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プロを目指すには「自立した生活習慣の獲得」が必要 / FC東京U-15深川が目指す「育成と結果の両立」

今季、トップチーム昇格を決めた岡崎慎を始め、多くのプロ選手を輩出してきた、FC東京U-15深川。2014年には高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権で優勝し、中学年代の日本一に輝くなど、日本トップレベルの育成組織である。なぜFC東京U-15深川は多くのプロ選手を輩出するとともに、大会で結果を残すことができるのだろうか? 後編では、2012年より同チームの監督を務め、現在はFC東京育成部長に就任した奥原崇氏に「育成と結果の両立」をテーマに話を訊いた。(文・鈴木智之)

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■まずは「1週間のサイクル」を見直そう


育成年代の指導者の多くは、日々、育成と結果をどう並行して追い求めていくかに頭を悩ませている。FC東京U-15深川は、FC東京のトップチームに選手を送り込むために作られた育成組織である。そのため、「プロになるためにはどうすればいいか」という視点のもと、日々選手の育成にあたっている。

FC東京U-15深川の監督を務める奥原崇氏は「U-15の選手にまず行うのが、プロになるための生活習慣の獲得です」と語る。

「育成年代の選手の1週間のサイクルは、土日のいずれかに試合、月曜日がオフ。その後、平日は学校の後にトレーニングがあり、週末の試合に向かって準備をしていきます。この1週間の過ごし方が、プロ選手になるためのものになっているか。FC東京U-15深川では、選手一人ひとりと話をし、親御さんや学校の先生とコミュニケーションをとりながら、その選手に合った一番良い生活習慣を構築させることに取り組んでいます」

具体的に、プロになるための生活習慣とはどのようなものだろうか? 奥原監督は「選手それぞれに違いはありますが...」と前置きをした上で、次のように話してくれた。

「まず、朝は何時に起きるのか。朝起きて、学校に行くまでに軽くジョギングをしたり、ストレッチをしたり。学校から帰ってきて、練習に行くまでの時間を勉強にあてるのか、自主練にあてるのか。補食をとってから練習に行くのかなど、パターンはいくつかあると思いますが、1ヶ月経った時に、選手自身に成長している手応えがあるかどうかが大切です。手応えが大きく感じられない場合は、1週間のサイクルを見直します」

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■オフザピッチでの選手の状況を把握する


サッカー選手として成長するためには、ただサッカーだけを頑張っていれば良い、というものでもない。奥原監督は「生活習慣が根付いていない、学校で勉強をしない、宿題をしないといったこと、すべてがグラウンドの中に現れる」と言う。そのため、保護者と面談し、年に1回は選手が通う学校に足を運び、担任の先生と話をするなど、オフザピッチでの教育にも力を入れている。

選手達はプロを目指しているとはいえ、U-15年代は子どもから青年へと成長する狭間の時期でもある。心も体も大きく変化し、些細な事で揺れたりもする。多感な年頃であり、指導者として選手に関わる中で、少なからず難しさを感じることもあるという。

「我々は選手に、グラウンドの中で自分で判断をして、プレーできる選手になってほしいと思っています。そのために様々な働きかけをするのですが、中学3年生になっても変化が見えにくい選手がいました。そこで、夏休み明けに選手と面談をして、根気強く問いかけたところ、朝、お母さんに起こしてもらわないと起きられない。ご飯は茶碗に一杯しか食べない。中学生になっても、サッカーの準備を親にしてもらっている等、いままで隠していたことがポロポロと出てきたんです」

選手自身が隠していたネガティブな部分を吐き出したことで、自分がすべき生活習慣の獲得に目が向き、結果として「中3の夏休み以降、サッカー面で大きな成長が見られた」と経験談を語ってくれた。さらに奥原監督は「生活習慣の獲得、人間的な成長に目をつぶっているうちは、選手の成長は難しい」と話す。一方で「だからこそ、自立を促して生活習慣を獲得し、プロになるための本人のスイッチが入りさえすれば、僕らが手をかけなくても自然にすごいスピードで伸びていく」と言う。

「中学校1年生の4月に良い生活習慣が獲得できる選手もいれば、中3でFC東京U-15深川を卒業してU-18に行く、あるいは高校のサッカー部でプレーするといったように、新しい環境に移ることで自立し、伸びていく選手もいます。そこにはこれといった方法があるわけではないので、選手一人ひとりと向き合って、その選手の悩みにしっかりと寄り添うことが大切なのだと思います」

COACH UNITED ACADEMY動画後編では、「選手を育てながら、公式戦で結果を出すこと」について、FC東京U-15深川ではどのように取り組んでいるか、奥原監督の考えや工夫を話してくれた。あまり表に出ることの少ない話が収録されているので、動画前編とともに後編もお楽しみ頂ければと思う。

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奥原 崇/
現役時代は1995年から1999年まで、FC東京の初代背番号10を背負い活躍。引退後、東京ガスでの社会人経験を経て、2003年に指導者に転向。その後、FC東京普及部コーチとして、ジュニア年代の指導に6年間たずさわる。2008年にトップチームコーチとなり、11年にU-15深川のコーチ、12年より同チームの監督に就任後、17年に育成部長となる。
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