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16歳以降で広がる「世界との差」とは? スペイン人コーチが日本で指導して気付いたこと

スペイン・バルセロナを拠点に、世界中のクラブ、選手の指導&コンサルティングを行っているサッカーサービス。選手の認知力・判断力・実行力を育成する彼ら独自の指導法「エコノメソッド」は、フィンランドサッカー協会やタイサッカー協会、フランスの名門パリ・サンジェルマンなどに全面導入されています。

世界中で指導を行ってきたサッカーサービスだからこそ語れる、日本サッカーの課題である「守備」の指導法について、これから数回に分けて詳しくお届けしていきます。
(この連載は2016年5月に開始したメールマガジン「知のサッカー:守備」の内容を転載したものです)

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サッカーを愛する指導者のみなさん、こんにちは。

サッカーサービスのフランセスク・ルビオ・セダノ。通称"フラン"です。

この連載では「指導者としてもっと向上したい!」という、あなたの気持ちに応えられるよう、スペインやヨーロッパのトップレベルで採用されている指導のノウハウを、お伝えできればと思っています。

サッカーサービスとは?

まずは、我々サッカーサービスのことを紹介させてください。

我々はスペインのバルセロナを拠点にヨーロッパやアジア、北米などでクラブのコンサルティング、選手の指導を行っています。

サッカーサービスのメンバーには、FCバルセロナのアカデミー監督時代にジェラール・ピケやジョルディ・アルバなどを指導し、現在はパリ・サンジェルマンの育成部長を務める、カルレス・ロマゴサ。ヨハン・クライフ大学やカタルーニャサッカー協会でコーチングアドバイザリースタッフを務め、FCバルセロナやスペイン代表の『闘将』と呼ばれた某選手の個人コンサルティングを担当したダビット・エルナンデスなどがいて、欧州トップレベルの日々進化する指導メソッドを、世界中の選手、指導者に提供しています。

日本でもサッカースクールや選手コンサルティング、指導者講習会を通じて、多くの指導哲学、メソッドをお伝えしてきました。

その根底にあるのは『賢い選手を育てること』です。

日本の指導者向けにDVD『知のサッカー』を発売し、1巻は正しい認知・判断・実行を鍛えるための段階的なトレーニングプログラムを紹介。2巻ではJリーグの試合映像をもとに、サッカーのあらゆる局面における「正しい判断」「正しい動き」を分析し、13歳までに身につけたいプレーを解説してきました。

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(現在はパリ・サンジェルマンの育成部長を務めるカルラス・ロマゴサ氏)

我々が日本での指導で気づいたこと

我々は2011年の来日以降、下はジュニアから上はJリーガー、日本代表まで、数多くの選手、チームを見てきました。また、2015年まで日本サッカー協会のコンサルティングプロジェクトディレクターも務め、私はJFAアカデミー福島でU-13の選手たちを指導してきました。

そこで、気がついたことがあります。

それは、日本の多くの選手は守備(ディフェンス)の仕方を知らない、ということです。

おそらく、この連載を読んでいるあなたは、この考えに同意してくれるのではないでしょうか。そして、守備を向上させたい!という想いをお持ちなのではないでしょうか。

日本サッカーの課題であり、レベルアップが急務である守備について、我々はいくつかのアイデアを持っています。これはヨーロッパのトップレベルの選手が実行しているコンセプトであり、日本代表の選手であっても知らない、あるいは理解していないものが含まれています。それを、この連載を通じて、お教えしていきたいと思っています。

前回ワールドカップでの日本の敗因

2014年のブラジルワールドカップ。日本代表はコートジボワール、ギリシャ、コロンビアと対戦し、1分け2敗。3試合で失点6と守備が崩壊し、1勝もできずに大会を去ることになりました。

私はコートジボワール戦を分析しましたが、「日本の選手が守備の個人戦術を身につけていれば、防ぐことのできたピンチ」がいくつもあると感じました。

ひとつは、中盤での守備のコンセプトです。

日本のボランチの選手は、ボール保持者に意識が向きすぎるあまり、自分の背後のスペースを空けてしまう場面が何度も見られました。これは、遅くとも18歳までに身につけておきたい「守備時の認知」と「第二ラインでの守備~FWへのパスコースを閉じる」というコンセプトです。これを知らない、あるいは知っていたとしても実行できていなかったがゆえに、招いてしまったピンチであると考えています。

これは氷山の一角に過ぎず、日本代表の選手であっても、守備の個人戦術を十分に理解していないことが見受けられます。私の考えでは、これらをプロになってから知るのでは遅すぎます。

育成年代である13歳から18歳までの間に、年齢に応じて段階的に身につけていくことで、試合中に考えなくても体が動く、つまりオートマティックなプレーができるようになるのです。

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日本人選手に必要な「守備の個人戦術の理解」

私がJFAアカデミー福島U-13の監督をしていたとき、Jクラブのアカデミーと試合をする機会が何度かあったのですが、すべてに勝利しました。そのときに、何をしたのか。勘の良いあなたならおわかりだと思いますが、「守備のやり方(ディフェンス)を教えた」のです。

監督就任後、最初の2ヶ月は選手個人に守備のコンセプトを教え、その後、グループ、チームと守備の戦術を積み上げていきました。攻撃のトレーニングに着手したのは、守備のコンセプトを教えたあとです。

現代サッカーは、攻撃は攻撃の時間、守備は守備の時間と分断されてはいません。勤勉な指導者の方はご存知だと思いますが、攻撃と守備は表裏一体であり、強いチームは守から攻、攻から守への切り替えが速いです。

日本の選手はスピードがあり、テクニックがあります。15歳までは、スペインやドイツの同年代の選手と比べて、レベル的に同等にあると言っていいでしょう。では、なぜ16歳以降、大きな差が出てしまうのでしょうか。それは、サッカーに対する理解力の差にほかなりません。

そして、その要因のひとつに「守備の個人戦術の理解」があります。

これは私の印象ですが、日本の多くの選手は守備のコンセプトを知らない、あるいは、教えられていないと考えられます。言い換えれば、守備のコンセプト、方法を身につけることができれば、選手としてレベルアップするのは当然のこと、チームとしても向上することができるのです。

この連載では、13歳から18歳までに身につけておきたい守備のコンセプトについて、我々サッカーサービスの考えをお伝えしたいと思っています。

日本サッカーのレベルアップのため、そして何よりあなたが指導する選手の役に立つことができたら、これほど嬉しいことはありません。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
続きは、次回の更新でお伝えします。

グラシアス、アデウ!
(注:カタルーニャ語でありがとう、さようならの意味)

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フランセスク・ルビオ/Francesc Rubio Sedano
サッカーサービス社の分析、コンサルティング部門責任者として、選手やクラブ育成コンサルティング業務を担当。C.Fカン・ビダレットの下部組織(U-18)の監督、コーディネーターと、カタルーニャサッカー協会技術委員を兼任。2014年までJFAアカデミー福島U13の監督も務めた。

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