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チームの勝利と選手の成長―二兎を追う指導とは/世界挑戦の活かし方

8月に行なわれた「U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2015」。国内外から16の強豪チームが集まった大会で見事、準優勝に輝いたのが東京都U-12だ。中でも準決勝で前2回の王者・FCバルセロナ(以下バルサ)に勝利したことは、日本の育成シーンに大きな反響を呼んだ。この選抜チームの指揮を執ったのが、東京の渋谷区・町田市を中心に活動するFCトリプレッタ代表の米原隆幸氏。試合の挑み方から試合後の振り返りまでを語っていただいたセミナー後編から、一部を抜粋してお届けする。(取材・文/隈崎大樹)

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■ピッチ上で見つける「生きた分析材料」とは

試合前に渡される各チームのプロフィール。そこには選手の身長・体重・ポジションといったベーシックな情報が記載されている。無論、プレー動画を入手できれば、さらに詳しく相手チームを分析できるだろう。

「机上で確立できるのはゲームコンセプトです。これは前回ご説明したとおり、全試合で一貫したものを毎試合ごとにチーム全体で確認する作業を行ないます。次に事前に集めた情報から、対戦チームをどのように攻略していくかを丁寧に選手へ伝えます。バルサ戦のケースであれば、相手はセンターバック間でパス交換をしながらタイミングを見計らい、アンカーにボールを当て、そのままサイドの選手を経由しフィニッシュにもっていくのが主な攻撃パターン。私はそのプレーを易々とさせないために、連動して守備を行なうよう『プレッシャーは11人が1人のように行なう』というイメージを共有しました」

ここまでは誰もが思いつく相手分析の方法だ。しかし、米原氏はさらに「生きた分析材料」をピッチ上からも獲得する。

「データや事前のリサーチで相手の分析をする他に、私はウォーミングアップとハーフタイムから『生きた分析材料』を獲得しようと心掛けています。『監督がどのように声がけをしているか?』『選手の顔つきはどうか?』『監督が試合中に指示する際の声のトーンは?』などから、そのチームのまとまり度合いや選手個々の調子を見ることができるのです。バルサ戦のハーフタイム、相手選手がベンチへ戻っていくときの顔つきがよくなかったので、『よし、我々のプレッシャーが効いているな』と自分たちのやっているサッカーが間違っていないことを確信しました」

指導者はチームコンセプトを大切にしながらも対戦相手により、試合前であれば試合の入り方、試合中であればチームプレーがフィットしているかを把握しなければならない。その判断材料のひとつとして、リアルな情報をオンタイムで入手できるウォーミングアップやハーフタイムは格好の分析材料なのだ。

■試合中に子どもたちを成長させる"ほんの一声"

東京都U-12が他のチームと大きく異なるのは、この大会限定のチームだということ。異なる土壌からセレクトされた選手たちが数日間でひとつのチームとなり、結果として準優勝まで駆け上がることができたのは、選手個々の大きな成長があったからだと米原氏は説明する。

「選手たちへは常に『チャレンジの気持ちを強く持とう』と言い続けました。このような滅多にない大舞台で、小さくプレーしていても彼らの持ち味を発揮できるわけがありませんし、何より楽しめません。ですので、意図的なチャレンジをした選手には褒めて自信をつけさせました。反対に消極的になってしまった選手には『なぜいまチャレンジをしなかったんだ?』と強く伝えました。萎縮したプレーは、気持ちまでもそうさせてしまうからです。そして試合中、私がしなければならない一番の仕事は『ひとつのプレーを褒めて、選手を成長させること』に尽きます。選手が意図して行なったプレーはもちろん無意識に行なったプレーでも、今後その選手のプラスになると思ったらすぐに褒めます。ほんの一声ですが、それこそ選手がワンランク上でプレーをしようとするキッカケになり、自信を与える力になるのです」

鉄は熱いうちに打て――その言葉どおり、いままさに選手が上手くなろうとプレーをしているときの指導者の一声は、成長を促す起爆剤として重要なものだろう。セミナー本編ではさらに、この一声で成長した選手たちがオフ・ザ・ピッチでもその片鱗をうかがわせる場面を紹介している。その詳細はぜひCOACH UNITED ACADEMYでご視聴いただきたい。


米原隆幸(よねはら・たかゆき)
1970年4月17日生まれ。東京都町田市出身。1982年に開催された第6回全日本少年サッカー大会で得点王を獲得、14歳でU-16日本代表を経験。帝京高校時代には2年連続で高校選抜に選出され、明治大学では主将を務めた。1997年に東京都渋谷区と町田市でFCトリプレッタを結成。同クラブはキッズからトップチームを保有し、各年代で好成績を残しながら選手育成を行なっている。自身は同クラブ代表を務めるほか、キッズから1種年代までカテゴリーの垣根を越え、幅広く指導者として活躍している。著書に『サッカー3対3トレーニングメニュー集』がある。

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