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最高のパフォーマンスを引き出す『ピリオダイゼーション』

ケガがつきもののサッカーにおいて、そのリスクを避けることは選手だけでなく、指導者も考えるべき大きな課題です。ケガのリスクを回避し、100パーセントの状態で試合に臨む。『サッカーのピリオダイゼーション』は、それを可能とするトレーニング理論です。(文/相良浩平 写真/B Mlry

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■サッカーのピリオダイゼーションとは

日本語で「期分け」という意味のピリオダイゼーションは、サッカーでは試合で最高のパフォーマンスを発揮するためのトレーニング計画の方法を言います。例えば6週間後にリーグ戦が開幕する場合、どのように負荷をあげて行くべきか、あるいは試合までの1週間で、いつオフを設け、何曜日にコンディショニングトレーニングをするべきか。『サッカーのピリオダイゼーション』は1シーズンを通して選手たちがケガすることなく、すべての練習と試合で最高のパフォーマンスを発揮し続けるために、トレーニングをどのようにプランニングするべきかをサッカーの本質に基づいて説明している理論です。

■ケガの責任は、メディカルスタッフではなく監督にある

サッカーは強度の高いスポーツで、試合でかかる選手の身体への負担は非常に大きいものであり、練習の負荷をうまく調整できなければケガにつながることも多いと言われています。UEFA(欧州サッカー連盟)の調査では、ケガ人が出るのはメディカルスタッフ、あるいはコンディショニングコーチではなく、監督の責任によるところが大きいことがすでに明らかになっています。これは、どのようにコンディショニングトレーニングを行うかということだけでなく、すべてのトレーニングをどのような負荷で行うかが、選手のケガのリスクに大きく影響していることを示しています。さらに、ケガ人の数がチームの成績に影響していることも明らかになっています。負傷者の多いチームは戦力ダウンが否めず、成績の上昇は望めません。シーズンを通してケガ人を出すことなく戦い続けられるように、戦術トレーニング、オフ、リカバリー、コンディショニングトレーニングなどのすべてを調整し、プランニングすることこそが、結果として好成績に結実するのです。

■トレーニングと同じくらい重要なリカバリー

トレーニングを計画する上で非常に重要となるのが、試合、あるいは練習から選手たちが回復するのにどれくらいの時間を要するかを考えることです。一般的に、選手の身体は厳しいトレーニングをすることで強くなると考えられがちですが、実際に身体が強くなる時間帯というのは、トレーニング時ではなく、その後の休養の時間帯なのです。当然トレーニングという刺激は重要ですが、その時間は身体を壊している状態にあり、その後休養することで身体がその刺激に耐えられるように壊れた組織を再生・強化しているというわけです。ここで身体が回復しないうちに次から次へと刺激を与え続けると、疲労が蓄積してパフォーマンスが下がり、ケガの続出という事態に陥ってしまうのです。サッカーの現場ではこうした疲労蓄積によるパフォーマンスの低下と、それによるケガがたびたび見られます。週に何度も行われる2部練習、キャンプ中に連日にわたって行われるフィジカルトレーニング、シーズン開幕前のフィジカル強化中心のトレーニングなどでケガ人が相次いで出るのは、その最たる例と言えるでしょう。

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■レベルアップに必要なのは『量』ではなく『質』

サッカーのピリオダイゼーションは、決してハードトレーニングを否定しているわけではなく、むしろハードにトレーニングするためのプランニングと言えます。サッカーにおいて大切なハードトレーニングというのは、80パーセントの力を長時間発揮し続けられるようになるためのものではなく、100パーセントを101パーセントにすることを目指すトレーニングです。つまり、『量』ではなく『質』を重視した練習が求められているのです。
 
前述のとおり100パーセントの能力を発揮したいならば、トレーニング後にはその負荷に適した十分な回復時間が必要です。仮に午前と午後、1日2回高強度のトレーニングをしたとすると、回復する時間がないため当然午後のトレーニングの質は下がり、100パーセントの能力は発揮できません。連日のフィジカルトレーニングも同じことが言えます。つまり、サッカーの質を高めるために選手に対して100パーセントの能力を出し切ることを求めるのであれば、負荷と回復時間を考えた上でトレーニングを計画しなければなりません。1シーズンを通してケガ人を出すことなく、選手が常に100パーセントの能力を発揮するためには、こうしたサッカーの性質を理解していく必要があります。

■キーポイントとなるコンディショントレーニング

『サッカーのピリオダイゼーション』は、もともと運動生理学の理論として存在したピリオダイゼーションの理論をサッカーに適応させたものではなく、サッカーを分析した上で、サッカーの原理原則に基づいて、サッカーの言葉で語られたものです。そのピリオダイゼーションにおいて、トレーニングとその負荷を計画して行く上で重要となるのが、普段のトレーニングの中でも最も負荷の高いコンディショニングトレーニングなのです。12月に開催される『サッカーのピリオダイゼーション』セミナーでは、このコンディショニングトレーニングにも焦点を当てています。
 
次回は、12月開催の講演予定内容の中から、『コンディショニングトレーニング』の一部をセミナーに先行してレポートします。

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