11.14.2016
東京都U12 T1リーグで連敗するチームを一変させたゴールへの意識とは? / 得点力を高める実戦式シュートトレーニング
COACH UNITED ACADEMYでは、東京都渋谷区、町田市を拠点に活動するFCトリプレッタのトレーニング動画を公開中。トリプレッタはキンダーからU18までのカテゴリーを持ち、東京都で上位に位置する実力派クラブだ。U12渋谷は今季のT1リーグ前期で1勝1分7敗の窮地に追い込まれながら、ゴールへの意識をトレーニングすることで得点力を向上させ、夏以降は6勝2分と無敗で残留を決めた。今回はT1で奇跡の残留を遂げる原動力になったトレーニングを、2回に渡って紹介したい。(文・鈴木智之)
アップはカラダを温めるのと同時にその日のコンディションの目安にもなる
トレーニングの前半はウォーミングアップからスタート。ここではラダーを使って、前後左右のステップワークやジャンプなどのアジリティトレーニングを実施。選手たちは前向き、横向き、後ろ向きなど、360度の方向へ足を動かし、脳へ刺激を入れていく。
U12渋谷を指導する海老根宏コーチは「しっかり足を動かして、頭を働かせよう。脳へ刺激を入れるために、速く動くだけでなく、ゆっくりとした動きからスピードアップなど、変化をつけよう」と声をかける。ジャンプをするメニューでは「なんとなくやらずに、空中の姿勢を意識しよう」といったように、ただこなすだけではなく、細部に意識を向けるようにコーチングをしていく。
続いては移動リフティング。インステップ、もも、頭、インサイド、アウトサイドを使い、12mの距離をリフティングで進んでいく。これはルーティンとして毎回行っているメニューで、海老根コーチによると「やりながら、自分の調子を計る」ことがポイントなのだという。5種類のリフティングが終わったら、3タッチ目でボールを蹴り上げて、ジャンプして胸トラップをし、ボールをコントロールするメニューを実施する。
ここでも、先程のジャンプトレーニングのときと同様「空中でのバランスを意識しよう」というコーチングがされていた。試合中、浮き球をジャンプして胸でトラップする。あるいはジャンプしてヘディングなど、跳ぶ機会は非常に多い。その際にバランスを崩すことなくジャンプをすることができれば、ボールコントロールにミスがなくなり、次のプレーへとスムーズに移ることができる。ボールを使ったテクニックトレーニングをするとともに、コーディネーションの要素を入れて、様々な観点から選手を向上させていく。
「なんとなく」ではなくしっかりと意図させることでチーム内コミュニケーションも自然と高まる
続いては、ジャンプをしてインステップコントロールや、両足でボールをまたぐ動作を実施。海老根コーチからは「試合中、バランスが崩れたときに、すぐに立て直すために必要な動作だよ。姿勢を良くやろう」というアドバイスが送られていた。
ウォーミングアップが終わったところで、シュート練習に移行。最初は、コーンをドリブルでかわしてシュートを打つことからスタート。(詳しい設定は動画を参照)。ここでは海老根コーチから「なるべく両足を使うこと」「ゴールの四隅を狙うこと」「時間内で1本でも多く打つこと」とポイントが提示され、シュートを打つ際にバランスを崩してしまう選手に対しては「最初にやったリフティング、ボールタッチの練習を思い出して、すぐに立て直そう」とアドバイス。ウォーミングアップ時から、トレーニングのテーマに結びつけるためのメニューを作成していることがわかる。
次は反転シュート。選手2人が向かい合って立ち、シュート役がゴールに背を向けた状態で、片方の選手へボールを投げる。その選手は飛んできたボールを頭で返すと同時に、ボールを投げた選手が反転し、バウンドしたボールを少ないタッチでシュートに結びつける。ここでは海老根コーチから「ヘディングも技術だ。しっかり背後に落とそう」と声が飛んでいた。試合中、ヘディングで相手の最終ラインの背後に落としたボールを、ダイレクトで蹴り込む場面はよくある。実戦に近いトレーニングである。
シュート練習の最後は、得点へ直結する「プルアウェイ」の動きをトレーニングしていく。
まず、ペナルティエリア外、ゴールポストの延長線上に選手が立ち、後方の選手がそこへパスを送る。受け手はプルアウェイでボールを受けるスペースを作り出し、ゴールへ角度をつけた位置からシュートを打つ。ここでのポイントは、パサーはパスを味方の足元に入れること。シューターは、ファーストタッチでシュートを受ける場所にボールを置くこと。
プルアウェイで外からシュートを打つ意識に働きかけたところで、次は外から中へ入る「ダイアゴナルラン」のトレーニングへ移行。ペナルティエリアのラインをオフサイドラインに見立て、相手の背後をとるイメージで、外から中へと斜めに進入していく。ここでは身体の向き、マークを外す動き、パサーとの呼吸の合わせ方などにコーチングしていく。得点に直結する動きをどのような声掛けで向上させていくかは、ぜひ動画本編でご覧頂きたい。
<プロフィール>
海老根宏(えびねひろし)
トリプレッタU-12渋谷監督/GKコーチ/レジスタスクールメインコーチ。
【選手歴】百合丘SC-読売日本SCJY-読売日本SCユース-拓殖大学
【指導歴】日本サッカー協会B級ライセンス/東京都サッカー協会GKプロジェクトスタッフ/渋谷区トレセンコーチ/東京都第7ブロックトレセンコーチ
取材・文 鈴木智之