TOP > コラム > レイモンド・フェルハイエンからの提言「プレースタイルのピリオダイゼーション」とは?

レイモンド・フェルハイエンからの提言「プレースタイルのピリオダイゼーション」とは?

「サッカーのピリオダイゼーション」で有名な、ワールドフットボールアカデミーのレイモンド・フェルハイエン氏。セミナーレポートのラストは「プレースタイルの発展」について。レイモンド氏は「どんなトレーニングであっても、最終的にプレースタイルを発展することに貢献していなければいけない」という。(取材・文/鈴木智之)

<< 前回の記事を読む

IMG_9233.jpeg

■どのようにコミュニケーションを向上させるか?

なかでも重要になるのが、前回の記事で紹介した、選手同士のコミュニケーションの向上だ。パスやボールポゼッション、サッカーコンディショニング、戦術のトレーニング...すべてにおいてコミュニケーションを向上させることを目的に行うことが望ましい。

では、プレースタイルをどのような視点でとらえ、選手同士のコミュニケーションを発展させていけば良いのだろうか? レイモンド氏は1-4-1-4-1のシステムを例にあげ、考え方を説明する。(数字は背番号)

system.jpg

「ポジションに特化したパスのトレーニングをするとき、センターバックの3番、左サイドバックの5番、右ウイングの7番の3人が同じグループでプレーする必要はあるでしょうか?

試合中、3番、5番、7番の連携でパスを回す場面は、ほとんどありません。つまりこれは、試合の状況にそぐわないコミュニケーションだといえます」

では、どのようなグループを使ってトレーニングをするべきなのか。レイモンド氏は「選手同士のコミュニケーションを向上させるのであれば、試合中、実際にパスを交換する回数の多い選手同士が望ましい」と語る。

■一緒にトレーニングする選手のグルーピングも重要

たとえば、右サイドバックの2番とアンカーの6番、右ウイングの7番は右サイドでプレーするので、当然パスを交換する回数は増える。試合の状況に近いと言えるだろう。

「3番、4番、6番、8番、10番も、試合中は近くでプレーしています。その関係性でトレーニングをすることで『この体の向きのときはここでボールを受けたい』といったことが、ノンバーバル(言葉を使わない)コミュニケーションで伝わります。このセミナーに参加している指導者の方は、練習のときに適当にグループを作っていますか。それともポジションの近い選手同士でグループにしていますか。思い返してみてください」

ここからレイモンド氏は、具体的なトレーニングの進め方について言及していく。鳥かごやロンドと呼ばれる、コーンをダイヤモンドの形に置いて選手がそれぞれ立ち、攻撃4対守備2で行うトレーニングがあるが「この練習でも、11対11の試合の状況に即したコミュニケーションを高めることができる」と言う。

「たとえば試合中、右サイドで4対2の状況を作り、2番、7番、8番、9番の4人がコミュニケーションをとってボールを動かす場面があります。ピッチの中央部では6番、8番、10番、9番の4人もそうでしょう。このように、11対11を単純化させて、ポジションに即した状態で行うのも、プレースタイルを発展させる方法です」

さらにレイモンド氏は、選手の人数が少ないときに、どのような人数設定でトレーニングをした方が良いのか、参加者にアドバイスを送る。

■コミュニケーションに負荷をかけながらトレーニングする

「こちらが1-4-2-3-1、相手が1-4-3-3の中盤逆三角形のシステムを採用しているとします。この状況で『守備のプレス』を向上させるためのトレーニングをする際、どのような人数設定の段階を踏めば良いでしょうか? もし、練習に来ている選手が21人しかいないとき、11対11の試合形式でどのようにすれば、選手間のコミュニケーションに負荷をかけながら、プレスのトレーニングをすることができるでしょうか」

参加者から「ピッチを狭くする」というアイデアが出たが、レイモンド氏は「ピッチを狭くすると、プレスに行くのは簡単になる」として却下する。

「選手が21人しかいないのであれば、11対10をします。これは私のアイデアで、必ずこうすべきというわけではありません。ひとつの例です。どのような段階を経ていくかは、コーチ自身で決めてください。私は考え方を話しています。人数が少なくても、11対11のときに起きるシチュエーションを作ることはできます。正しい段階を経ることで、選手に賢く考えさせることは可能です」

では、11対10で試合をする場合「プレスをかける」というテーマにおいて、10人のチームはどのポジションの選手を削るべきだろうか。そう、センターバックだ。相手チームが4-2-3-1でワントップであり、前線には1人しかいない。そのため、センターバックを1人にすると、相手のワントップと1対1になるが、最終ラインには両サイドバックがいる。また、相手の最終ライン、もしくはGKがボールを持った場合、前線からプレスに行くことが狙いのひとつであるため、FWを減らすのは良い方法ではない。

「さらに難しくするためには11対9にして、ダブルボランチのどちらかを外します。そして、守備の時に両ウイングが中央に絞るように指示をします。20人しか選手がいない(10対10)のときは1-4-3-2対1-3-3-3。10対9のときは、最終ラインが3対2になり、ひとり多い状況なので最終ラインのひとりを減らし、1-4-3-2対1-2-3-3にします。次に18人しかいないときは、10対8にし、さらに難しい状況にします。このとき、最終ラインの選手は減らせないので、ダブルボランチの1人を減らします」

このようにして『プレス』というテーマに対して、どのような設定にすれば良いかを考え、段階を経て負荷をかけていく。それが『プレースタイルのピリオダイゼーション』の考え方のひとつである。

「16人であれば、8対8か7対9をします。その際はピッチの横幅は同じで、縦を狭くするでしょう。それを選ぶのは指導者です。選手が何人いようと、同じ目的のトレーニングはできます。選手の配置を図に書いて比べたり、常に正しい解決方法を探すなどして、11対11の試合の中で起こるコミュニケーションに対してコーチングをしていくこと。それが大切だと、私は考えています」

レイモンド氏のセミナーは技術、戦術、トレーニング論から、指導者の心構えまで多岐にわたる。参加者の多くは彼の言葉に対し、熱心に聞き入っていた。勉強する熱意を持った指導者の存在が、日本サッカーを強くしていく。改めてそう感じさせる、密度の濃いセミナーだった。

<< 前回の記事を読む


レイモンド・フェルハイエン(Raymond Verheijen)
1999年にオランダ代表スタッフに抜擢されて以来、ヒディンクや、ライカールト、アドフォカート、ファン・ハールなどの名監督とともに、オランダ代表、韓国代表、ロシア代表、FCバルセロナなど世界各国さまざまなチームでサッカーのピリオダイゼーションを実践してきた。サッカーに特化したピリオダイゼーションの分野における先駆者である。

取材協力:ワールドフットボールアカデミー・ジャパン

フィジカルやコンディショニングなど専門分野のセミナー動画も月額980円で見放題!詳しくはこちら