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新チームを効果的に作り上げるための原則 / 福富信也氏のチームビルディング論[前編]

COACH UNITED ACADEMYは、4月からの新学年・新チーム立ち上げを控える指導者のための「チームビルディング」をテーマにお送りします。前半は東京電機大学理工学部・サッカー部監督の福富信也氏を講師に招き、とりわけ育成年代のチームビルディングにおいて有効な「新チームを効果的に作り上げるための原則」についてお話しいただきました。(取材・文/COACH UNITED編集部)

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■チームビルディングが説く「十人十色」の解釈とは

まもなく3月を迎えるこの時期は、最上級生が卒団・卒業を目前に控え、すでに新学年での活動が始まっている学校・クラブも多くあることでしょう。4月になればさらに新入部員や新入団員を迎え、正式に新チームが発足することになります。そんな中、新年度特有の緊張感をほぐしながらチームを効果的に作り上げ、新たな1年を幸先よくスタートさせることは、指導者にとって大きな関心事だと思います。この課題に対して、チームビルディングでは「アイスブレイク」という手法で初期段階の人間関係構築を促すのが一般的ですが、今回のセミナーではそうしたアクティビティの紹介ではなく、新チームを機能させるためのより本質的な理論(メカニズム)について詳しく展開しています。

講師の福富氏はまず、効果的なチーム作りのための大原則として、大きく2つのことを提示しました。それは、「仲間をリスペクトすること」と「すべての言動がチームの成長につながっていること」。どちらも聞けばなるほど、むしろ当たり前に感じるほどの正論ですが、話はそれほど単純ではありません。特に1つめの「仲間をリスペクトすること」について、福富氏は「十人十色」という言葉を引き合いにしてこのように語ります。

「人間は『十人十色』という言葉の通り、本当に一人ひとりみな感性が違います。同じ景色を見ていても感じていることは違いますし、どこに焦点があるのかもまったく違う。サッカーをやるという共通認識で集まっているはずのサッカー部員であっても、入部の動機はみんな違うのです。にもかかわらず、さも当たり前のように一緒だろうと思い込むことからミスが起こる。(中略)だからこそ、チームビルディングではその違いを尊重(リスペクト)し、仲間との食い違いから学ぶことを重要なファクターと考えているのです」。

続けて福富氏は、サッカーのワンシーンにおけるFWとDFの状況判断を例に、そこでも食い違いから学ぶことによって得られる効果について解説しています。一般的には悪いものとして目をそむけがちな「食い違い」に、あえて目を向けることで転換されるポジティブな意味合いにも注目しつつ、「仲間をリスペクトすること」の真意をセミナー本編で確認してみてください。

■「平和なチーム」と聞いて思い浮かべるのは?

効果的なチーム作りのための大原則、もう1つは「すべての言動がチームの成長につながっていること」。言い換えると、「チームの成長につながっていると確信を持てる発言・行動をしましょう」ということです。これは、1つめの原則にある「仲間へのリスペクト」が度を超したときに起こりうる「わがまま」との境界線をはっきりさせるために、選手たちと取り付けるべき約束であると福富氏は説明します。

「自分のためにしかならない...自分に都合のいい方向にしかいかない...そういった言動は『わがまま』であり、自分のわがままばかりを言うことはチームの成長に反することである、という解釈ですね。そうではなくて、チームの成長につながることを発信しよう、その確信があればどんなことを発信してもいいよ、ということを選手に伝えることで、立ち返るべき2つの原則の間でバランスがとれるように配慮しています」

セミナー本編ではさらにここから、チームビルディングの2大原則を噛み砕いたときに直面する2つの課題に話がおよんでいきます。1つは「平和なチームとは」、もう1つは「理想的なコミュニケーションとは」。いずれもチームビルディングの根幹に触れるテーマであり、読者のみなさんも日々試行錯誤されていることと思いますが、ここであらためてご自身の思考を振り返り、この問いに答えてみてはいかがでしょうか。

「私がみなさんに『平和なチーム』ってどんなチームですか?と尋ねると、『ケンカがない』『仲がいい』『共通理解がある』といった答えをよく聞きます。確かにそれは理想ではありますが、現実的には不可能に近い。なぜなら、先ほど述べたように人は『十人十色』ですから、ケンカや衝突や食い違いがまったくないということはあり得ないからです。仮に共通理解を取り付けたとしても、一人ひとりの考え方には個性があって、そこにズレや食い違いが生じるのは仕方ありません。ですから本当の意味で平和なチームというのは、ケンカがないという類のことではない、と言っていいでしょう」。では真に平和なチームとは何なのか? その問いに対する福富氏の答えは、ぜひセミナー本編で確かめていただければと思います。

ちなみに、ここまでの内容でまだ本編全体の約半分。残り半分の時間を使って福富氏が力説したのが、「理想的なコミュニケーション」についてです。さまざまな切り口や論点がある中で、今回は「伝え方」と「受け止め方」に焦点を絞り、よく起こりがちなコミュニケーション上の問題とその解決方法を、実例を交えながら分かりやすく解説しています。チーム内での理想的なコミュニケーションが、結果として平和なチームを実現していくというストーリーと併せて最後までご覧ください。

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福富信也(ふくとみ・しんや)
1980年3月23日生まれ。信州大学大学院教育学研修科修了(教育学修士)。横浜F・マリノス育成コーチを経て、東京電機大学理工学部へ。専任教員として教鞭を執る傍ら、電大サッカー部監督として指導の現場に立つ。大学院時代に専攻した野外教育をヒントにスポーツへの応用を試み、独自の「チームビルディング」理論にもとづくプログラム設計から現場装着まで幅広く実践している。JFAエリートプログラムやJリーグアカデミーなどのトップカテゴリでも指導を行うほか、チームビルディング指導の普及にも取り組む第一人者。著書に『「個」を生かすチームビルディング チームスポーツの組織力を100倍高める勝利のメソッド』がある。