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Jクラブ指導者が見た「ビルバオの育成」前編

国内のサッカー指導者ライセンスの最上位にあたるJFA公認Sコーチ要請講習会(以下、S級ライセンス)においては、海外クラブでの2週間以上の研修が義務付けられている。毎年受講生の指導者たちは自らの人的かつ経済的リソースを最大限に活用して欧州を中心に濃密な研修を行なっているが、幸運にも筆者は2015年1月4日からスペインのバスク自治州で研修を行うロアッソ熊本の清川浩行氏(トップチームヘッドコーチ)、東京ヴェルディの萩村滋則氏(アカデミーコーチ)に帯同する機会を得ることができた。今回は日本サッカー界の将来を担う日本人指導者が、スペイン研修の第1週に視察を行なったアスレティック・ビルバオでの研修内容を2回に渡りレポートする。(取材・文/小澤一郎)

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■バスク州に行き渡るビルバオの指導メソッド

アスレティック・ビルバオの特徴は何と言ってもバスク人のみでチームを構成する「バスク純血主義」。バスク出身以外の選手を獲得できないことから、育成重視の姿勢と予算はスペイン屈指のもので、年間予算の平均16%が育成に投資されている。ビルバオ市内から10キロ離れたレサマ村にあるレサマ練習場は現在、天然芝4面、人工芝3面、室内練習場とクラブハウスが完備された総合練習場で、清川氏の第一印象は「すごくコンパクトで充実した練習施設でした。少し古い印象も受けましたが、皆の顔が常に見られる環境のクラブであることがわかりました」というものだった。事実、バスク人以外はプレーできないアスレティック・ビルバオでは、育成は重要どころかクラブの生命線であり「未来そのもの」と考えられている。

施設内部を案内してくれた下部組織メソッド部門の責任者であるランデル・エルナンデス氏からも、「トップチームと下部組織の選手の接点が生まれるような動線を敷いています」という説明があった。エルナンデス氏からは「バスク人しかプレーできないビルバオは、バスク州に約150の提携クラブを持ち、クラブや拠点エリアに我々の指導者を派遣しています。彼らは提携クラブや地域にビルバオの指導メソッドを落とし込み、そこでトレーニングを受けた選手がビルバオに入団してきます」という地域に根ざした育成システムの概要説明もあった。バスク州に張り巡らされた指導・スカウト網から入団した選手たちは、レサマ練習場でハイレベルな指導を受けると同時に、学業面でも高い要求を受ける。「皆の顔が見えるクラブ」という特色通り、下部組織の指導者は自らのチームやカテゴリーのみならず所属全選手の学業面での成績までも把握している。そのため、練習場には下部組織の選手が練習前後に宿題や勉強をするための学習ルームがあり、常駐のチューターが学習面でのフォローもする。

■絞られたテーマを徹底的に貫くのがビルバオ流

萩村氏が驚いたのは、計7面あるグラウンドの照明すべてにビデオカメラが設置されており、全カテゴリーのトレーニングが自動録画されていることだった。「練習を上からカメラで撮影している点は進んでいるなと感じました。それを選手もそうですが、指導者が見て自己分析したり、下部組織のコーチングスタッフ間で共有し、また自分の指導力向上のために還元するということをしている。それは指導者として大事な部分だと感じました」と萩村氏が述べたように、ビルバオでは先に挙げたエルナンデス氏が統括するメソッド部門が、下部組織のトレーニングメニューを管理しながらビルバオ・メソッドを理解する指導者の育成にも力を注いでいる。実際、ジュニアユース以降のカテゴリーでは各チームがフルコートの半面を使用してトレーニングをしていたが、同じピッチで練習を行う2チームは全く同じメニュー構成だった。

練習は1日最大2時間で、90分が一般的。下部組織の全カテゴリーのトレーニングを精力的に視察した清川氏からは「構成がすごくシンプルで、テーマがあるのであればそれを徹底してやっていました。時間的なもの、メニューの段階的なものも1個、2個で終わるものが多く、そこから広げて3、4、5と進むより、1つ、2つで終わるトレーニングが多かったです」という感想が出ていた。萩村氏も「練習メニューは、おそらく日本の方が多いと思います。例えば、視察期間中にヘディングをテーマにした日がありましたが、あそこまで徹底的にやり切るというのは日本ではないのではないかと思いました」と、絞られたテーマを徹底的に貫くビルバオ・メソッドに新鮮な驚きを感じていた。

ただし、清川氏、萩村氏が注視していたのはトレーニングメニューではなく、指導者の言動だ。言葉の壁がつきまとう海外研修では得てして練習メニューのメモ、コピーに熱心となる傾向にあるが、Jクラブで長年の指導経験を持つ二人の指導者はメニューやグリッドの大きさをメモしながらも筆者に「今どういうことを言っていましたか?」と質問しながら、メニューやオーガナイズの意図やその背後にあるメソッドにより関心を示していた。だからこそ、「コーチ陣の指導で印象に残ったのは、下の育成年代だからかもしれませんが選手に常にポジティブな声をかけて、選手たちを上手くモチベートしていた点です」(清川氏)という感想も出ており、こうした姿勢に海外研修を実りあるものにするヒントが隠されているような気がした。

Jクラブ指導者が見た「ビルバオの育成」後編>>

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