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スペースの作り方と使い方について。中学生に「サポート」をどのように指導するか?

この夏、Jグリーン堺で興國高校(大阪)が主催する、中学生向けの講習会が行われた。講師を務めるのは、スペイン・バルセロナを拠点に世界中で選手、クラブの指導とコンサルティングを行うサッカーサービス。

興國高校とサッカーサービスはコンサルティング契約を結んでおり、その縁で中学生へ世界最先端のトレーニングを体験してもらうことになった。COACH UNITEDでは、2回に渡ってその様子をレポートする。(取材・文/鈴木智之)

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■サッカーの基本的な動きである「サポート」

強烈な夏の日差しが照りつけるJグリーン堺。サッカーサービスのフェランコーチは、集まった中学生を前に語りかける。

「今回のトレーニングは、サッカーの基本的な動きである"どのようにスペースを作り出すか""作ったスペースを誰が使うのか"の2つをテーマに行います」

サッカーサービスは『賢い選手の育成』を目指し、テクニックやフィジカルだけに頼るのではなく、サッカーインテリジェンスを高めるためのトレーニングを行っている。

そのメソッドは欧州を中心に高く評価されており、パリ・サンジェルマンのアカデミーでは、サッカーサービスが提唱する『エコノメソッド』でトレーニングを展開している。

サッカーサービスの指導を初めて受ける中学生たちは、緊張の面持ちで説明を聞くと、グラウンドに駆け出していく。

最初のトレーニングはウォーミングアップを兼ねた『パス&コントロール』からスタート。

一人目の選手が、前方の味方へグラウンダーの速いパスを入れ、リターンパスを受ける。その動きを繰り返し、ボールをつないでいく。続いては守備役の選手を入れ、パスの出し手、受け手に対して「守備役がついて来たら、ひとつ前にいる味方にパスを入れる」というルールがつく。

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このルールによって、パスを出す選手、パスを受ける選手は「どこの味方にパスを出すべきか」「どのタイミング、位置でリターンパスを受けるべきか」という、『サポート』と呼ばれる状況判断に基づいたプレーが必要になる。

常に状況判断をし続ける練習をする。それこそがサッカーサービスが提唱する、賢い選手を育てるために必要なトレーニングなのだ。

さらに「パスを受ける選手は、次に進む方向へボールを動かす」という『コントロール・オリエンタード(方向付けたコントロール)』についてもコーチングしていく。これは次のプレーに素早く移行するために重要な技術で、ジュニア年代で身につけておきたいプレーである。

ウォーミングアップを兼ねた「パス&コントロール」と「ボールを前に進めるためのサポート」が組み合わさったトレーニングについて、フェランコーチは「サポート(味方のパスを受ける動き)をするときは、何に注意する?」「どこでサポートをして前に進む?」と問いかける。

さらに「サポートをしていて、パスが来ないからといって止まってしまうのは良くない選手。良い選手はすぐに切り替えて、次のサポートの動きを連続して行います」とアドバイス。

選手たちは身体だけでなく、頭の中も常に動かさなくてはいけない状況におかれ、見た目以上に負荷がかかっている様子だった。

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■チームとしての「サポート」とは?

続いては「4対4+2フリーマン」の練習へ移行。人数が増え、さらに実戦へと近づいていく。ここでは長方形でグリッドを作り、短い辺にそれぞれフリーマンが1人ずつ入る。

さらにグリッドを3等分する形にマーカーを地面に置き、ゾーンを区切る。マーカーを置くことでゾーンを作り出し、いつ・どのタイミングでゾーンに入ってプレーするのか? という状況判断に働きかけるトレーニングとなっている。

周りを見て、ボールがどこにあり、味方、敵はどこにいるのか。それを見た上で、ボールをつなぐ上で有効なスペースに入る。めまぐるしくボールが動く中で、素早く状況を認知して、どこへ移動するかを判断し、動き続けなければいけない。状況判断、認知に働きかけるのが、サッカーサービスのトレーニングメソッドである。

さらにそれが、FW、MF、DFとポジションを意識したオーガナイズになっており、サッカーの試合で起きうる状況が、常に練習の中で作られている。

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「4対4+2フリーマン」の練習でも、「1トップ、1MF、2DF」というポジションを崩さず、ボールの動かし方、パスの受け方、パスの出し方、マークの仕方、マークの外し方など、常に判断をともなったプレーを通じて、動きの質を向上させていく。

練習中、サッカーサービスのコーチは選手へ頻繁に問いかける。「チームとして、どのようにボール保持者をサポートする?」「良いサポートをするためには、何を見る?」といったように質問を投げかけて、選手に考えさせることで、より適切なプレーへと導いていく。

たとえば、「4対4+2フリーマン」では、1トップの選手が中盤のゾーンへ下がらず、2DFを牽制する高いポジションをとることで、中盤にMFがプレーできるスペースを作り出すといった具合に、ボール保持者とパスの受け手だけの関係でなく、選手全員が連動して、ボール保持者がより良い状態でプレーする状況を作り出す。それが「チームとしてのサポート」になる。

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参加者の中学生は、初めて見聞きするサッカーのコンセプトに対し、最初は戸惑いを見せていたが、サッカーサービスのコーチが設定する「段階を経て、コンセプトを習得していく」という練習メニューを体験するにつれて徐々に理解し始め、最後にはサッカーサービスのコーチが「練習を通じて大きく成長を遂げてくれた。みなさんのがんばりに満足しています」と語るほど、高いレベルのプレーができるようになっていった。

サッカーを上手くプレーするに当たり、理にかなったコンセプトの元、選手のレベルに合った適切なコーチングをすることで、段階を経てプレーを向上させていく。サッカーに対する深い理解と指導の的確さが、サッカーサービスの特徴である。

次回の記事では、関西屈指の強豪校であり、Jリーガーを何名も輩出している興國高校の内野智章監督が、サッカーサービスとパートナー契約を結んだ理由について、詳細をお届けしたい。

次の記事:世界との差は「教わっているか、教わっていないか」日本の高校サッカー部がスペイン指導者と契約した理由

「サポート」、「コントロール・オリエンタード」など、サッカーサービスのトレーニングメニューを詳しく知りたい方はこちら>>
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欧州で求められるプレー判断の基準"をトレーニングする日本で唯一のスクール>>
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サッカーサービス/
スペイン・バルセロナを拠点に世界各国の主要リーグの選手などに対して、パーソナルコンサルティングを行っている育成のプロ集団。2015年までは日本サッカー協会とパートナー契約を締結しコンサルティングプロジェクトディレクターを務めた。また、同社が提唱する「エコノメソッド」はフランスのパリ・サンジェルマンも全面導入している。2016年より興國高校(大阪)とコンサルティング契約を結んだ。