TOP > コラム > 選手に丸投げすることが「考えさせる」ではない / ラグビー・中竹竜二の「フォロワーシップ」理論

選手に丸投げすることが「考えさせる」ではない / ラグビー・中竹竜二の「フォロワーシップ」理論

名門・早稲田大学ラグビー蹴球部やラグビーのU-20日本代表の監督を歴任し、現在は日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターを務める中竹竜二氏は、スポーツの世界にとどまらず、一般企業での講演や、リーダー育成にも積極的に取り組んでいる。


そんな彼が提言する、ユース年代、グラスルーツにおいて指導者が意識するべきこととは。今回公開されたCOACH UNITED ACADEMYの後編では、育成年代の選手の力を最大限に発揮するためには、選手を引っ張る「リーダーシップ」だけではなく、選手を支える「フォロワーシップ」が重要であることについて語っていただいた。(文/竹中玲央奈)

この記事の映像は、COACH UNITED ACADEMYで公開中!
詳しくはこちら>>

Still0602_00001.jpg
<< 前回の記事を読む 

■勝利を目指す上で大事なこと


中竹氏はチームとしてのゴールは「全員を本気にさせる」ことであり、そのためには"ちがい"を"ちから"にすることが重要だと言う。この点に関しては前編の講義で語られた通りだ。そして、そのためには「リーダーが変わらないと組織は変わらない。選手が変わるためにはリーダーが変わらなければいけない」という持論を展開する。

これを前提として、グラスルーツ世代のコーチングにおける"成功"を導くために重要なことは"プロセスに関わる"ことだと中竹氏は続けて言う。

「スポーツをやる以上は勝利にこだわるべきですし、勝利を否定して楽しさや人生の豊かさというのはバランスが悪くなる。スポーツをやる以上、勝利は大前提として正しいと思っています。ただ、大前提は勝利を目指すことですが、大事なのはプロセスです。チームを組み、練習をスタートしたとしましょう。例えば『9月の大会に向けて半年後に勝利をしたい』となったとき、全プロセスがどこにあたるかというと、毎日、全ての日です。仮に練習が週2回だとしても、練習のない全ての日がそこに関わってきます。ただ、そのためにコーチが毎日触れ合うとかではなく、大切にしたいのは、とにかく全員を本気にさせることです」

Still0602_00002.jpg

■選手を"本気"にさせるためには?

その"本気にさせる"ために重要なのは選手たちが自ら主体性を身につけることだと中竹氏は言う。

「人は主体的に考えて主体的に動かないと自分でつかめない。こちらが言うよりも選手に言わせるほうが大事です」

確かに、"やらされる"状態よりも"自らやる"ほうが競技に対してモチベーションが高まるのは明白であるし、その状態を作るためには指導者が教えるばかりではなく、選手たちの自主性や能力を"引き出す"ことも非常に重要になってくる。

では、どのくらいのバランスで指導者は教え、問いかけ、待つべきなのか。

中竹氏は指導の際に自ら考案した"GPDRサイクル"というものを用いて選手たちにアプローチをしている。

GPDRはそれぞれ
●G=Goal Creation:目標設定
●P=Preview:計画、準備 
●D=Decision Make:実践・実行
●R=Review :振り返り、内省
を示す。


Still0602_00003.jpg

■選手に考えさせたければ、指導者自身が考えよ


最初から最後までを全てコーチがやる必要はない、というのが中竹氏の考え方だ。とはいえ全て選手に任せれば良いというわけでもなく、リーダーシップとフォロワーシップを分けて考えることが必要と言う。

「究極的にはどこまで選手に考えさせて、どれだけコーチが考えるか。完全に丸投げしたり完全に任せると意味はありません。自分がフォロワーシップに、後ろに回る意味は何なのか。引きすぎて選手が迷っているのなら介入し、自分が引っ張っていくことも重要です」

コーチとして自らの知見やアイディアを教え、共有することは選手育成において重要だ。しかし、やる気を出し、自分で考える事ができる選手を育てるためにはときに選手に決定を委ねることも重要である。そこのバランス感については日々、指導者としても考える作業が必要だ。

「自分で考える選手を作りたかったら、指導者自身が考えるということ」という言葉を強調していたのが印象的だ。

中竹氏の指導理論はサッカーを含めたスポーツにとどまらず、組織に携わる者にとっては大きな学びとなるだろう。そういう意味でより多くの"リーダー"に見ていただきたい。率直にそう思える講義であった。

<< 前回の記事を読む 

<プロフィール>
中竹 竜二/
1973年5月8日生まれ。福岡県出身。早稲田大学ラグビー蹴球部の主将として、4年次には全国大学選手権で準優勝を果たす。卒業後は渡英し、帰国後は三菱総合研究所に入社。5年の社会人生活を経て2006年に早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、初の監督業にも関わらず2007年、2008年と全国大学選手権でチームを連覇に導く。
2010年の退任後は日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。ラグビーに限らずスポーツそしてビジネスの場においてもリーダー育成に取り組んでいる。『監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利』(講談社)、『挫折と挑戦 壁をこえて行こう』(PHP研究所)、『判断と決断』(東洋経済新報社)など複数の書籍も上梓している。


この記事の映像を含む、全120本以上が月額980円で見放題!
詳しくはこちら>>