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「リーグ戦文化」を本気で定着させる! 行動する指導者たちが挑む日本の育成課題

2015年2月に立ち上がった『FOOTBALL LEADERS』(以下、FL)は、育成年代の指導に当たるコーチが中心となって発足した団体で、現在月2回の勉強会を中心に活動中だ。今回はFLの発起人である鈴木浩二氏(FC E'XITO YOKOHAMA)、南里雅也氏(FCプラウド)らの呼びかけで始まった、「リーグ戦文化の定着」を目指す取り組みについて紹介する。(取材・文/鈴木智之 写真/FOOTBALL LEADERS in TOKYO)

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■関東近県で続々と立ち上がる「プレミアリーグ」

FLが中心となって企画・開催する『U-11プレミアリーグ』。これはU-11年代の年間を通じたリーグ戦で、強豪街クラブを中心にホーム&アウェイかそれに準ずる形で行われる。現在、神奈川・東京・千葉・栃木でプレミアリーグが誕生しており、埼玉でも準備中だという。4月開催のリーグ戦で、来年の3月には各県の上位チームが集まり、「チャンピオンシップ」を開催する計画だ。また、各県リーグで昇格・降格制度を設けることで、年間を通して真剣勝負の機会を増やそうという狙いもある。

U-11プレミアリーグは元々、FL神奈川のコーディネーター、鈴木浩二氏(元石川SC→FC E'XITO YOKOHAMA)が、神奈川で行っていたプライベートリーグがモデルになっている。日本サッカー協会の管轄の下、U-12(小学校6年生)年代ではリーグ戦が増えてきたが、ひとつ下のU-11(小5)年代はリーグ戦はおろか、公式戦の数そのものが少ないという現状がある。強化のためには真剣勝負の場が必要で、その想いを鈴木氏がFLのメンバーに提案したところ、すぐに東京を拠点に活動するFCプラウドの南里雅也氏が賛同。目黒区サッカー協会の佐々木和之氏の協力を受け、U-11プレミアリーグ東京が立ち上がった。南里氏はU-11プレミアリーグの構想をこう語る。

「U-12はリーグ戦が定着してきましたが、それを1学年前のU-11で経験することができたら、U-12になったときにはリーグ戦に慣れて、強化の場としてもより活きてくると思います。神奈川はプレミアリーグの発起人でもある鈴木さんが立ち上げ、トップレベルの街クラブ10チームを集めました。東京は自分が発起人になり、参加チームも決まっています。来年の3月に関東近県の上位チームがチャンピオンシップを戦うなんて、考えただけでもワクワクしますよね」

日本サッカーの主要な大会はトーナメントが主流だが、近年、日本サッカー協会を中心にリーグ戦の整備もされてきた。しかし、それでもまだ足りない実情がある。グラスルーツの指導者組織であるFLは、U-11年代においても同じレベルのチームが切磋琢磨する環境を作ることが大切だと考え、私設リーグを作ることにした。南里氏は言う。

「世界のスタンダードはリーグ戦ですし、指導者も選手も年間を通した戦い方にチャレンジしてみようというのがきっかけです。FLの公式サイト上でも、試合結果だけでなく主要な試合の動画を流すことにチャレンジしようと思っています。リーグ戦が停滞しないために、昇格・降格も設けますし、得点王やMVPを始めとする個人の賞も選定します。いまは神奈川、東京、千葉を中心に関東だけですが、この取り組みがうまくいくことで、各地域の方々にもいい意味で真似してもらえたらと思っています」

■「リーグ戦」が解決するこれだけの問題

現状、ジュニア年代では朝から夕方まで、1日に4試合、5試合を行うケースも少なくない。試合数が多くなると、どうしてもプレーの強度は落ちる。カテゴリーが上がり、たとえばプロになったとしたら、1日に何試合も行うことはあり得ない。だが実際のところジュニア年代では、1日に何試合も低い強度で試合が行われている現状がある。南里氏は言う。

「当たり前ですけど、サッカーは1試合にすべてを出し切るスポーツです。日本でも社会人やプロはそれをやっていますよね。私は1種で指導をしていて、2年前から4種の指導をするようになったのですが、1日に4、5試合やっているんですね。子どもたちは試合があるから何も言わずにやりますが、1試合目と4試合目のインテンシティは当然ながら変わりますよね。はたして、強度の低い状態でプレーをして練習になるのか。そこに疑問を感じています」

週末は朝から晩までサッカー漬け。子どもがそうなので、家庭自体も付き合わざるをえないというケースも多い。もし1日に1、2試合で終われば、空いた時間でレジャーを楽しむなど他のこともできる。低い強度で長時間サッカーばかりをやっても上達には遠く、オンとオフの切り替えにもつながらない。結果、"サッカー疲れ"が生じてしまう。

「U-11プレミアリーグで、年間を通じて力が拮抗した中で試合をすることで、目の前の試合にすべてを出し切ることの大切さを、身を持って体験することができると思います。週末のリーグに向けて戦うサイクルができれば、指導者は相手の研究やスカウティングなどをし、それをトレーニングに落としこむ経験もできるので、選手だけでなく指導者のレベルアップにもつながると思っています。それが5年生できれば、6年生にも、4年生にもつながるのではないでしょうか」

U-11プレミアリーグは神奈川、東京、千葉、栃木を中心に錚々たるクラブの参加が決まっている。FLは日本のリーグ戦文化定着に向けて、着実に地盤を固めていくつもりだ。

FOOTBALL LEADERS
日本サッカーの未来を担う、育成年代に関わる者たちの自発的な活動として、必要とされているものを見極め、ビジョンを共有する人をつなぐことで、ともに学び、高め合うための機会をオーガナイズする指導者の集い。
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