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1-4-4-2システムで検証。18歳までに身につけたいポジション別「守備のコンセプト」

スペイン・バルセロナを拠点に、世界中のクラブ、選手の指導&コンサルティングを行っているサッカーサービス。 世界中で指導を行ってきた彼らだからこそ語れる、日本サッカーの課題である「守備」の指導法についての連載です。

最終回となる今回は、サッカーサービスが提案するU-18年代の守備コンセプトについて、フランコーチに解説してもらいます。
(この連載は2016年5月に開始したメールマガジン「知のサッカー:守備」の内容を転載したものです)

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前回はU-13の選手が身につけるべき守備のコンセプトを、下記2つの状況別にお伝えしました。

1.個人での守備(味方のサポートが無い状態)
2.味方のサポートがある状態での守備

U-13の選手の場合、まずは個人のコンセプトを身につけ、その後にグループ(2人から3人)での動きを理解していきます。それらの元となるのは個人の戦術理解であり、カテゴリーが上がるに連れて、個人からグループ、そしてチームへと関わる人数が多くなっていきます。

今回のテーマ『U-18年代で身につけておくべき守備戦術』では、日本で多く採用される1-4-4-2のシステムをベースに『ポジションごとの守備の仕方』を紹介したいと思います。

ここではポジションをFW、MF、DFと、3つのパートに分けます。それぞれFWが第1ライン、MFが第2ライン、DFが第3ラインと定義をします。

FW(第1ライン)での守備のコンセプト

まずはFWの守備のコンセプトについて説明します。


(1)相手の攻撃方向を限定する
●中央のパスコースを閉じ、攻撃方向を限定する
●背後を確認し、ボランチへのパスコースを閉じる

FWが守備をするとき。それは「相手の最終ライン(DF)がボールを持っているとき」です。

ここで、まず指導者がすべきは「相手の最終ラインの選手がどのあたりまで来たら、FWがプレスをかけるか」を設定することです。FWがやみくもにプレスをかけに前に出ると、その選手がいた場所にスペースができます。そこを相手に使われないように、FWの動きに応じて、MFが連動しなければなりません。

FWがプレスをかけるとき、最初にするべきは「相手の攻撃方向を限定すること」です。

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(中央のパスコースを閉じるトレーニング。DVD「知のサッカー第3巻」より)

守備時にもっともケアするべきエリアは「ピッチの中央部」だというのは、これまでの連載で再三お伝えしてきました。

まず、FWは中央部にパスを通させないように、ピッチの内側のコースを消します。このとき、自分の背後を何度も見て、相手のMFやFWがどこにいるかを確認し、ボールを持っているDFとMF、FWのライン上にポジションをとることを意識します。それはMF、FWへのパスコースを消すためです。


(2)味方のカウンターを予測し、準備する
●2人のFWは異なる高さにポジションを保つ
●相手ディフェンスのライン間を利用する

現代サッカーでは、守備と攻撃は表裏一体です。FCバルセロナのようなトップレベルのチームは、ボールを奪い返した瞬間に攻撃に移り、素早い展開でゴールを陥れます。良い選手とは、守備の時に攻撃のことを考えて準備できる選手であり、その反対もしかりです。

そのため、FWは自分が守るべきラインを突破されたあとは、守備のことだけでなく、攻撃に移るときのことを考えて、ポジションをとり続けることが重要です。

相手の守備にギャップを作るためにも、2トップはそれぞれ同じラインに入るのではなく、異なる高さにポジションをとること。そして、相手のMFラインとDFラインの間、あるいは右ボランチと右センターバックの間といったように、ライン間のスペースを使って攻めて行きます。

MF(第2ライン)での守備のコンセプト

次はMFの選手の守備のコンセプトです。


(1)相手FWへのパスを防ぐ
●MFのライン間でポジショニングを調整する
●FWへのパスコースを閉じる

4-4-2システムの場合、MFは4人います。この4人が連動して、互いのポジションがズレていないか、無用なスペースを生んでいないかを常に確認し、ポジションのバランスを保ちます。

そうして、相手のMFがボールを持った時に、FWへパスを通させないように、左右に移動するなどして、パスコースを閉じるポジションをとります。

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(選手に質問を投げかけながら指導するフランコーチ DVD「知のサッカー第3巻」より)


(2)数的優位を作る
●適切な判断でラインのバランスを崩し、数的優位を作る
●パスコースを閉じながら、数的優位を作る

MFは互いにポジションのバランスを保ちながら、ボール保持者の状況に応じてラインのバランスを崩し、数的優位を作ってボールを奪いに行きます。このとき、選手同士が連動してパスコースを閉じながら、ボール保持者を囲い込みます。 その際に必要な「いつボール保持者へ寄せるべきか」「いつ人数をかけて奪うべきか」といった状況を認知する力、適切な判断をする力は、現代サッカーにおいて欠かせない要素のひとつになっています。

DF(最終ライン)での守備のコンセプト

最後は、最終ラインでの守備です。


(1)マークを受け渡す
●マークの受け渡しを適切に判断する
●ボール保持者の状況に応じて、マークを受け渡す

図Aのように相手チームの選手がボールを持った状態で、スペースにパスを出すことができるときは、パスの受け手とゴールの間にポジションをとりながらマークを継続します。

その際、図Bのように守備側の味方選手がプレスに行っており、マークする相手のところへ「パスが出てこない」と判断をしたら、パスの受け手の動きに応じて、最終ラインの選手同士でマークを受け渡します。

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このように守備側の味方選手がプレスに行っている場合、前線へ効果的なパスが出る可能性は低いので、適度な位置でマークを受け渡すことが可能です。


(2)後方のスペースを守る
●相手のマークを外す、斜めの動きについていく
●後方にパスが出なかったときは、元のポジションに戻る

ディフェンダーがまず考えるべきことは、最終ラインの背後のスペースを守ることです。なぜならば、相手に最終ラインの背後のスペースを使われると、失点の可能性が高くなるからです。

その際、相手の攻撃側の選手(FW)が、ゴールに向かって斜めに入る動きでマークを外そうとする場合、マンツーマン状態で相手についていきます。しかし、パスが出てこない場合は途中でマークを外し、最終ラインを再構築します。そうすることで、パスが出た時にオフサイドをとることができます。

このように「どこまで相手についていくか」「どの状況で相手のマークを外し、ラインを再構築するか」は戦術的な判断になります。

カルレス・プジョルやセルヒオ・ラモスといったトップレベルのセンターバックは、この判断が非常に適切で、マークを捨ててラインに戻るときは100%のスピードで走ります。ラインが崩れている時間が長くなればなるほど、失点のリスクが高まることを知っているからです。

以上が、U-18年代で身につけたい守備のコンセプトです。

守備のレベルが上がれば攻撃のレベルも上がる

ここで紹介したのは、世界トップレベルの選手が実践するコンセプトであり、彼らは単純に走力や身体能力だけで守備をしているのではありません。

状況に応じて適切なポジションをとり、攻守の切り替えを常に意識し、守備時に守るべきもの(人なのか、スペースなのか、ボールなのか)を瞬時に判断して、個人とグループ、チームとが一体化して守備をしています。

2016年の欧州チャンピオンズリーグでは、レアル・マドリーとアトレティコ・マドリーの決勝戦になりましたが、両チームとも守備の個人戦術に長けた選手が多く、とくにアトレティコは選手個人で見ても、チームとして見ても、多くのコンセプトを適切に実行しているチームでした。

スペインサッカーは華麗な攻撃ばかりが注目されていますが、選手個々の守備戦術のレベルは高いものがあります。その守備を打ち破るために、さらに攻撃が磨かれる面もあるでしょう。それらのベースとなっているのが、育成年代の指導にあるのは間違いありません。

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日本のサッカー界では、まだまだ守備の重要性は知られていません。しかし、守備のレベルが上がれば、攻撃のレベルも上がります。そのことに気が付き始めている、指導者の方もいます。この連載を読んでいる方は、守備の重要性を認識していることでしょう。

当然のことながら、守備戦術は日本の選手たちであっても、コンセプトを知っている指導者の元でトレーニングをすれば、身につけることができます。

我々が監修した、守備戦術に特化したDVD「知のサッカー第3巻」では、ここでも紹介したコンセプトの説明はもちろん、それらを習得するためのトレーニングメニューを映像で分かりやすく解説しています。 とくに、この連載を読んで頂いた方は、より深く、我々の考えを理解してくれるのではないかと期待しています。

我々サッカーサービスは、今後も様々な情報を提供し、日本サッカーのレベルアップに貢献したいと思っています。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

それではまたお会いしましょう。

グラシアス、アデウ!
(注:カタルーニャ語でありがとう、さようならの意味)

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フランセスク・ルビオ/Francesc Rubio Sedano
サッカーサービス社の分析、コンサルティング部門責任者として、選手やクラブ育成コンサルティング業務を担当。C.Fカン・ビダレットの下部組織(U-18)の監督、コーディネーターと、カタルーニャサッカー協会技術委員を兼任。2014年までJFAアカデミー福島U13の監督も務めた。

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