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「勝ち抜く」術は1対1の強さ/球際の強さを上げるレジスタFC流トレーニング

昨年度の全日本少年サッカー大会で、並み居るJクラブを倒し、見事初優勝を果たしたレジスタFC(埼玉県)。創立13年、セレクションをしない街クラブが、どのような指導哲学、トレーニングメソッドで選手を成長させ、日本一になることができたのか。COACH UNITED ACADEMYでは全3回に分けて、レジスタFCの強さの秘密を探っていく。(文・鈴木智之)

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「限られた環境」で戦うチームを作り上げる

レジスタFCは4年生から6年生まで、ひとりの指導者が持ち上がりで指導する。昨年度の全日本少年サッカー大会では渡辺泰明氏が監督を務めていたが、今年の6年生は中城勉氏が指導をしている。

埼玉県では、過去に全日本少年サッカー大会で優勝を果たした江南南や新座片山など、豊富な走力と球際の強さを武器に「頑張れるチーム」が大会で好成績を残してきた。レジスタを立ち上げるまで、東京都のクラブチームで8年間指導をしていた中城氏は、埼玉県の少年サッカーの印象を次のように語る。

「私が東京で指導をしていたときは、東京ヴェルディジュニアに森本貴幸選手などがいた時期で、多くのチームがヴェルディのように、技術があって"うまい"サッカーを志向していました。その後、レジスタを立ち上げて埼玉で活動するようになり、勝つことの難しさ、勝負に対する厳しさの重要性を痛感しました。子どもも指導者も、真剣に戦っているんですよね。そこで"小学生だから"という言い方は、ずるいのではないかと感じるようになりました」

レジスタFCの特徴は、球際を含めた1対1の激しさにある。技術や戦術のベースとなるのが、戦う気持ちである。他チームの指導者から「レジスタは別格」という言葉をよく耳にするが、選手達の球際の強さ、勝負へのこだわりは強烈なものがある。それを育んでいるのが、中城氏や渡辺氏、そして代表の金杉伸二氏をはじめとする、コーチ陣の日々の取り組みだ。

レジスタの練習に特別なメニューはない。「ほとんど毎回、(COACH UNITED ACADEMY)動画で紹介した練習をしています」(中城氏)という。練習はアジリティやボールコントロールを中心としたウォーミングアップから始まり、1対1、2対2、3対1や4対2のロンド、3対3対3(6対3)、5対5など、多くのチームが行っている練習である。

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戦術の前にまずは球際での攻防

練習メニューは他チームと変わらず、セレクションもない街クラブが、激戦区の埼玉を3年連続で勝ち上がり、全日本少年サッカー大会ではJクラブを倒して優勝を果たす――。その秘訣のひとつに「指導者の働きかけ」があることは間違いないだろう。

詳細は動画をご覧頂きたいのだが、中城氏はトレーニング中、選手から片時も目を離すことなく、シンクロしながらコーチングをしている。そこで強調するのが、ボールへの寄せの鋭さと、ボールを奪うこと。そしてゴールを決めるという、サッカーの本質的な部分だ。

サッカーの試合において、ボールはひとつしかない。サッカーの目的は相手のゴールにボールを入れることである。そのため、相手からボールを奪うこと、あるいはゴールを守ることは、守備の大前提になる。そして攻撃に転じた際は、奪ったボールを速くゴール前に運び、シュートを打つ。ボールを奪うこと、ゴールを決めることが目的としてあり、ボールポゼッションやテクニックは、そのための手段に過ぎないのだ。中城氏はチームの目指すスタイルについて、次のように説明する。

「うちは選手獲得のセレクションをしていないので、レベルには個人差があります。Jクラブほど、能力の高い選手もいません。そのため、Jクラブと同じ土俵で、同じスタイルのサッカーをしても、勝つことは難しいと思っています。もちろん、理想としてはJクラブのように、パスをつないでクリエイティブに攻めて勝ちたい。でも、Jクラブと同じやり方をしても勝つことはできません。そのために球際であったり、目の前のプレーに全力を尽くすこと、激しさや勝ちたい気持ちを出してプレーすることを求めています」

トレーニングは中城氏のオーガナイズの元、強度が高く、密度の濃いものが繰り広げられていく。たとえば1対1の練習では、ボールがグリッドの外に出たらすぐに次のボールが入り、プレーが止まることがない。激しい球際の競り合いが行われ、攻守がめまぐるしく入れ替わる。その状況下で、中城氏が「プレーの目的はなんだ?」「何が大事?」といったようにコーチングをし、選手達が「ボールに先に触ること」と答えると、「先に触る顔つきになっていないよね」といったように、端的にコーチングをし、選手達の意識に働きかけていく。その調子で2時間近く、テンポよく練習が進んでいくため、負荷は高いが、確実に鍛えられるのではないかと感じさせる内容だった。

2時間の練習を終えた中城氏が、声をかすれさせながらトレーニングを振り返る。

「練習では、目の前のプレーに全力を尽くすことの大切さを伝えています。技術については好きなことなので、練習をする中で徐々についていきますが、目の前のプレーの大事さは、いま、その瞬間に伝えないといけない。後からでいいや、ではだめなんです。うちは試合に勝っても内容が悪ければ、長いミーティングをします。あの場面はどうだったと、一つひとつ話をしていきながら、目の前のプレーの大切さを伝えます。そして、一つひとつのプレーをがんばることで、何を得ることができるかまでも伝えられればいいなと思っています」

COACH UNITED ACADEMYでは、中城氏の指導風景を公開中だ。選手達のプレーの何を見て、どこにコーチングをしているのか。中城氏がグラウンドで表現する、指導の熱をぜひ感じてほしい。

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中城勉(なかじょうつとむ)
1976年10月14日生まれ。2004年にレジスタFCを設立。2008年にわずか4年間で埼玉県を制し、2012年にはダノンネーションズカップの日本大会で優勝。世界への切符を掴む。その後も、強豪ひしめく埼玉県にて素晴らしい成績を収め、ついに第39回全日本少年サッカー大会にて悲願の初優勝を成し遂げる。先日行われた国際規模のCOPA PUMA TOREROS 2016 においても優勝。レジスタFCを率いて各大会、常に上位の成績を収めている。