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長友佑都が世界と渡り合えるワケ/大学サッカーからの提言

5月のCOACH UNITED ACADEMYは「大学サッカーから逆算で考える育成指導」をテーマにお送りします。前半の講師は、大学サッカー界の名門・明治大監督を11年間務め、現在は7月のユニバーシアード・光州大会出場に向けて全日本学生選抜を指揮する神川明彦氏。名実ともに大学サッカー界をリードする指導者の考える「ジュニア世代に必要な育成指導」とは何か――。前回に引き続き、今回も「ピッチ内」の視点からお話いただいた前編の内容から一部を抜粋してご紹介します。(取材・文/小須田泰二 写真/Reiko Iijima)

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■神川監督が一目惚れした"ある技術"とは?

監督就任1年目での関東リーグ1部復帰、43年ぶりのリーグ制覇に51年ぶりのインカレ優勝、学生サッカー界史上初のJ1クラブからの勝利......。2004年から明治大サッカー部の監督に就任して以降、目覚ましいキャリアを重ねてきた神川監督だが、決してプロ選手の育成だけを考えて指導しているわけではない。国際的な社会で活躍する人材を育てたい――そんな神川監督の想いを最初に体現してくれたのが、現在イタリアの名門インテルで活躍する長友佑都であるという。

「うちでプレーしていれば、少なからずプロになる選手は出てきますし、実際に毎年Jリーグのクラブ等にお世話になる選手はたくさんいます。しかしながら、僕はそういうところに目標は置いていません。むしろサッカーに限らず、どんな分野でもいいので国際的に活躍してくれる人材を送り出していきたいと思っています。その意味において、長友選手はサッカーという分野で、僕の想いを最初に体現してくれた選手です。FC東京に入団してチェゼーナ、そしてインテルと世界を舞台ににステップアップしてくれたわけですから」

いまや世界を代表するサイドバックへと成長した長友選手だが、そんな彼にまつわる興味深いエピソードがある。もともと、長友選手は明治大サッカー部にサッカー推薦で入団したわけではない。東福岡高時代、選手としては無名だったが、学業が優秀だったゆえ、明治大の指定校推薦という枠で一般生とともにサッカー部の門を叩いたのだ。

「一般の新入生には入部させるかどうかを検討するため、仮入部というカタチでテスト期間を設けていて、当初、長友選手は攻撃的なポジションを希望していましたが、僕は彼のディフェンス面におけるあるプレーを見た瞬間、一目惚れしたのです。そのときは『何もテストする必要はない! 一発合格だ!』って叫びましたね」

運命の巡り合わせなのだろう。明治大のコーチから監督へと昇格した神川新監督は、"良い守備から良い攻撃へ!"をモットーに就任1年での関東リーグ1部復帰を果たし、さらなる強化を進めようとしていた時期。自らの目でしっかり見定めていきたいという強い想いを持ちながら、新入生のプレーをかじりつくように注視していたが、長友選手に関してはまさに待ち望んでいたプレーの持ち主だったという。

「もともと彼は高い身体能力を備えていましたが、1対1の対人プレーにおける"ある技術"には目を見張るものがありました。その印象が強く残っていたこともありまして、翌年にサイドバックへコンバートさせることにしたのです。当初は『絶対にサイドバックなんてやりたくありません!』と言っていた選手が、いまでは『世界一のサイドバックになりたい!』と公言しているんですから、本当に人生というのはどうなるのか分かりません」

■ジュニア年代から見直したい守備の技術

神川監督が一発で惚れ込み、日本を代表するサイドバックへのサクセスストーリーを歩む真のきっかけとなった、長友選手の守備における対人プレーの技術――。それをあえて今回例に挙げたのには、神川監督なりの理由がある。それは、大学サッカーの守備における技術レベルをさらに高める必要性を感じているからだ。

「近年の大学サッカーは年々レベルアップしています。1年生からすぐに試合に出られるレベルにある選手もたくさんいるのですが、それは攻撃の選手に多い。ディフェンシブなポジションでプレーする選手だと、なかなか出場できるレベルに達していないのが実情。ですからあらためて、守備の技術をジュニア世代から教えていく必要があるのではないかと感じています。そんな状況の中で、最近では明治大2年の室屋成選手は守備レベルが高い選手ですね」

明治大2年の室屋成選手。彼は大学生で唯一、リオデジャネイロ・オリンピックを目指すU-22日本代表に選ばれている選手で、明治大では1年時からスタメンとして活躍している。奇しくも長友選手と同じくサイドバックを主戦場としながら、先日の4月21日にFC東京の特別指定選手となった。長友選手と同じポジションで、同じルートを歩んでいる。プレースタイルこそ違うものの、まさに"長友二世"と呼ばれる逸材である。

「彼は本当にサイドバックとしての能力をバランスよく備えた選手ですが、長友選手と同じく、やはり守備における対人プレーの"ある技術"を持っています。だからこうしてオリンピック代表チームにも選ばれ、プロ選手の中に入っても遜色なく高いレベルのプレーができているのだと思います」

世界へのステップアップを果たすために欠かせない、長友選手と室屋選手に共通する守備における対人プレーの"ある技術"とは――。その答えはセミナー本編にて、神川監督が実演を交えて解説しているのでぜひご確認いただきたい。

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神川明彦(かみかわ・あきひこ)
1966年7月9日生まれ。神奈川県出身。鎌倉高、明治大を経て1994年から同校サッカー部コーチに就任。2004年より監督を務める。2007年に43年ぶりに関東大学サッカーリーグ戦優勝、2010年には51年ぶりに全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)優勝へ導く。2013年より全日本学生選抜(ユニバーシアード)代表監督。関東大学サッカー連盟理事。日本サッカー協会公認S級コーチライセンス取得。