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バルセロナに学ぶGK育成の視点/Jリーグ育成年代GKコーチ研修会レポート(1)

GKの育成に目を向けている指導者はどれほどいるだろうか? GKは勝敗に直結するポジションでありながら、日本におけるGKへの注目度、指導環境は十分とは言えない。プロからジュニア年代まで、GKのレベルアップが急務である現状への処方として、Jリーグが主体となりGKコーチの研修会が行なわれた。今回は研修の講師を務めたFCバルセロナ・アカデミーのGK部門ダイレクター、リカルド・シガラ氏が考える、「理想のGK像」や「育成哲学」について紹介する。(取材・文・写真/鈴木智之)

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■GKも11人のフィールドプレイヤーの1人

7月初旬、JリーグがJFAと共同で「育成年代GKコーチ研修会」を開催した。講師として招かれたFCバルセロナ・アカデミーのGK部門ダイレクターのリカルド・シガラ氏が、Jクラブのアカデミー指導者(GKコーチ)に向け、FCバルセロナのGK育成やトレーニングメニューを紹介。世界トップレベルのクラブが展開する、GKの育成システムについて語った。

FCバルセロナのGK部門が強化されたのは5年前のこと。かつてバルセロナのGKとして、ヨハン・クライフ監督のもとで黄金時代を築いた名手アンドニ・スビサレタがテクニカルディクレクターに就任したことがきっかけだった。トップチーム、バルサB、フベニールA(20~17歳)、フベニールB(18~17歳)には、プロ契約を結んだGKコーチを置き、16歳から7歳のカテゴリーにも担当のGKコーチがいるという。

育成組織のGKセクション最高統括責任者であるシガラ氏は言う。

「大切なことはすべてのスタッフが、トップチームに必要とされるGK像を明確に持っていることです。クラブのフィロソフィ(哲学)を知り、7歳からバルサBに入るまでのおよそ12年間で、最大限レベルの高い状態で選手をトップチームに送り込むこと。それが我々の仕事です」

バルセロナが求めるGK像は明確だ。「最大限ボールを保持する」というクラブとしての明確な哲学のもとにGKを育成している。

「GKもフィールドプレイヤーの一員です。10人+1人(GK)ではなく『11人のフィールドプレイヤーのうち、ひとりだけ手も使える』という考え方の方が、わかりやすいかもしれません。我々のサッカーを表現するために、チーム全員でボールを持つ必要があります。常に前にボールを運ぶわけではありません。センターバックやGKを使い、ボールをポゼッションします。ボールを戻すことでスペースを広げ、空いているスペースを埋める作業を繰り返していきます」

『ゴールを守る』というGKの仕事は当然のこととして、バルセロナのGKになるためにはプラスアルファの要素が求められる。それが『ゲームを理解する力』だ。相手選手はどこにいて、味方選手はどこにいて、どこのコースにパスを出せばいいか、最終ラインの背後のスペースをどうカバーすべきかなど、攻撃や守備においても『フィールドプレイヤーの1人』としての役割がある。

シガラ氏は「バルセロナにおいて、ゴール前にいるだけのGKは意味がありません。すべてのスペースを守れないといけません」と前置きをした上で、GKに求める能力を次のように語る。

「(1)敵のゴールチャンスを防ぐ能力。(2)シュートまでの機会を作らせないこと。(3)シュートをセーブする力。この3つを求めています。そのためには、味方とコミュニケーションをとって守備ができること。GKとしてどこに立つのか?というポジショニングも良くなければいけません。ボールの場所に応じて、常に正しいポジションを取り続けていれば、シュートを防ぐ可能性は高まります」

GKというと『シュートを止める』というプレーに目が行きがちだが、それはあくまでゴールを守る最終手段に過ぎない。チームメイトと声でコミュニケーションをとり、シュートを打たせないことこそが最大の防御である。そのために、GKは守備のリーダーとしてチームメイトに指示を出す。GKはフィールドプレイヤー以上に、ゲームを読む力が求められるのだ。

■身長+守備力、そして足元の技術とゲームを理解する力

2014-15シーズンのFCバルセロナには3人のGKがいた。リーガ・エスパニョーラでゴールを守っていたのは、チリ代表のクラウディオ・ブラボ(182cm)。欧州チャンピオンズリーグ、スペイン国王杯ではドイツ代表のテア・シュテーゲン(188cm)が起用されていた。第3GKには、FCバルセロナのカンテラ出身のマシップ(179cm)がいた。つまり、1つのチームでありながら、出場する大会においてGKを使い分けていたのである。シガラ氏が理由を説明する。

「なぜブラボとテア・シュテーゲンが起用されて、マシップが使われないのか。それは身長にあります。彼は179cmしかありません。バルサのカンテラ出身なので、ゲームを理解する力はブラボ、テア・シュテーゲンよりも高いのですが...。スペインのGKの問題は身長なのです」

欧州チャンピオンズリーグなど、スペイン以外の国の選手と戦う場合は188cmのテア・シュテーゲン。スペイン国内のチームが相手のときは、182cmのブラボと使い分けていることがわかる。シガラ氏は「GKに求められる身長は、最低で185cm以上」と語る。世界を見渡すと、身長が高く、ゴールを守るプレーに優れたGKはいる。しかし、バルセロナのGKに求められる、足元の技術とゲームを理解する力まで備えたGKはそれほど多くはない。

「テア・シュテーゲン、ブラボともに足元の技術レベルは高いものがあります。特にブラボは育成年代でチリのコロコロというクラブに所属しており、フリオ・ロドリゲスというチリの中では数少ない、足元の技術向上に力を入れていたGKコーチの指導を受けていました。マシップは15歳からFCバルセロナでプレーしているので、足元の技術、ゲームを理解する力は高いものがあります」

バルサのGKに求められる要素は多岐に渡る。ある意味、GKとして成功するのが最も難しいクラブと言えるかもしれない。その中で、トップチームでプレーできるGKを目指して、7歳から年代を経て育成していく。もちろん、トップチームでプレーできる選手はそう多くはない。なぜなら、ここはバルセロナだからだ。シガラ氏は「バルセロナのトップチームでプレーするためには、世界で5本の指に入るGKでなければ難しい」と言う。世界でトップ5に入るGKの輩出を目指して、バルセロナは育成を続けていく。

レポート2:バルセロナはGKの何を見ているのか>>

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