10.23.2017
奪ったボールを素早く確実にポゼッションするには?/大宮アルディージャJr.ユースのトランジショントレーニング
今回のCOACH UNITED ACADEMYは、大宮アルディージャジュニアユースのトレーニングを紹介したい。2017年夏に行われたクラブユース選手権(U-15)では全国ベスト8に進出し、4人の年代別日本代表候補を輩出するなど、育成力に定評のある大宮アルディージャ。ジュニアからジュニアユース、ユースと多くのタレントを育成する大宮では、どのような哲学のもと、トレーニングが行われているのだろうか。
ジュニアユースの監督を務めるのは、大宮アルディージャで現役引退後、育成年代のコーチ/フィジカルコーチを務める岡本隆吾氏。今回紹介するトレーニングの狙いを「少人数の局面での攻守の切り替え」と話し、「アルディージャが採用するプレーモデルの特徴であるボールポゼッション、攻守の切り替えに焦点を当てたトレーニングを行います」と説明してくれた。(文 鈴木智之)
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ボールを奪った瞬間に素早くポジションをとる
トレーニングは選手たちに対する、岡本監督のアドバイスから始まった。「アジアや世界の大会では、攻勢に出ていてもワンプレーで状況が変わることがある。それは、国を代表して戦っているからこそ味わえる緊張感。今回、代表に選ばれた選手以外にも、みんなにチャンスがある。それをつかめるかは努力次第。日の丸を背負って戦うことが、どういうことなのか。みんなに経験してほしい。そのためにも目標をしっかり持ってやって欲しい。今日も集中してやりましょう」
ウォーミングアップも兼ねて最初に行われたメニューは4対2(2対2対2)。いわゆる『ロンド(鳥かご)』と呼ばれるもので、アンダーツータッチという制限が加えられた。
ここでのテーマは「ボールを奪った後の攻守の切り替え」。岡本監督は「ボールが切れたら、すぐに違うボールで始めよう」と、プレーを途切れさせることなく、高い強度を保つことを強調した。
トレーニング中の岡本監督のコーチングは「守備側がどうボールを奪うか」「奪ったボールを素早く攻撃につなげるには、どうすれば良いか」という視点からのアドバイスが主なものだった。
最初の3分間のトレーニングでは、素早くプレスをかけてボールを奪うこと。2人で協力して動き、ボール保持者のパスコースに制限をかけること。そして、寄せに行った際にボールを奪い切ることを強調。3分が経過したところでプレーを止め、選手達はストレッチをして身体をほぐしていく。
そのタイミングで岡本監督は「予測」についてアドバイスを送っていた。「"ボールを奪えそう"という予測を早めて、実際に奪えそうだったら、ボールを取った瞬間にいち早くスペースを見つけ攻撃に移るポジションをとろう」と話し、守備と攻撃は表裏一体であること、プレーを途切れることなく連続して行うことの重要性を説いていた。
ポゼッションにつなげるための素早い切り替え
練習メニューは変わらず4対2だが、3分のインターバル(ストレッチ)ごとに、岡本監督からポイントを絞ったアドバイスが選手達に送られていく。このあたりの流れは、COACH UNITED ACADEMYをご覧のコーチの方に参考になる部分だろう。ラストの3分間では「予測はだいぶ早まってきたので、守備側はボールを奪った瞬間に誰にボールをつけるのか。味方はどこにポジションをとるのか。その判断をもっと早めよう」とコーチング。
この練習のテーマである「素早い攻守の切り替え」に欠かすことのできない判断スピードの向上、さらには「どのスペースでボールを受ければ、ポゼッションを継続できるか」という視点で「相手はどこにいるのか、スペースはどこにあるのか」といった認知の部分にも触れていた。
大宮アルディージャのアカデミーといえば、ジュニア年代からボールポゼッションを軸にしたスタイルが特徴的だ。そのスタイルの根幹をなすトレーニングとして、今回紹介した4対2が位置づけられるといえるだろう。
今回の動画は、世代トップレベルの選手達のプレー、それに対する岡本監督のコーチングを見ることができる貴重な機会である。興味のある方は、ぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画をご覧いただければと思う。
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【講師】岡本隆吾/
1973年、神奈川県出身。横浜市立南高、日本大学、NTT関東を経て大宮アルディージャに加入。引退後は大宮アルディージャ普及部コーチ、スクールマスター、ユースコーチ、育成コーチ、育成フィジカルコーチなどを歴任。
取材・文 鈴木智之