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『正しくない』体幹トレーニングの弊害とは?/"間違えない"ためのフィジカル講座

4月のCOACH UNITED ACADEMYは「フィジカル」をテーマに、育成年代のトレーニングを"間違えない"ための基礎知識をお送りします。前半はフィジカリズム副代表の堀内秀憲氏を講師に招き、近年注目を集める『体幹』のトレーニングについて原理原則をお話しいただいています。今回は、そもそも体幹トレーニングを行う理由や、そのやり方を"間違えた"場合の弊害についてセミナーの一部をご紹介します。(取材・文/澤山大輔)

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<<フィジカルとは何か? 体幹とはどこを指すのか?

■なぜ体幹トレーニングをやるのか?

――まず、体幹トレーニングそのものについて伺います。育成年代の現場でも、体幹トレーニングを行なうチームが増えてきたと思います。ですが、実際に導入している現場では成果が上がっているところもある一方で、子どもが腰痛を訴えて整形外科に行ったり、思うようにパフォーマンスが上がらなかったりして悩んでいるコーチもいると聞きます。実際、体幹トレーニングというのは気軽に導入できるものなのでしょうか?

堀内秀憲(以下、堀内):最初に押さえていただきたいのは、体幹トレーニングの難易度は決して低くないということです。導入することで、リスクも確実に存在します。「『体幹』という言葉が流行っているから」「どこかの強いチームがやっていたから」といった安易な理由で導入するのではなく、選手の状況に応じてきめ細かい配慮が求められます。

――具体的には、どういった配慮でしょうか?

堀内:COACH UNITEDを訪れる読者はサッカー指導者の方がメインかと思いますので、サッカーに関して言うと、サッカーはいわゆる『オープンスキルスポーツ』に分類されます。オープンスキルスポーツとは、簡単にいえば「予測が難しく絶えず変化し、その場その場でやることを変えなければいけない、外的要因に左右される」ようなスポーツのことです(その対義語は『クローズドスキルスポーツ』になります)。

例えば陸上などは、種目ごとにある特定の動きを理想とし、外的要因に左右されにくくすることを目指すため、クローズドスキルスポーツに分類されます。しかしサッカーに関してはまっすぐ走るだけではなく、あらゆる方向にいろいろな負荷のかかる動作が求められますので、トレーニングでもさまざまな動きにその場で対応できるような身体づくりが必要になります。となると、体幹トレーニングで代表的に行なわれる『プランク』など、体幹を固めた状態で、特定の方向に強い負荷を掛けるトレーニングは、必ずしも選手の成長には寄与しません。

――選手の動きの質を低下させたり、運動能力を損ねるリスクがあるということでしょうか。

堀内:そうです。動画でも解説していますが、体幹トレーニングをする上で使いたくない部位があります。それが腹直筋(ふくちょくきん)と呼ばれる筋肉です。いわゆるシックスパックと呼ばれ、モデルさんなどがファッション誌で6つに割れた腹筋を見せているイメージ、あの筋肉のことです。あれは、あくまでファッション誌の演出としてそう見えるように力を入れているだけであり、スポーツのプレー中に腹直筋を使う場面はそれほど多くなく、実際にもそのような使い方はしていないのです。

ところが困ったことに、体幹トレーニングを正しいやり方で実行できないと、容易に使用してしまう部位がこの腹直筋なのです。この筋肉は、骨盤から肋骨までをつないでいます。したがって、あまり発達させすぎると肋骨を下げながら内側にギュッと締めてしまう働きがあります。

――肋骨を締めてしまうと、どのような影響があるのですか?

堀内:肋骨の内側にある、肺の動きが制限されます。うまく膨らまなくなり、呼吸が十分に行えなくなります。そうなると持久力が落ちてすぐにバテてしまったり、練習中も高いパフォーマンスが維持できなくなってなかなか伸びなくなったり、腰痛の原因になったり...とさまざまな弊害が考えられます。

――正しくやれているかどうか、素人はどこで判断すれば良いですか?

堀内:実際に「触って」判断するほかないでしょう。一見してきれいなフォームで体幹トレーニングができているように見えても、どこの筋肉に効いているかは直接触って判断するしかありません。動画でも実演しましたが、例えば頭が下に向くか正面を向くかによっても効く筋肉がまったく違ってきます。

正しいフォームで行なえば数秒で音を上げてしまうようなものでも、間違ったフォームなら長い時間続けられたりします。実際に使いたい腹横筋(ふくおうきん)はまったく使われず、腹直筋ばかりが使われているのに"やった気"になってしまうかもしれません。これでは、何のために導入しているのかわかりませんよね。

これだけでなく、体幹トレーニングにはかなり繊細な判断が求められます。動画でも解説しましたが、選手の年齢や状態によっても導入すべきかどうか慎重な判断が求められます。最初は、コストを掛けてでも専門家にアドバイスを仰ぎ、段階的に導入していくことが望ましいでしょう。さらに詳しい内容はCOACH UNITED ACADEMYにて解説していますので、ご興味のある方はこの機会にぜひご入会の上、セミナー動画をチェックしてみてください。

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堀内秀憲(ほりうち・ひでのり)
フィジカリズム副代表。順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科卒。理学療法士、NSCA-CSCS、PHI Pilatesインストラクター、NASE-Japanインストラクター。土屋潤二氏主催・一般社団法人 日本オランダ徒手療法協会準徒手療法士養成コース脊柱A(中級コース)修了。柔道初段。フットサル日本代表FP皆本晃選手、キックボクシング日本ランカー、某競技世界ランカーをはじめ、幅広いクライアントを担当する。
【フィジカリズム】https://www.facebook.com/physicalism