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打倒バルサ「3度目の正直」の舞台裏に学ぶ/世界挑戦の活かし方

8月に行なわれた「U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2015」。国内外から16の強豪チームが集まった大会で見事、準優勝に輝いたのが東京都U-12だ。中でも準決勝で前2回の王者・FCバルセロナ(以下バルサ)に勝利したことは、日本の育成シーンに大きな反響を呼んだ。この選抜チームの指揮を執ったのが、東京の渋谷区・町田市を中心に活動するFCトリプレッタ代表の米原隆幸氏。9月後半のCOACH UNITED ACADEMYでは、2013年にコーチ、2014年・2015年に監督を務めた米原氏に大会を振り返っていただき、育成年代でも増えつつある"世界挑戦"の機会をどう活かすべきかについて考える。(取材・文/隈崎大樹)

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■初めてプレーする選手たちを"チーム"にするには

かつて「チームビルディング」をテーマにしたコラムで、米原氏は「選手が能動的に組織を形成できるよう、指導者はその選手の特性を見極めて伸ばしていく」という言葉を残している。今回の東京都U-12におけるチーム作りでも、そのエッセンスを十分に感じさせる手腕を見せてくれた。

東京都U-12のような選抜チームにおいて、序盤の重要なポイントとなるのがスカウティングだ。世界の強豪クラブと戦える質の高いチームを作るために、身長・体重、フィジカル、テクニック、そして過去の実績など、いろいろな項目で選手の能力を判断し、セレクトしていかなければならない。その中でも米原氏が一番こだわるのは「信頼感」だという。

「『このFWの選手はプレーが切れるまでゴールチャンスを諦めない』『あのDFの選手は試合の終始にわたり声を出し続けている』など、どのような局面でチームを助け、勝利に貢献してくれるのかを強烈にアピールしている選手を見つけ出してきました。そのストロングポイントを彼ら一人ひとりに伝えることで、なぜ"ココ"に呼ばれたのかをより深く理解させ、さらに選ばれた選手としての誇りをもたせることで、短期間ながらも信頼感の強いチームへと成長できたのだと思います」

ただサッカーが上手いからという理由だけでセレクトされた選手たちに、短期間で信頼感を築くのは難しい。各選手が自分の"役割"を明確に理解するとき、さまざまな歯車が噛み合いチームとして動き出すのだ。

■限られた時間の中でチームを強くする"共通理解"

4日間という限られたトレーニング期間、米原氏は初日のミーティングで『チームコンセプト』『オフェンスの10箇条』『ディフェンスの3箇条』など、チームプレーの"骨"となる考えを選手たちにみっちりと叩き込み、本戦ではこれを毎試合ごとに徹底して確認したという。選手全員が共通理解を持ちながら、ピッチで堂々とプレーできるスタンスを作り上げるためだが、ここまでプレーのディテールにこだわりゲームコンセプトを重視するのは、前大会の決勝でバルサに0-2と敗れたときの苦い経験があるからだ。

「タレントの宝庫と謳われるバルサのカンテラチーム。知名度、実力ともに最高峰の彼らと対峙したとき、東京の選手たちは試合序盤から浮き足立ってしまいました。試合に入る前からしっかりと落ち着いてやるべきサッカーをパフォーマンスしていれば、我々にも勝機はあったはず――。今回はそれを克服するべく、しつこいくらい『チームとして何をしなければならないのか』を徹底して理解させました。その点で今回の結果を振り返れば、厳しい試合ながらもPK戦を制してバルサに勝利して前回のリベンジができたという思いと同時に、コンセプトの"共通理解"の重要性をあらためて感じましたね」

これは選抜チームに限らず、単独チームでも同じことが言える。新体制になって間もないチームを戦わせるのに、ただがむしゃらにボールトレーニングのみを行なわせても上手くいかないだろう。指導者が選手たちの特性を理解し、「相手DFをどのように崩してフィニッシュまでいくか?」「守備は相手を中に誘い出すのか外に追いやるのか?」など、ベンチを含むメンバー全員にコンセプトを理解させ、チーム一体となって試合に臨むことが重要になるはずだ。

セミナー本編ではこの他にも、大会の準備期における「チーム編成」や「大会用のトレーニング」など、ここでは紹介しきれなかった"世界挑戦"のすべてが惜しみなく語られている。選抜チームの監督という希少な経験によって磨かれた普遍的チーム作りの全容を、この機会にぜひCAOCH UNITED ACADEMYでご覧いただきたい。

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米原隆幸(よねはら・たかゆき)
1970年4月17日生まれ。東京都町田市出身。1982年に開催された第6回全日本少年サッカー大会で得点王を獲得、14歳でU-16日本代表を経験。帝京高校時代には2年連続で高校選抜に選出され、明治大学では主将を務めた。1997年に東京都渋谷区と町田市でFCトリプレッタを結成。同クラブはキッズからトップチームを保有し、各年代で好成績を残しながら選手育成を行なっている。自身は同クラブ代表を務めるほか、キッズから1種年代までカテゴリーの垣根を越え、幅広く指導者として活躍している。著書に『サッカー3対3トレーニングメニュー集』がある。

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