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GKの技術習得に必要な"時間"と"年間計画" / スペイン有数のGKコーチ「ジョアン・ミレッ」の育成メソッド

2017年5月のCOACH UNITED ACADEMY講師は、FC東京でGKコーチを務める、ジョアン・ミレッ氏。スペイン・カタルーニャ州のテラッサで育成年代からプロ(スペイン2部)のGKを指導し、バスク州のゲルニカでは育成およびトップチームのGKコーチを務めた人物だ。スペインで多くのGKをプロへと送り出した後、2013年より湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーに就任。2017年より、FC東京のトップチームでGKの育成に情熱を注いでいる。

前回に続き、今回はジョアン氏の30年を越えるGK指導の経験から「年間トレーニング計画の立て方」について考えを聞いた。ここでは一部を紹介したい。(文・鈴木智之)

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■技術の習得に「時間がどれだけ必要か」を把握する

ジョアン氏はFC東京で実際に使用している、年間のトレーニング計画をもとに説明する。

「年間トレーニング計画には、GKを育成する上で必要な、全ての技術的要素が含まれています。また、項目によって長く時間をかけるものと、短いものがあります。そのため指導者は、GKがキャッチングやセービング、1対1の対応などの技術を学ぶために、どれぐらいの時間が必要かを知らなければいけません」

ジョアン氏が例にあげる、年間トレーニング計画の詳細はぜひCOACH UNITED ACADEMY動画でご確認頂ければと思うが、これは育成年代の選手にも適応可能だという。ジョアン氏が続ける。

「技術の習得に、どれくらいの時間が必要かがわかったところで、マクロサイクル、メソサイクル、ミクロサイクル、トレーニングセッションに当てはめていきます」

ジョアン氏によると、「マクロサイクルは年間で4つに分けることができ、メソサイクルは各月を指します。マクロサイクル、メソサイクル、そしてミクロサイクルは各週を指し、各週の中にトレーニングセッションが入ってきます」と言う。そこで、「トレーニングセッションの質が良ければ、良いミクロサイクルの構築ができる」と話す。

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■上達において「休息期間」は不可欠

さらにジョアン氏は重要な提言を続ける。

「日本サッカーには、ひとつの問題があります。それはプレシーズンがないということです。選手達には休む時間がありません。私は、人間の身体は休息が必要だと考えています。ヨーロッパの育成年代では、2ヶ月まったくトレーニングをしません、プロの世界でも1ヶ月半は休みがあります。なぜ休むのか。それは、選手がサッカーから完全に離れる時間が必要だからです。考えてみてください。選手達は年間330日トレーニングをして、肉体的にも精神的にも負荷の高い状態で公式戦を戦います。心身ともに回復するためにも、サッカーから完全に離れる期間が必要なのです」

育成年代の指導者の中には、この提言にうなずく人も多いのではないだろうか。ジョアン氏の指摘の通り、日本の育成年代はジュニアからユース、大学まで、まとまった休み(シーズンオフ)がない。

「きちんとした休息がなければ、4年も経てば選手のフィジカルコンディション、膝などはボロボロになります。そのため、育成年代の選手に休息を与えることは、非常に重要だと考えています。サッカーから離れることで、モチベーションも刺激されるはずです」

ジョアン氏の年間トレーニング計画では、プロを対象としているため、1ヶ月半の休息期間がある。1ヶ月半休んだ身体は筋肉を失っているので、フィジカルトレーニングをして、サッカーに適した身体へと戻していく。リーグ終盤に最高のパフォーマンスを発揮するために、最低負荷から始めて、徐々に負荷をかけていく。

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COACH UNITED ACADEMY動画では、ジョアン氏がイラストをもとに、プレシーズンに行う、GKに必要な動きを高めるためのトレーニングを紹介している。

「プレシーズンの初日は技術的なトレーニングはせず、フィジカル的なトレーニングのみを行います。ボールを使わずに、ジャンプ、連続ジャンプ、セービング、ハイボール等の動きをします。そして翌日から、ボールを使って技術的なトレーニングを行います。そこでは、ハイボールのトレーニングの際にどんなミスが起きていたか、ジャンプの仕方が悪いのか、キャッチが悪いのか、受け方が悪いのかといった情報を得ておきます」

その後、講義ではグローバルトレーニングを始める時期、その前にすべき3種類の1対1のトレーニング、独立した技術トレーニングの重要性に言及している。具体的な年間スケジュールの内容は、ぜひ動画をご覧頂ければと思う。GKコーチだけでなく、監督やフィールドのコーチにとっても、参考になる考えが紹介されている。

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<プロフィール>
ジョアン・ミレッ/
1960年生まれ。スペイン出身。24歳で現役引退後、スペイン・カタルーニャ州のテラッサで育成年代からプロ(スペイン2部)のGKを指導。2002年からはバスク州ゲルニカにて、育成およびトップチームのGKコーチを務めた。スペインで多くのGKをプロへと送り出した後、2013年より湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーに就任。2017年より、FC東京のトップチームでGKコーチを務める。

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