10.12.2015
「し過ぎない指導」で育まれる子どもの人間力/世界基準のジュニアスカウティング
2014年・2015年と2年連続で、日本の東京都U-12が準優勝を飾った「U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ」。そこでの戦いには日本の選手が世界の強豪と渡り合うためのさまざまなヒントが隠れているのではないか――。後編では、選手を取り巻く環境が育成にどのような影響をもたらすのか、そこからどのような「人間力」が備わり、魅力的な選手が輩出されるのかについて、ユーロプラスインターナショナルでジュニア年代を専門にスカウト活動を行なう松下イゴール氏に語ってもらった。(取材・文/隈崎大樹 写真/Steven Depolo)
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■生活環境の違いが選手に与える影響を考える
昨今の日本で注目されている言葉に「人間力」というものがある。「コミュニケーションスキル」「リーダーシップ」「公共心」「規範意識」など、社会・対人関係力といった要素を総合した言葉として使われることが多い。「サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする」というイギリスの格言があるように、サッカーには人間力を育むエッセンスが多く含まれているのだ。
U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジに出場した東京都U-12で指揮をとった米原隆幸氏も、スカウトを行なう上で選手が持っているサッカーの技術の他に「その選手がどのようなキャラクターで、チームにどういった貢献をするのか」を考慮して選出したと説明してくれた。「リーダーは誰か?」「盛り上げ役は誰か?」「チームのバランスをとってくれるのは誰か?」――チームの中で一人ひとりがどの"歯車"を担っているかを、指導者が見極めることが重要なのだ。
これらに加え、イゴール氏は人間が持つ「本能」や「想像力」の発達が大切だと説く。
「地方でスカウティングをすると、子どもたちが生活する環境がサッカーにも大きく影響していることを強く感じます。特に『海』や『山』といった自然が豊かな環境の中で育った子どものプレーには、『とっさの判断』や『危険の予知』など人間が本来持っている"動物的勘"がよく働いている。自然の中では『ここはこうする、あそこではこうする』といった"説明書"も、『今日は◯◯をします』『それはしてはいけません』といった"指導者"も存在しません。すべて子どもたちが自分自身で考え、感じ、それらが身体に染み付いた結果、彼らのような"ワイルドな"子どもが輩出されるのでしょう。また、このような環境で育った子どもたちは、身体のコーディネーションもよく発達しているように感じます。遊びの中で身体を動かすことも重要なのです」
またイゴール氏は、都心部など自然の環境が近くにない場合でも、指導者の工夫次第で似たような環境を作り出せるという。
「サッカーのトレーニングで大切なのは適度な『放置』です。指導者は子どもたちが自然にルールを決め、駆け引きを楽しみながらサッカーができる時間を儲けたいものです。そこで指導者はぜひ、子どもたちが何を考え、行動しようとしているのかを観察する時間に当ててみてください。日頃教えている立場から、反対に教えられる立場になって勉強になりますよ」
その他にも選手が、シチュエーションの違いによってさまざまな刺激を受けることが重要だと話す氏。その内容はCAOCH UNITED ACADEMYのセミナー本編で説かれている。
■情報を「足し算」「引き算」できる選手が成長する
日本では、サッカーが上手くなるための情報が溢れかえっている。実用書・DVD・インターネット、はたまた世界のビッグクラブが主催するクリニックなど、その数を挙げればきりがない。イゴール氏は、そうした数多くの情報を上手くコントロールして取り入れられる選手が成長すると語る。
「私が子どもの頃と比べ、いまの日本でサッカーに関する多くの情報が溢れていることは、日本サッカーが発展している証拠だと感じています。ただ気を付けなければいけないのは、何でもかんでも子どもに情報を与えるのではなく『いまその子がその情報を吸収できるレベルなのか』を念頭に置き、取捨選択しながらレベルアップを図らせるということです。また、情報の選択を子ども自身ができるようになれば、その子が『自分にとって、いま何が必要なのか』を考えていることになります。それが土台となり、その子のサッカーに個性が出始めることでしょう。指導者や保護者は、そうした情報の『足し算』『引き算』を子どもと一緒に考えると良いかもしれませんね」
これは勉強でも同じことが言えるだろう。例えば英語の成績を上げたいと思っている人に、関連する参考書を山のように与えても思うようにいかないものだ。その人にとって「単語」「熟語」「文法」「発音」「リスニング」のどの分野を伸ばせば良いのかを分析し、吸収できる分量を適度に与えることが秘訣ではないか。さらには本人が自分で「いま単語量を増やす必要がある」と自己分析できてはじめて、「能動的に情報をコントロールしている」状態になるのだ。環境のひとつである情報との付き合い方も、選手にとって大切なスキルであることを実感した氏の指摘であった。
セミナー本編ではこの他にも、選手の生活環境がサッカーのさまざまな要素に影響するエピソードを紹介している。オフ・ザ・ピッチで選手に経験させるべきことの詳細は、ぜひCAOCH UNITED ACADEMYでご覧いただきたい。
■日本で学べるスペインのスカウト資格取得プログラム
来たる10月24日・25日、レアル・マドリー(スペイン)などのクラブでスカウティングを担当している現役スカウトのミゲル・アンヘル・ムニョス・バカス氏が来日し、日本ではまだまだ未成熟とされている選手スカウトについて指導する「スペインサッカー・スカウト資格プログラム」が開催される。
このプログラムは現役の指導者・スカウトやこれからそれを目指す人材が対象で、「欧州トップレベルのスカウティングメソッドを基に構築されたプログラム」を、「スペイン語がわからなくても通訳が全行程に参加」するため「スペインへ留学することなく日本で学べる」のが特徴だ。
講義では「優秀なスカウトになるための資質」「育成年代各カテゴリーでの選手を見る基準」「早熟・晩熟、誕生日を知ることが重要」など、スカウトはもちろん指導者が選手を見る上でも役立つ内容が充実しており、受講後はスペインAFEN(Asocion Formativa de Entrenadores Nacionales)公認の修了証が発行される。
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IFCO 一般社団法人 国際サッカーコーチング&マネジメントスキル認証機構
松下イゴール(まつした・いごーる)
1976年9月25日生まれ。東京都出身。現役時代のポジションはFW。横浜フリューゲルスユースをはじめ、フランス・ecole st Martinへのサッカー留学も経験。その後はアメリカ・LA GALAXY、東京佐川急便SC、ドイツ・ダルムシュタッドでのプレーを通じて世界のサッカーを体感。現役引退後はサッカーコーチ、通訳、スカウトとして幅広く活躍している。
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取材・文 隈崎大樹 写真 Steven Depolo