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Jリーグのレベルをどうやって「世界」に近づけるか/JAPANの現在地

7月のCOACH UNITED ACADEMYは「JAPANの現在地」をテーマに、海外を舞台に戦う指導者から見た日本の現状を検証する。前半は「ベトナムから見たJAPANの座標」と題し、アジアの新興国で代表チームを率いるという難しいミッションに挑みながら、着実に結果を残しているベトナム代表監督の三浦俊也氏と、「チームビルディング」の第一人者である福富信也氏の対談を公開中だ。今回は本編の中から、日本とベトナム両国のサッカーレベルを引き上げるために必要なことについて、三浦氏の総括と提言をお届けする。(取材・文/鈴木智之 写真/Jon Candy)

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<<世界で2番目に誇るべき日本の組織能力

■日本人がヨーロッパで監督を務めるのは何年後?

昨年からベトナム代表を率い、ASEANではタイに次ぐ2番手の地位まで引き上げた三浦俊也監督と、東京電機大学サッカー部監督・福富信也氏との対談最終回は、「三浦監督が考える、日本サッカーのレベルを引き上げるために必要なこと」について。

福富:以前、ASEANの選手は競り合いを嫌うというお話がありましたが、体格面は日本も同様で、世界的に見ると恵まれている方ではありません。球際の競り合いの激しさや、相手と戦う部分の向上のために、日本サッカーへのアドバイスはありますか?

三浦:まず育成年代で改善していく取り組みが必要でしょうね。それとプロの場合、レフェリーを海外から呼んで、選手をヨーロッパの基準でプレーさせることも大切だと思います。いま一番の問題は、Jリーグに有力な外国籍選手を呼ぶことができないことですよね。いくら口で言ってもやはり限界があるので、レベルの高い選手と間近で対戦する機会を得て、そこでどれだけのプレーができるか...。そして最終的に日本代表が強くなるためには、ある程度の数の選手がヨーロッパのビッグクラブでレギュラーになり、誰もが知っているレベルにならないと、ワールドカップ優勝というのは現実的ではないと思いますね。

福富:たしかに、そうかもしれません。

三浦:個の能力を高めるためにはヨーロッパに行くのが一番いいのですが、誰もが行けるわけではありません。そうなると、Jリーグのレベルを上げないと難しい。Jリーグも頭を悩ませていますけど、旬の外国籍選手を呼べるような環境を作り、その中で選手がどれだけできるか。日本代表がいくら親善試合をしても、やはり相手は100%本気ではないんですね。で、W杯に行ってああいう状況(注:ブラジルW杯グループリーグ敗退)になりますから。本当は、ああいう中でやれるかどうかが大事なわけで。ただそこは経済的な状況も絡んでいると思います。いまテレビマネーがヨーロッパに流れてしまっていて、あちらの経済はそれほどよくはないのに、選手の年俸がものすごく高い状況にある。そのヨーロッパと比較すると、日本にはレベルの高い外国籍選手を獲ってくることができない現実があります。そこがジレンマですね。

福富:日本の現状をベトナムに置き換えると、かつての日本にはジーコやリネカー、スキラッチ、ドゥンガといったビッグネームが来て、サッカーのレベルが上がりました。世界で活躍してきた選手と一緒にプレーすることで、球際の厳しさを始めとするオン・ザ・ピッチの強化と同時に、生活面も含めた"プロ意識"が高まると思います。

三浦:それはあるでしょうね。

福富:先ほど三浦さんがおっしゃったように、日本にはビッグネームを呼べなくなってきました。その中で、これから日本が世界に近づくためには、指導者も国外に出て世界基準を学ばなければいけないと思います。選手であれば、ブンデスリーガでプレーする内田篤人選手や酒井高徳選手などが、リベリやロッベンといった世界トップクラスの選手と対戦していますよね。選手だけでなく指導者もそのレベルで戦うことが、日本サッカーの向上につながると思います。指導者の海外進出についてはどうお考えですか?

三浦:指導者がヨーロッパに入っていくのは至難の業だと思います。言葉の問題もそうですし、そもそも日本人の指導者をリスペクトする文化がないですよね。その突破口として、ヨーロッパで長く選手としてプレーした日本人が監督になる、という道筋はあると思います。東ヨーロッパの選手がイタリアやドイツで監督をすることがあるように。

福富:あと10年ぐらいかかりますかね。

三浦:本田や長谷部や長友が現地の言葉で指導をして、トップのクラブから呼ばれるようになるには、それぐらいかかるかもしれませんね。

福富:最後に、三浦さん自身が描いているキャリア、目標を教えてください。

三浦:現実的なところで言うと、ベトナム代表の監督としてASEANナンバーワンのタイトルを取りたいと思っています。もうひとつ興味があるのが、アジアチャンピオンズリーグで上位に行けるチームの監督です。日本のクラブでなくてもいいので、そういうレベルでやってみたい。代表チームであれば、オーストラリアやアメリカは日本とレベル的に変わらないので、そういう国でキャリアを積めればと思っています。そして最終的に目指すのはヨーロッパ。それは誰もが目指すゴールだと思いますね。

福富:今後のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

三浦:ありがとうございました。

全4回に渡ってお届けした三浦俊也監督と福富信也氏の特別対談。より深く、ふたりの肉声で話を聞きたい方は、ぜひCOACH UNITED ACADEMYのオンラインセミナーをご覧いただきたい。国外から見た日本の長所、改善すべき部分、指導者のあり方などについて、オン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチ両方から貴重な提言を聞くことができるだろう。


三浦俊也(みうら・としや)
1963年7月16日生まれ。釜石南高、駒澤大卒。指導者を目指してドイツにコーチ留学し、ドイツA級ライセンスを取得。帰国後に日本のS級ライセンスも取得した。JFL時代の仙台、水戸を皮切りに、J2の大宮アルディージャ、コンサドーレ札幌で指揮を執り、組織的なサッカーでJ1への昇格に貢献。その後もJ1のヴィッセル神戸やヴァンフォーレ甲府で監督を歴任した後、2014年5月からベトナム代表監督に就任、12月の東南アジア選手権(SUZUKI CUP)ではチームをベスト4へと導いた。リオデジャネイロ五輪を目指すU-22代表監督も兼任する。

福富信也(ふくとみ・しんや)
1980年3月23日生まれ。信州大学大学院教育学研修科修了。横浜F・マリノス育成コーチを経て東京電機大学理工学部へ。専任教員として教鞭を執る傍ら、サッカー部監督として指導の現場に立つ。JFA公認指導者S級ライセンスで講義を担当している他、Jリーグから育成年代まで幅広く指導するチームビルディング指導の第一人者。サッカーのみならず、スポーツ全般、幼~高までの教育分野、社会人などへの講演、研修、セミナーなど多数。著書に『『個』を生かすチームビルディング』がある。2015年5月、組織論を主とした指導、研修、講演や執筆などの事業を行なう株式会社Humanergyを設立。7月18日には、講演「困難を乗り越えたチームが強くなる!」を主催。申し込みはこちらから。

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