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トレーニングはつらいものではなく「楽しい」ものと思わせる / 脳とカラダを育むトレーニングオーガナイズ

COACH UNITED ACADEMYでは「U9~U10、プレ・ゴールデンエイジでやるべきこと」をテーマに、FCトレーロスU9のトレーニング風景を公開中。トレーロスは東京都杉並区を中心に活動するクラブで、幼稚園から中学生までのカテゴリーを有する。前回の記事に続き、今回は「U9の選手たちに飽きさせない設定で、判断の伴ったトレーニングをする」部分を中心に紹介したい。(文・鈴木智之)

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■遊びのなかにサッカーにおける必要な要素が隠されている

トレーニングのテーマは「ドリブルとシュート」。ウォーミングアップを兼ねたメニューを行った後、「1対1の鬼ごっこ」を実施。ここでは5m四方のグリットをつなげて3つ作り、中央のグリッドに攻撃役と守備役が向かい合って立ち、攻撃側が左右どちらかのグリッドの端に到達すれば勝ち。守備側は「攻撃側にタッチしても良い、両端のグリッド」に攻撃側の選手が入ったときに、タッチできれば勝ちとなる。(スタート時に入っている中央のグリッドでは、守備側は攻撃側の選手にタッチすることができない)

一見、遊んでいるように見えるトレーニングだが、サッカーで必要なサイドステップや、相手の動きについていくことを身につけることができるメニューだ。攻撃側は目の前にいる守備側を、どのようにすれば振り切れるかを考えることがポイントになる。ここでは、左右にステップを踏み、鬼をひきつけておいてスピードを上げ、一気に振り切るといった、駆け引きをすることが重要だ。対する守備側は攻撃側がどちらに行こうとしているのかを予測し、サイドステップを踏みながらついていく。そして攻撃側にタッチできるエリアに入ったら、スピードを上げてタッチする。これは守備時の1対1の対応と同じである。

ここでは「4点とった人から抜ける」という競争心を煽るようなルールを設定し、子ども達のやる気と競争心を高めていく。遊びの要素で子ども達を飽きさせず、サッカーの要素をトレーニングしていくという工夫が見て取れる。

コーチはうまくできた攻撃側の選手に対し、「守備の選手をうまく左右に揺さぶっていたね。なんで行けると思った?」と質問。すると子どもは得意気に「右に行くなと思ったから、反対側に行った」と返答。そこでコーチは「相手を置き去りにするチャンスがあったら、逃さないように行こう」とアドバイスを送っていた。

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■飽きやすい年代の子どもたちに対してどのように興味を持たせるか

次の練習は、攻撃側も守備側もボールをそれぞれ足元に置き、ドリブルをした状態で行う。(グリッド、ルールの設定は同じ)。これはまさに、相手を見てボールを扱い、左右に揺さぶって、抜けそうなときにスピードをアップするという、試合の中でのドリブルと同じである。コーチは攻撃側の選手に対して「ゆっくりした揺さぶり、小さな揺さぶりだと守備側はついていきやすいよ」と声をかけ、よりうまくプレーするためのヒントを与えていく。

続いてのトレーニングは、グリッドを区切った1対1と2対2(ゴール付き)をチーム対抗戦で行った。(設定詳細は動画参照)。これまでのトレーニングを実戦の形に近づけていき、シュートの要素もプラスしていく。このトレーニングはチーム戦なので、コーチは「プレーしている選手に対して、チームメイトがどちらの方向に攻めればいいかなど、声をかけて助けてあげよう」と言い、選手が順番を待っている間も頭を動かすように工夫がなされていた。

詳細は動画をご覧頂ければと思うが、練習メニュー、声掛けの内容を参考にするだけでなく、「自分だったらこういう声かけをする」「このポイントに対してコーチングをする」といったように考えながら見ることで、多くの学びを得ることができるだろう。

この日の練習では、子ども達を飽きさせない工夫が随所にほどこされ、サッカーの技術、フィジカル、判断に働きかける、きめ細やかなトレーニングが行われていた。U9、U10年代の子ども達は飽きやすく、トレーニングに集中させることは難しい。そんな中、トレーロスのトレーニングはひとつの回答を提示していると言っていいだろう。U9、U10の子ども達を指導しているコーチは、ぜひ参考にしてほしい。

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<プロフィール>
FC トレーロス U12監督
綿貫 一成 (わたぬきかずしげ)
1975年、神奈川県出身。 立正大学サッカー部でプレーした後、 桜美林大学~横浜FCジュニアユース~横浜FCユースで指導。日本国内のライセンスはもちろんのこと、他にも欧州サッカー連盟公認B級コーチ 、イングランドサッカー協会公認ユースコーチ 、オランダサッカー協会公認国際コーチなど様々な資格を有する。

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