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少年サッカーの指導に重要な「3つのタイミング」 / グラスルーツコーチにみる「良い指導者」の在り方

COACH UNITED ACADEMYでは、NPO法人ゼロスポーツコミュニケーション理事の、森谷智之氏のセミナーを公開中。森谷氏は「子ども達のスポーツ環境をより良くし、スポーツをもっと根付かせたい」という想いから、NPO法人ゼロスポーツコミニケーションを創設し、スクール運営、指導者育成、指導者派遣などを通じて、子ども達のスポーツ環境をより良くするための活動を行っている。後編では「指導者の行動」「良いコーチとは?」を中心に、森谷氏の考えを紹介したい。
(取材・文 鈴木智之)

森谷智之氏のセミナー動画を、
COACH UNITED ACADEMYで公開中!

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■子供を指導するときに重要な「3つのタイミング」

森谷氏の言う「コーチ」とは、主にジュニア年代の少年団を指導する「お父さんコーチ」(ボランティアコーチ)を対象としている。前編では、指導者になった理由、競技歴の有無と指導の関係、ジュニアスポーツは子どもたちを笑顔にすること、といったことについて、森谷氏の指導経験の中から培った考えを話してもらった。

ここからは「コーチはどう行動すれば良いのか~良いコーチとは?」について、話を展開したい。コーチが現場において、子ども達を指導するタイミングは3つ。それは練習前、練習中、練習後だ。それぞれの状況において、コーチがフォーカスを当てる部分は変わっていく。と森谷氏は言う。

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「まず練習前にコーチがすることは、あいさつです。子どもたちとあいさつをすることで、様子を観察するとともに、ここからはサッカーの時間だよ。とスイッチを切り替えるようにうながしていきます。あいさつひとつでも、子どもの様子はよくわかります。元気にあいさつをする子、うつむき加減の子、そっぽを向いてしまう子など、発声や雰囲気でコンディションを観察します」

あいさつをするときはコーチと子どもだけでなく、子ども同士でもうまくコミュニケーションをとれているか、問題が起きていないかなどを確認していくという。

練習会場で子どもたちとコミュニケーションをとると同時に、他のコーチとトレーニングについての打合せもする必要がある。今日はどんな練習をするのか。その練習にはどんな狙いがあるのか。コーチ間の情報共有は、選手が上達する上で欠かすことのできないものだ。森谷氏が説明する。

「メインのコーチが主導し、練習が始まる前に他のコーチと練習内容、狙いを共有します。練習中にそれをすると、子どもたちが待っている時間が長くなり、集中力が途切れてしまいます。3分程度でできるので、練習前にコーチ同士でコミュニケーションをとることは、非常に重要なことだと考えています」

練習中に指導者がすることは、「選手がトレーニングを理解して取り組んでいるかを、表情や動作から観察すること」だと森谷氏は言う。

「選手がトレーニングの内容や狙いを理解できていないときは、練習内容をより易しいものへと変更します。トレーニング以外ですべきは、夏場は適切な飲水ができているか、グラウンドに石やガラスなどの危険物が落ちていないか。体調の悪い選手はいないか。選手がケガをした時の手当てなどです。練習前後に体調や怪我の有無などをチェックするのも良いと思います」


■心得ておきたい「三位一体」の築き方

森谷氏は「ジュニアスポーツは三位一体」だと語る。少年サッカーは子ども、保護者、そしてコーチの三者があって成り立つものであり、指導者の矢印を子どもだけでなく、保護者へと向けることも大切なポイントになる。

「たとえば、コーチが練習中に、ふざけている子どもを叱ることがあります。それはしつけの部分であり、問題はないのですが、その子の保護者にはなぜ叱ったのか、理由をしっかり伝えることが大切です。また、子どもを褒めたときも同様に『なぜ褒めたのか』という理由をお伝えすると良いと思います。子どもだけでなく、保護者にも『A君のあのプレー、良かったですね』と伝えると、嬉しいですよね。保護者の方のモチベーションも上がるので、ぜひ積極的に会話をしてみてください」

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また、お父さんコーチの中には「自分の子どもの扱いをどうすればいいか」について、悩む人も多い。森谷氏は「自分の子どもに対して、お父さんコーチはどう接すればいいのか?」という問いについて、次のように回答する。

「子どもにとって、自分の父親がコーチなのは誇らしい一方、過度に干渉するとうるさく感じてしまうもの。家だけでなく、好きなサッカーの場所にもお父さんがいるわけですから(笑)。サッカーの中でお父さんに色々言われると、サッカーが嫌いになるかもしれません。実際に、そのようなケースはよく耳にします」

では、お父さんコーチはどのように、チームに所属する我が子と接すれば良いのだろう。森谷氏は次のようにアドバイスを送る。

「自分の子どもと他の子を平等に扱うこと。それが一番大切です。たとえば、選手交代で自分の子どもを最初にベンチに下げたり、反対に重要なポジションで使い続けたり。あるいはGKが不在のときに、自分の子どもにやらせたり・・・。自分の子どもは扱いやすいのもわかりますが、他の子と機会を均等にしてあげてください。褒めるとき、叱るときも平等に。言い方は悪いですが、自分の子どもが貧乏くじを引かないようにしてあげたほうが良いと思います」

COACH UNITED ACADEMYでは、この他にも、保護者が子どもにすべきサポート、保護者に対するコーチの歩み寄り方、トレーニング時の環境づくりなど、トピックは多岐に渡っている。「ここでお話させて頂いたことが、選手や保護者、コーチの方々の力になることを祈っています」と話す森谷氏のセミナーを、ぜひ動画でご覧いただければと思う。

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<プロフィール>
森谷 智之
NPO法人ゼロスポーツコミュニケーション理事を務め、今までにイングランドサッカー協会 Level1 coach,Level2 Medical coach、オランダサッカー協会 Basic coach、など海外のライセンスを持つほか、日本サッカー協会公認C級指導者、日本サッカー協会キッズリーダー(U8)日本コーディネーショントレーニング協会ブロンズライセンスなど数多くの資格を取得し、現在は都内ジュニアチームコーチを指導しながら、ラジオ クリスタルシャワー コンシェルジュ(レインボータウンFM )なども務めている。

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