわかっています。バルセロナはパスコースを2つ作り、近い距離で回すスタイルです。パスを受けに寄ると、その分スペースが空くので、バイエルンはボールを奪ったらそのスペースへと出ていきます。バルセロナのパスサッカーの裏をつく作戦を用いたのも、勝因のひとつでしょう。

――この試合はバイエルンのフィジカルと走力が勝り、バルセロナを圧倒した印象があります。

馬渕:実際に、4点目を決めたトーマス・ミュラーの走力データで興味深い数字が出ています。adidas社の『miCoach』という走力データ集計デバイスがあるのですが、それによるとミュラーはリーグ戦では、スプリントが71本、走行距離は9.646㎞、最高速度は28.69㎞/hです(すべて1試合平均)。それが、バルセロナとの試合ではスプリント数が92本、走行距離が11.199㎞、最高速度が30.11㎞/hとすべての数値が大きく上回っています。

もちろん、CLの準決勝という舞台環境も要因としてあると推測しますが、相手が強い時に自分の平均より上の数値を出すことができたからこそ、バルセロナに圧勝することができたという見方もできます。チームの戦術があって、それを遂行するためのベースになるのがデータです。私はトップレベルから育成年代まで、データをうまく活用していくことが、選手のパフォーマンスを引き上げる要因になると確信しています。


サッカークリニック2014年5月号より転載/一部加筆・修正)


<プロフィール>
馬渕浩幸(まぶち・ひろゆき)。CLIMB Factory代表取締役。ドイツのマーケティング会社勤務、企業のマーケティング・マネジメントマネージャーなど歴任した後、2009年7月、スポーツに特化したビッグデータの収集、分析行う専門会社としてCLIMB Factory㈱を設立。日本サッカー協会などの競技団体やチームに、一般企業のデータ活用事例を利用したITソリューション事業を展開している。

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