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サッカーの状況において脳をトレーニングする『フットボールブレイニング』とは?

2016年1月、こけら落としを間近に控えた市立吹田サッカースタジアムで、ワールドフットボールアカデミーのセミナーが行われた。講師はピリオダイゼーションでおなじみの、レイモンド・フェルハイエン氏。スペシャリストコースを修了した人のみが参加できる『エキスパートコース』では、コンディショニング理論だけでなく、サッカー心理学の向上など、様々なトピックでセミナーが行われた。ここでは、サッカーの状況において脳をトレーニングするフットボールトレーニング=『フットボールブレイニング』について紹介したい。(取材・文/鈴木智之)

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■心理学においても『サッカーの言葉』で選手たちに伝える

サッカーに必要な心理学をあなたは言葉で説明できますか? レイモンド氏はセミナーの間中、熱心に耳を傾ける指導者に対し、繰り返しそう説いているようだった。心や精神、そして意識的思考や無意識的思考といった脳の機能は、目で見ることができない。そのような目に見えないものに対しては、抽象的な言葉で説明してしまいがちだ。たとえば、ピッチの中で選手たちのプレーがうまくいかないとき。指導者は『今日は集中していないぞ』や『選手たちは自信がないようだ』という。レイモンド氏によると、それは「何かを言っているようで、具体的なことは何一つ言っていない状態」だという。

「集中していない、自信がないという言葉は一般的で、具体性がありません。何かについて言っているようで、実は何も具体的なことは言っていないのです。サッカーの指導をする上で大切なのが『サッカーの言葉』で選手たちに伝えることです。試合の中で問題が起こったときには、それをサッカーの言葉で定義しないといけません。そうしないと、サッカーの状況で解決しようと言うアイデアが生まれてこないからです。サッカーの言葉で定義すれば、サッカーのトレーニングで解決することができます。心理学においても、サッカーの言葉を用いることが重要です」(レイモンド氏)

試合中、選手の頭の中には様々な感情が生まれては消えていく。行動は感情に支配されるものであり、0-2で負けていたチームが1点を返すと、勢いがついて2点目、3点目を奪い、逆転するケースは世界中で起きている。選手は試合中の様々な外的要因(敵、味方、審判、スコア、歓声...)により、思考や感情に大きな影響を受けている。しかし、外的要因に意識がそれると、プレーのパフォーマンスに大きな波ができてしまう。そこでレイモンド氏は「選手の思考をサッカーに向けさせる。それが指導者のすべきこと」だと言う。

では、どうすれば外的要因に左右されず、選手の思考を一つひとつのプレーに向けさせることができるのだろう? レイモンド氏は「フットボールブレイニング」の観点から、次のようなトレーニング方法を提案する。

「たとえば、技術を身につけるトレーニングをするのであれば、キックやドリブルなど、繰り返し同じ動きをすることは理にかなっています。しかし技術を発揮するための、アクションに関する脳のトレーニングをするのであれば、すべきことは反復練習ではありません。反復とは真逆にある「たった1回」のシチュエーションにこだわったトレーニングです。PK練習は1本だけ、フリーキックの練習も1本だけ。1対1のトレーニングも1回だけ。そして、失敗したらダッシュや腕立て伏せなどの罰ゲームを課します。そうすることで、それぞれのプレーに意識を向けざるを得ない状況を作り出す。それがサッカーの脳トレーニング=フットボールブレイニングの方法のひとつです。」

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■脳の機能も含めてフィジカル的に高い負荷をかける

脳と身体は切っても切り離せないものであり、身体は脳の指令をもとに動いている。適切なトレーニング計画のもとに、トレーニングの中で選手たちに脳の機能も含めてフィジカル的に高い負荷(オーバーロード)をかけることで、能力を向上させていく。それがレイモンド氏の理論だ。

「オーバーロードトレーニングは、選手の身体だけでなく脳をトレーニングさせることにもなります。なぜなら、脳も身体の一部だからです。適切な負荷のかかったトレーニングをすることで、脳は疲労を無視し『アクションを起こし続けろ』という指令を出すことができるようになります」

レイモンド氏はさらに続ける。

「全力でのプレーが100%だとすると、どの程度のパワーでプレーするかは脳が決めています。たとえば、前半の立ち上がりは100%でプレーしていますが、スコアが0-2、0-3と離れていくと、もうだめだと考え、脳から『60%しか出さなくてよい』という指令が出ます。それは決して、フィットネスのレベルが落ちたから良いプレーができなくなったのではなく、脳の指令によるものです。なぜなら、もしピッチにライオンが入ってきて、選手を追いかけたら、100%のパワーで逃げますよね。つまり、フィットネスは十分にあるのに、脳からの指令により、出させないようにしているだけなのです」(レイモンド氏)

選手のフィットネスが万全であるにもかかわらず、試合でそれを100%発揮できないのは、脳からの指令によるところが大きい。スコアや周囲の状況といった外的要因に左右されずに、選手一人ひとりが「いますべきプレー」に意識を向け、爆発的なアクションの回数を増やして持続させていく。それこそがトレーニングで求める部分であり、指導者が追求していく部分でもあるのだろう。

心理学を『サッカーの言葉』で説明するレイモンド氏の話は、脳の情報処理速度にまで及んだ。科学的にサッカーのアクションを分析し、論理的な方法で選手を向上させる。レイモンド氏の言葉の裏には、一貫して理論やファクト(事実)がある。日本サッカーの現場においても、「ワールドフットボールアカデミー」で履修した内容を実践する指導者が出始めてきている。常に学び、実践する指導者が増えていくことで、日本サッカーの将来もより良いものに改善されていくだろう。

後編:戦術の定義とは「選手同士がコミュニケーションをとるためのツール」である>>

レイモンド・フェルハイエン(Raymond Verheijen)
1999年にオランダ代表スタッフに抜擢されて以来、ヒディンクや、ライカールト、アドフォカート、ファン・ハールなどの名監督とともに、オランダ代表、韓国代表、ロシア代表、FCバルセロナなど世界各国さまざまなチームでサッカーのピリオダイゼーションを実践してきた。サッカーに特化したピリオダイゼーションの分野における先駆者である。

取材協力:ワールドフットボールアカデミー・ジャパン


取材・文 鈴木智之
写真 ワールドフットボールアカデミー・ジャパン

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