09.25.2017
技術的なミスで失点しない。GKに必要な動きのディテールとは?/FC東京U-18のGK基礎トレーニング
前回に続き、COACH UNITED ACADEMYでは、FC東京U-18の山下渉太GKコーチによる、GKトレーニングを公開。後編ではより試合に近い動きにフォーカスした「U-18やトップチームで行う、試合に近いシチュエーションの練習」(山下GKコーチ)となっている。(文 鈴木智之)
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■反応の練習ではなく正しい技術の確認を行う
トレーニングは「片膝立ちのダイビング」からスタート。コーチがPKスポット付近から蹴ったボールに対して、ダイビングキャッチを行う。ここでは「両腕の間から、しっかりとボールを見ること」「ボールに対して、身体より前でキャッチすること」をコーチング。コーチが手で投げるのではなく、足でボールを蹴るので、ボールスピードも上がる。素早く動く中で、前編で意識した地面の踏み込みや足首、膝を曲げる角度、股関節の伸展を使うことなど、正確な動作が求められていく。次は「立った状態からのダイビング」。設定としては、GKがゴール前に立ち、コーチがPKスポット付近からボールを蹴る。このときコーチは思い切り蹴るのではなく、ボールスピードを調整する。そのため反応の練習というよりも、飛んでくるボールに対して、腕の出し方、ジャンプの踏み切り方など、正しく技術が発揮できているかを確認していく。
ここでは、GKがキャッチできずにこぼしたボールに対して「ゴール前でボールを落とすと、即失点につながる。試合の緊張感を持ってプレーしよう」とアドバイス。前編で紹介した、足首、膝、股関節の伸展を使って、地面をしっかりと蹴ることができれば、遠くへ飛べることなどのアドバイスが送られていた。
次はジャンプをして身体のバランスを崩した状態から、ボールに対して素早くアプローチをするトレーニング。まず、すねの高さに設けられたゴムひもをGKが3回ジャンプし、コーチがバウンドボールを投げる。それに対して素早くキャッチする。
続いては「3回ジャンプして1歩踏み出し、ボールに対してアプローチする」という設定が加えられた。このときに「手でボールをつかみに行くのではなく、手を出してそこにボールをはめてつかむ。手だけでボールを挟みに行かない」というコーチングがされていた。GKのプレーはひとつのディテールが成功、失敗につながる。技術的なミスをなくすことが大切で、その点について山下コーチは細かく指導を行っていた。
この練習は、ゴムひもの高さを調節して、GKがジャンプした後にグラウンダーのボールを投げ、ゴムひもの下を潜ってボールをキャッチするなどのバリエーションもある。このトレーニングは背後からの映像も収録。GKの視点でどのようにジャンプし、ボールに対してアプローチしているかを見ることができる。
■より試合のシチュエーションに近づけていく
続いては「ボールホルダーに対してアタックする」というテーマでトレーニングを実施。試合中によくある、ドリブルでゴール前に入ってくる選手に対して、GKが足元に飛び込んでキャッチする動きのトレーニングだ。設定としてはゴール前に4つのフラフープを置き、GKは横に動いてフラフープの中を踏んで進み、コーチが投げた頭上のボールをキャッチする。次にそのボールを放り、ゴールエリアのラインに置いてあるボールに対して、フロントダイビングでキャッチする。ここでは、コーチは置いてあるボールを蹴りに行くモーションをして、GKにプレッシャーをかける。
この練習で山下コーチは「ハイボールをキャッチした後の足の運び」について指導。「1つ目のボールをキャッチして、次の動作に移るときに小さなステップを入れると、その分、余計な時間がかかる。速くボールにアプローチしなければいけないので、1歩目を大きく出し、ボールに対して最短距離で低く飛ぼう」と声をかけていた。
トレーニングも終盤に入り、より実戦に近いトレーニングが行われていく。ここでは「ボールを持った相手選手にサイドの深い位置に進入され、ゴール前に折り返しのクロスを入れられる」という状況を設定。さらには、シュートストップのトレーニングで締めくくった。
トレーニングの詳細やコーチングの内容は、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画をご覧頂ければと思うが、山下コーチが「GKは受け身、リアクションのポジションですが、いかにボールに対してアタックするか、攻撃的にプレーするかが大切で、それがゴールを守り、ボールを奪うことになり、試合に勝つことへつながっていく」と語る通り、前向きな気持ちでトレーニングするものが多かった。トレーニングメニュー、コーチング内容だけでなく、GKというポジションに対する山下コーチの考え方も、ぜひ動画で感じてほしい。
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【講師】山下渉太/
FC東京U-18 GKコーチ。JFA公認B級、JFA公認GKA級ライセンス保持。東京学芸大ではキャプテンを務めた後、早稲田大学GKコーチとして指導をスタート。2011年にFC東京U-15にGKコーチとして加入。12年からは、U-15深川GKコーチ専任、16年途中からトップチームのGKコーチを担当。2017年よりU-18のGKコーチとして、育成に力を注いでいる。
取材・文 鈴木智之