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ウォーミングアップから" 素早い判断"を求める / 「攻守の切り替え」を早くするドイツ流コーチング術

COACH UNITED ACADEMY2017年2月の講師は中野吉之伴氏。2001年にドイツに渡り、09年にドイツサッカー協会の公認A級ライセンスを取得。現在はフライブルク近郊のSCアウゲンバイラタルU-15の監督を務め、育成年代の指導に取り組んでいる。(取材・文 鈴木智之)

ドイツで長年指導する中野氏がテーマに取り上げたのが「攻守の切り替え」だ。中野氏は「オーソドックスなテーマですが、昔からある大事なもの。サッカーでは攻撃・守備・切り替えの場面に分けられますが、攻撃、守備が終わった瞬間に、次はどうしようかと考えていては、試合の中で有効な行動はできません。普段の練習から、攻撃のときに守備の展開について少しでも考える。あるいは守備から攻撃に移る際、ボールを奪ったときに次の動きをどうするか。そこに考えが行っていることが大切です」と、攻守の切り替えの重要性を述べる。

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■「素早い判断」を取り入れたウォーミングアップ

COACH UNITED ACADEMY動画前編は、楽しい雰囲気の中で攻守の切り替え、頭の切り替えにフォーカスしたウォーミングアップから始まる。中野氏は子ども達を前に「みんなサッカー好き?」と問いかけ「はい」という答えを受けて、「それが大事だよね」と優しく声をかけて練習がスタートした。

最初のウォーミングアップは2人1組で行うもの。2人がマーカーを挟んで1歩下がり、向かい合って立つ。そして中野氏の合図によって、アクションをする。中野氏が説明する。

「私が1と言ったら両手を頭、2は両手をひざ、3は両手を背中、4は両手を地面に置こう。そして『ホップ』と言ったら、マーカーを手で取ってください。先に取った方が勝ちだからね」

早速、説明の後にやってみると、子どもたちの「うぉー」「くそー」という賑やかな声がグラウンドに響き、楽しみながらトレーニングをしているのが伝わってくる。続いては、マーカーの代わりにボールを置き、数字と「ホップ」が中野氏の口からランダムに飛び出す。

「ホップ」と言ったら、2人でボールを奪い合い、背後にあるマーカーで作ったラインまでドリブルで進んでいく。先にボールを取れなかった選手は、追いかけて奪い返しても良いというルールが加えられた。

その後、ボールから2歩離れて互いが後ろ向きで立ち、番号の他に「ホップ」と言われたらターンしてボールを先に保持し、ドリブルをするという設定に変わっていく。次に後ろ向きで立って目をつぶる、片足立ちで行うといったように、難易度が上がるとともに、子どもたちが飽きないような工夫が施されていた。


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■繰り返し伝えることが選手の意識を変える

続いて、ウォーミングアップを経てゲーム形式の練習に移行。まずは「3+3対3のポゼッション」が行われた。 設定としては、長方形のグリッドを作り、真ん中にマーカーを置いて半分に区切る。それぞれ区切られたグリッドの中に3人ずつ入り、攻撃側とする。(画像では、最初ビブスなしとオレンジが攻撃側、ピンクが守備側)。

攻撃側は最初からいるグリッド内でのみ動くことができ、守備側の3人はすべての範囲内を動くことが可能。攻撃側6人でパスを回し、守備側3人が奪いに行く。攻撃側はピンクチームからオレンジチーム、オレンジチームからピンクチームへパスを渡すと1点。守備側の選手同士の間をパスで通して、攻撃側の片方のチームに渡すと2点。連続で10点取れば攻撃側の勝ちとなる。

守備側がボールを奪ったら、奪われたチームと攻守交代。攻撃側が守備側にボールを奪われたとき、もう片方の攻撃側にパスを渡すまでは奪い返しても良い。ボールをカットしてグリッドの外に出たら、奪われたチームが守備側になる。

そこではポジショニングやボールを受ける際の身体の向きについて、コーチングが行われていた。内容はぜひ映像で確認していただきたいのだが、中野氏からは「パスを出したい方を向いて、ボールを受ける」「ボールを取られたあと、すぐに取り返す」といったことについて何度もアドバイスが飛んでいた。

ここまでが、動画前編の内容となる。普段、ドイツで指導をしている中野氏のコーチングを見ることのできる貴重な機会だけに、トレーニングの雰囲気作りや声掛けの内容など、ぜひ動画で確認し、指導の参考にして頂ければと思う。

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中野 吉之伴/
武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-16監督、翌年にはU-16/U-18総監督を務める。2013/14シーズンはドイツU-19・3部リーグ所属FCアウゲンでヘッドコーチ、練習全般の指揮を執る。


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