10.26.2015
とある「1日のトレーニング」の組み立てを再考する/ドイツメソッド・ミニマム講座
代表チームは2014年のW杯で優勝し、クラブレベルではバイエルンやドルトムントを擁するなど、世界有数の強国として確固たる地位を築くドイツ。10月後半のCOACH UNITED ACADEMYで講師を務める土屋慶太氏は、9年に渡って選手・指導者としてドイツサッカーを体感し、現在は東京23FCトップチームのヘッドコーチ兼アカデミーダイレクターとして、子どもから大人まであらゆるカテゴリーの選手を指導しています。そんな土屋氏による「ドイツメソッド・ミニマム講座」の後編は、「1日のトレーニングの組み立て方」についてお届けします。(取材・文/鈴木智之)
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■トレーニングのテーマ設定も年代別に
どのようにしてその日のトレーニングを組み立てていくか? 指導者にとって日々頭を悩ませる重要なテーマではないでしょうか。土屋氏は「トレーニングのテーマ設定は、大人・ユース年代とジュニアユース・ジュニア年代では違う視点で考える」と言います。
「大人やユース年代を指導する場合、トレーニング内容は週末の試合を見て決めます。前回の記事でもお伝えしましたが、ユース年代からは『週末の試合に勝つため』に、次の試合の対戦相手を分析し、どのように攻撃をするか、どのように守備をするかを考えてトレーニングを組み立てていきます」
ジュニアユースやジュニア年代においては、試合でのパフォーマンスに加え、年代別の課題をテクニック・戦術、フィジカル・メンタルの視点からどの程度習得できているかを分析し、トレーニングで高めていくそうです。
「トレーニングメニューを組み立てる際のポイントは、1回の練習でテーマを限定することです。特にジュニアユース・ジュニア年代においては、一度の練習で様々なテーマを学ばせようとすると、理解するのが難しくなりますし身に付きにくくなります。あれもこれもと詰め込んで多くのことを一度にコーチングせずに、ひとつの大きなテーマを決めたらそれを重点的に掘り下げていくことが大切だと考えています」
ここで土屋氏は例を挙げます。例えば小学4年生のカテゴリーで、1週間のトレーニングのテーマが「1対1の攻防」の場合。1日目は攻撃に集中してコーチングし、翌日に守備にフォーカスするなど、選手が注力するポイントを分けます。そして、攻守ともにレベルアップしていく形を取るわけです。
トレーニングではテーマをひとつに絞り、それに対してコーチングをしていきます。そして、ひとつのテーマに沿った内容で練習メニューを決めていきます。土屋氏は「トレーニングを3つのパートに分ける」と説明します。
「1つ目はウォーミングアップから導入練習です。ここではただ身体を温めたりほぐしたりするのではなく、テクニックや戦術などメインテーマに関連した動きを取り入れ、負荷や難易度を段階的に上げて心と身体の準備をするイメージです」
こうした導入のトレーニングは毎回同じ...というチームも多いと思いますが、この講座ではトレーニングメニューに応じた内容のウォーミングアップをすることを勧めています。さらに続けてメインで取り組むテーマに沿った内容の導入練習をすることで、選手たちにもテーマが刷り込まれていき、メインの練習でその動きがしやすくなったり、現象が出やすくなったりするからです。
■「試合が一番の教科書」を実践するポイント
「ステップ1の導入(ウォーミングアップ)の次は、いよいよステップ2のメイン練習に入ります。ここで何をテーマにトレーニングするかのヒントは、実は試合の中に隠されています。『試合が一番の教科書』という言葉もありますが、試合でよく起こる場面や課題を切り取り、トレーニングで高めていくのです」
例えば、試合で上手くいかなかった点があれば、特に、技術・戦術面にフォーカスして問題点を分析し、課題をトレーニングに落とし込んでいきます。土屋氏はメイントレーニングのときの注意事項を次のように挙げます。
「ポイントになるのが、最初から試合とまったく同じシチュエーションに"しない"ことです。試合とまったく同じシチュエーションを作ると、難易度が高く子どもたちが成功体験を得られにくいので、レベルに応じて難易度を調整し、段階的に試合に近づけていくことが大事です」
さらに土屋氏は「課題とするアクションが生まれやすいように、ルールやオーガナイズを変えてみてください」と付け加えます。
「ピッチの大きさ、人数、ポジション。練習が始まるときのボールの場所、選手の位置。どの方向からパスを出すのか、味方・相手選手がどこにいるのか、タッチ制限、フリーマンなどで難易度を変えることができます。そして、トレーニング中には選手に質問をして、自分の考えを言葉で表現させることが大切です。そうすることで考えてプレーする習慣がつきますし、口に出したことは身に付きやすくなるからです」
ウォーミングアップ、導入、メインのトレーニングと進め、最後はゲーム形式で締めくくります。11対11だけではなく、8対8や5対5、4対4など、最後にゲーム形式で終わることで、「トレーニングで学んだことにチャレンジする機会を与え、気持ちの面でも練習を締めくくりやすくなる」(土屋氏)と言います。
この記事では1日のトレーニングの組み立て方を紹介しましたが、セミナー本編では実際にどのような練習を行なうのか、小学4年生を例に挙げて「個人・グループでの攻撃」をテーマにしたトレーニング映像を公開中です。ここでしか見ることのできない映像をヒント、きっと新しい発見があることでしょう。
土屋慶太(つちや・けいた)
1978年12月19日生まれ。静岡県出身。清水東高、信州大を経て、2001年にドイツに渡る。選手としてドイツ2部の1.FCザールブリュッケン、チェコ2部のFCボヘミアンズ・プラハなどに在籍。2005年からドイツ5部の1.FCライムスバッハ、4部のEGC ヴィルゲスでプレーする傍ら、下部組織で指導者の道を歩み始める。2009年に帰国後、フッチ・スポーツクラブ、修徳高、修徳ジュニアサッカースクールを経て、東京23FCのヘッドコーチ兼アカデミーダイレクター、修徳FCジュニアのテクニカルディレクターとして活動中。ドイツサッカー協会A級(UEFA‐Aレベル)ライセンス保持。
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取材・文 鈴木智之