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チームのコミュニケーションレベルを高めるために、指導者はどうアプローチすべきか?

「サッカーのピリオダイゼーション」で有名な、ワールドフットボールアカデミーのレイモンド・フェルハイエン氏。セミナーレポート2回目は「コミュニケーションの重要性」について、マンチェスター・シティやオランダ代表を始め、多くのビッグクラブで手腕を発揮してきたレイモンド氏の見解を紹介したい。(取材・文/鈴木智之)

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■コミュニケーションのベースが「戦術」

「最初に、サッカーの構造の話をしましょう。サッカーとは、戦術に基づく「コミュニケーション」、状況認識に基づく「状況判断」、テクニックを用いた「判断の実行」、これらをハイテンポで90分間維持するための「フットボールフィットネス」の4つの要素が互いに関係しあうスポーツです。

これらには決まった順番があります。最初に来るのが、コミュニケーションです。たとえば、ボールを持って攻撃している選手がいるとして、ポジション、タイミング、方向、スピードといった事柄から成り立つプレー動作を通じて、言葉を使わずにチームメイトとコミュニケーションをとっています。この、コミュニケーションのベースとなるのが、戦術と呼ばれるものです。つまり戦術とは、チームの約束事を作ることであり、選手同士のコミュニケーションを円滑にするために必要なものなのです」

コミュニケーションはサッカーにおける、重要な要素のひとつだ。サッカーとはひとつのボールを巡って、チームメイトの11人が連動し合うスポーツであり、プレーの展開は速く、局面で言葉をかわすことは難しい。そこで、選手達はときに言葉を使ったコミュニケーション(バーバルコミュニケーション)をとり、多くの時間で言葉を使わないコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)を用いる。

■コミュニケーションレベルの高いチームが結果を出す

サッカーにおいて、コミュニケーションがなぜ重要なのか。レイモンド氏はワールドカップや欧州選手権を例に挙げて説明する。

「2010年の南アフリカW杯で優勝したスペインには、FCバルセロナの選手がたくさんいました。2014年のブラジルW杯で優勝したドイツの主力は、バイエルン・ミュンヘンの選手でした。近年のイタリア代表において、守備のユニットはユベントスの選手で形成されていました。このように、選手が互いの動きを理解しているチーム、すなわちコミュニケーションのレベルが高いチームは、試合で良い結果を残すことができるのです」

選手同士のコミュニケーションは、指導者の働きかけで向上させることができる部分でもある。たとえば、一人の選手がスペースを作ってボールを受けに行き、味方選手がそこへパスを通す。両者の個人のアクションとしては素晴らしいのだが、パスが通らないことがある。そこで必要なのはコミュニケーションの質を高めて、プレーを微調整することにほかならない。

「サッカーのトレーニングにおいて、選手同士のコミュニケーションを向上させることが大切です。パスにしてもポゼッションにしても、コンディショニング、戦術...すべてのトレーニングにおいて、コミュニケーションを向上させる要素を含んでいることが望ましいのです。なぜなら、それがサッカーのアクションにつながるからです。相手のいないトライアングルパスのトレーニングは、コミュニケーションが発生していません。コーチが『あそこへ行け』『ここに蹴れ』と言ってしまっては、選手の判断は存在しません。それはどこにボールを蹴るかという、プレーの実行のトレーニングであって、パスではなく、キックの練習に過ぎないのです」

■コミュニケーションを高める練習と対話

レイモンド氏は「パスはサッカーのアクション。キックはベーシックアクション」と違いを表現する。

「キックの練習はサッカーグラウンドでやる必要はありません。ゴールがなくて、相手もいない練習は駐車場でもできます。これが3(攻撃)対1(守備)であれば、パスのトレーニングになります。それは、グラウンドですべきことでしょう。この練習には、味方の動きやパスの方向性、強弱によってコミュニケーションの要素が含まれています」

コミュニケーションの視点がなければ、選手のミスの多くを「プレーの実行のミス」ととらえてしまうことも考えられる。ミスの種類を見極めることは、指導者として知っておきたい部分だ。

「選手が試合中、どのように状況を認識し、判断をしたのか。ベンチにいる指導者は知ることができません。選手の頭の中を見ることはできないからです。実際に選手がどのような判断をしていたのか、知る方法はひとつ。それは選手に聞くことです」

ここでもコミュニケーションの重要性が、繰り返し説かれていく。選手と会話をすることは、コミュニケーションの基本である。前回の記事でレイモンド氏は「選手からの質問を好む」というエピソードを紹介したが、指導者と選手、そして選手同士のコミュニケーションを高める練習や対話をすることが、選手のレベルアップをうながし、結果としてチームの向上につながる。

レイモンド氏のセミナーは客観的な事実をもとに、選手を向上させるための考え方、手法を惜しみなく伝えてくれる。このセミナーにも多数の指導者が集まっていたが、多くの刺激を受けたようだった。次回は「プレースタイルのピリオダイゼーション」について、お伝えしたい。

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レイモンド・フェルハイエン(Raymond Verheijen)
1999年にオランダ代表スタッフに抜擢されて以来、ヒディンクや、ライカールト、アドフォカート、ファン・ハールなどの名監督とともに、オランダ代表、韓国代表、ロシア代表、FCバルセロナなど世界各国さまざまなチームでサッカーのピリオダイゼーションを実践してきた。サッカーに特化したピリオダイゼーションの分野における先駆者である。

取材協力:ワールドフットボールアカデミー・ジャパン

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