07.10.2017
ブラジル人が子どもの頃から身に付ける4つのテクニック / ブラジルNo'1育成クラブがジュニアで重視すること
ネイマール、ダビド・ルイス、ダニエウ・アウベスなど、ブラジル人選手は世界中のリーグでプレーしている。彼らはなぜ、世界のどんなリーグでも活躍することができるのか。ブラジルでNo'1の育成型クラブと言われるクルゼイロEC。その指導メソッドを日本で展開する「クルゼイロジャポン」の指導部門責任者 小林弘典コーチと、横林洋士コーチに、技術的側面から解説してもらった。(文・鈴木智之)
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ブラジル人は"テクニック"をどう使っているのか?
小林コーチは「ブラジル人選手が世界中で通用している理由のひとつ、"テクニックをいかにして使っているのか"を紹介したい」と語り、またぎフェイント、ボールキープ、リフティング、ターンの4つについて「試合で技術を発揮できる選手になるために、どのようなことが大切なのか」という視点で解説してもらった。まずは「またぎフェイント(ペダラーダ)」から。実演するのはブラジルで6シーズンに渡ってプレーした経験を持つ、横林洋士コーチだ。
小林コーチは「ペダラーダは見世物ではなく、フェイントです。いかにして対峙している選手を騙し、優位に立つか。それを考えることが大切です。ボールを見るのではなく、顔を上げて、相手ディフェンダーの体重移動を観ながらフェイントをしましょう」と説明する。
ペダラーダのポイントは、相手の動きを観ることとリズムに変化をつけること。小林コーチは「細かい工夫を入れることで、相手ディフェンダーがどれだけ引っかかるかが大きく変わる」と言う。
また、ネイマールなどのペダラーダを見るとわかるとおり、上半身をリラックスさせ、肩や頭を左右に揺らす"ボディフェイント"で相手と駆け引きをし、体の中心から大きく動いている。足先だけでなく体全体を使うことで、相手の視線を惑わすことができるのだ。
「ペダラーダで大切なことは、いかに相手ディフェンスとの駆け引きで優位に立つかです。一つひとつの動きにこだわることで、試合の中で使えるフェイントになります」(小林コーチ)
その動きの詳細についてはCOACH UNITED ACADEMY動画で確認して頂ければと思う。
2つ目のテクニックは「ボールキープ(プロテージ)」。小林コーチは「ブラジルでは日本の何倍もの強度、プレッシャーでボールホルダーに襲いかかります」と語り、「その時にいかにして自分の身体とボールを守るのか。相手からのディフェンス、プレッシャーが来る中で、ボールを相手から遠ざけることが大切」だと述べる。
ブラジルと言えば華麗な足技が注目されがちだが、ボールだけでなく相手のファウルから身を守る技術もジュニア年代から徹底して指導されているそうだ。
動画では、相手に近づいて足の側面、腰、上半身、腕を使ってボールをプロテクトし「相手と距離は近いけど、ボールには届かない」ボールキープの方法を紹介。「中途半端に逃げようとすると、相手が追いかけてきて懐に入られてしまいます。逃げるのではなく、自分から近づいて腕や腰、足で相手をブロックする。ボールを守りながら、相手を遠ざけるイメージが大切です」(小林コーチ)
技術トレーニングとしての「リフティング」
3つ目はリフティング。日本の子どもたちが多く行っているリフティングは、足先でちょんちょんとつくような形で行うものが多いが、これを何千回とできたとしても身につく技術は非常に限定的だ。より実戦に生きるボールコントロールを身に付けるために、「ポイントは身体の様々な部位を使うことと、ボールの角度と高さを変えること」と横林コーチが実演しながら言う。
「ブラジルでよくやっていたのが、何回かに1回ボールの高さを変えて、その間に首を振ってボールから目を離し、落ちてくるボールに対して的確にコントロールするリフティングです。ボールを見るのは6割、周囲を見るのは4割のバランスの中で、ボールの中心を捉える技術を磨いていきます」
これは、試合でよくある浮き球のボールコントロールにつながる。ただのリフティングではなく、サッカーの技術トレーニングである。ブラジルではサッカーボール、リフティングボール、大きいもの小さいもの、柔らかいゴムのもの、硬いものなど、ボールの種類を変えてリフティングをするという。
「そうすることで、いろいろな刺激を与えることができ、試合で使える技術の習得になると考えています。さらには2人1組でのリフティングでは、互いの距離を変えながら行うことで、負荷や刺激が変わります。あと、よくやるのがサッカーバレーです。遊びの要素を入れながら勝負をするのも、ブラジルサッカーの真髄。ぜひトレーニングに取り入れてみてください」(小林コーチ)
4つ目はターン。相手ディフェンダーを背負った状態で、いかにしてボールを受けて、相手を外すか。ブラジル人選手が得意とするプレーのひとつだ。ここではボールを受ける前の駆け引き、ファーストタッチでボールをどう動かすかなどを実演。さらに、激しいチャージを受けないように、自分の身体を守りながらボールを受ける技術も紹介している。試合ですぐに使うことのできる技術なので、ぜひ動画で確認し子どもたちの上達のヒントにしていただきたい。
【講師】小林 弘典/
クルゼイロジャポン指導部門責任者。高校時代にブラジルに留学し、2006年にもコーチ留学を経験。サンパウロ州公認フットサルライセンス取得。2013年より毎年、クルゼイロtoca1(育成組織)にてコーチ研修を受ける。JFA公認サッカーB級、フットサルC級ライセンス保持
【実演】横林 洋士/
クルゼイロジャポン事務局長。1995年にブラジルへ武者修行。1997~2000年にブラジルのクラブとプロ契約を結び、各州選手権でFWとして活躍した。JFA公認B級ライセンス取得中
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取材・文 鈴木智之