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脳と身体をリンクさせ、リズムの変化に対応した動きを習得/川崎フロンターレU-12の運動能力向上プログラム

今回のCOACH UNITED ACADEMYは、少し変わった視点のトレーニングを紹介したい。テーマは「脳とカラダをリンクさせる」。協力してくれたのは、川崎フロンターレU-15の関智久トレーナーとダンスインストラクターの藤田陽子さん。ここでは実際にチームが取り入れている練習の様子をレポートする。(文 鈴木智之)

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■コーディネーション能力の向上につなげる

川崎フロンターレの関トレーナーは、アカデミーの練習にダンスを取り入れる理由について、次のように語る。

「最近の子どもたちは外で遊ぶ機会が減っていて、様々な遊びの中でコーディネーション能力を養う機会が少なくなってきています。ダンスをすることでステップワークや上半身と下半身の連動、目で見た動きを身体で表現する能力が高まるのではないかと思い、練習に取り入れることにしました」

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ダンストレーニングはアップテンポの音楽が流れる中でスタートした。インストラクターの藤田さんの掛け声のもと、集まった選手たちは笑顔でリズムに乗り、身体を動かしていく。

ダンスは藤田インストラクターの動きに合わせて、真似をするところから始まる。ジャンプして足を左右に開いたり、閉じたり。ケンケンパの動きなど、インストラクターの手本を見ながら、音楽に動きを合わせて行く。

ダンスの中には、足の裏側や上半身を伸ばす動きも入り、ストレッチの要素も組み込まれている。なかでも、胸と肩甲骨周りを動かす踊りは、上半身のボディフェイントやドリブルで相手を交わす時の動きに通じるものがある。

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■サッカーのプレーで必要な緩急は「リズムの変化」

藤田インストラクターはテンポよく振りを変えていき、そのたびに選手たちは笑顔を交えながら踊りを真似していく。ほかにも、足を上げて外側に開く動きなどは、サッカーのトラップの動きと同じであり、いたるところにダンスとサッカーの共通点が見てとれる。

このあたりは、関トレーナーが言う「ダンスをすることで、サッカーの動きがスムーズにできるように」という狙いに適った部分だろう。たとえばブラジルの選手たちは、子どもの頃からサンバというダンスに親しんでおり、その動きがサッカーのプレーにも反映されている。ダンスをすることで身につく上半身の柔軟性、しなやかな動きなどは、サッカーの試合中、相手からチャージを受けるときに、相手の力を逃して持ち堪えたり、力を利用して進んでいく際などに重要な動きである。

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藤田インストラクターは「リズムをとって手足をうまく動かす事など、ダンスの楽しさを感じてもらえれば」と話しており、サッカーとの関連性については「ダンスをすることで、身体をうまく使えるようになってほしいという考えでトレーニングをしています」と狙いを語る。

「ダンスは普段の動きと違って、手と足でバラバラの動きをしたり、上半身と下半身を違うリズムで使うことが多いので、子どもたちの刺激になると思います。太ももでリフティングをするリズムは、ヒップホップのダウンのリズムに似ていますよね」

サッカーのプレーで必要な緩急は「リズムの変化」と言い換えることができる。これはダンスのトレーニングで意識させられる部分であり、藤田インストラクターは「遅いテンポや早いテンポの曲を聞き、リズムに合わせて身体を動かすことや、音と音の間のリズムをとることは、脳の活性化にもなります」と説明する。

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関トレーナーは「運動発達の観点から、ゴールデンエイジと言われているこの時期にリズムトレーニングを取り入れることで、運動動作の習得につながります。子どもたちにとっても良い刺激になると思うので、COACH UNITED ACADEMYをご覧の方々は、このトレーニングを参考に、チームでも生かしてもらえればと思います」と語ってくれた。

普段のトレーニングと違い、選手たちに新たな刺激を与えたいと考えている人は、ぜひ動画を参考にしていただければと思う。子どもたちの楽しそうな姿から、トレーニングのヒントが得られるはずだ。

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【講師】関智久/
1980年、埼玉県出身。FC琉球、FC KOREAのトレーナーを経て、2012年に川崎フロンターレU-18のトレーナーに就任。2016年より現職。柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA認定CSCS、NASM認定PES。

【講師】藤田陽子/
ダンス歴27年、インストラクター歴14年。ニューヨーク、ロサンゼルスにてダンス留学経験あり。ダンススペースDD主宰。高津区を中心に活動し、(公財)日本ストリートダンス教育研究所の指導員として、中学生や体育教諭への指導も行っている。