TOP > コラム > サッカーにおけるミスの8割は"頭の中"で起きている/サッカーコーチを指導する倉本和昌のコーチング理論

サッカーにおけるミスの8割は"頭の中"で起きている/サッカーコーチを指導する倉本和昌のコーチング理論

COACH UNITED ACADEMYでは、「サッカーコーチ専門コーチ」の倉本和昌氏のセミナーを公開中。倉本氏は高校卒業後、バルセロナ留学を経て、アスレチックビルバオで育成の仕組みについて学び、スペイン公認上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後は湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャのアカデミーでコーチを務め、現在はサッカーコーチを指導するコーチとして活動を続けている。セミナー後編では「サッカーの行動プロセスを元にしたミスの種類と、選手に対する具体的な質問の作り方」と題し、指導現場ですぐに使える考え方を紹介したい。(文:鈴木智之)

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

<< 前回の記事を読む 

action.jpg

サッカーの行動プロセスを理解する

前編では選手の状態に応じたコーチングの使い分けや、選手のタイプをどう見極めるかについてお伝えしてきたが、後編では指導を通じて選手を向上させるための「具体的な質問の作り方」からスタート。

倉本氏は「選手に対する質問を作るときに、まず考えてほしいのが『サッカーは、どういうプロセスで行われているスポーツなのか』ということです」と言い、ホワイトボードを使って説明していく。

「サッカーの試合中、選手はまず『いまの状況はどうなっているか』を認識しなければいけません。簡単に言うと『味方がここにいて、相手がいて、自分がここにいる。じゃあ、どんなプレーをしようかな』というのが判断です。これをサッカーの言葉で『戦術的行為』と言います。
パスなのかドリブルなのかシュートなのか、どんなプレーをするかを決めた次に来るのが、『どうやってやろうか』ということ。インサイドキックなのか、アウトサイドなのか、どの部分でボールに触ってドリブルをするのか。これがサッカー用語で言う『技術』です」

サッカーのプレーは周りの状況を見てプレーを判断し、実行するというプロセスの中で行われている。指導者はまず、このプレーのサイクルを理解した上で、選手は何をしようとしているのか? を見ること、知ることがポイントになる。ここで、倉本氏は重要な指摘をする。

「選手が何を見て、どう判断したのかは、外から見ることはできません。それらは、選手の頭の中で行われているからです。指導者が見ることができるのは選手のプレー、つまり実行の部分だけです」

2section.jpg

ここで倉本氏は、一つの質問を投げかける。

「我々指導者は、知覚・分析・判断・実行の中で、どのミスを一番指摘することが多いかを考えてみてください。おそらく、ほとんどの場合が実行のミスを指摘しているのではないでしょうか? なぜなら、実行のミスだけが目に見えるからです。しかし、実行の裏にある、知覚、分析、判断も同じように重要なことなのです」

ミスの8割は頭の中で起こっている

倉本氏がスペインで指導者ライセンスを取得するときの講義で、「ミスの種類」についての話が出たという。そこでは、選手のミスの内容を分析したところ、知覚、分析、判断のミスが全体の80%、ボールを蹴るといった実行のミスは、全体の20%しかなかったという。

「つまり、ミスのほとんどがボールを蹴る前の、頭の中のミスなのです。状況が正しく見えていたのか。他にプレーの選択肢があったのではないか? といった部分に働きかけていくことが、選手を向上させるために必要なことだと考えています」

さらに、こう続ける。
「知覚、分析、判断、実行のプロセスのうち、実行のミスは20%。それ以外の80%が知覚、分析、判断のミスです。これを学校のテストだと仮定すると、技術の習得は満点でも20点しか取れません。一方で80点を占める知覚、分析、判断を向上させれば、さらに伸びていくことになります。もちろん、実行を高めるのも大切ですが、そればかりに取り組むと『ボールを持ったときはすごいけど、ボールを持っていないときは何もできない選手』になってしまいます」

指導者は選手のプレーに対して、どこを見れば知覚、判断のミスだというのがわかるのだろうか? それを知る方法は「質問をすること」だと言う。

feedback.jpg

「最初に説明した、サッカーの行動プロセス(知覚→分析→判断→実行)の順に質問をしていくと、わかりやすいと思います。最初は『何を見ていたのか』を尋ねます。『右サイドの選手は見えていたの?』と聞き『見えていなかった』と答えたなら、『次は見ようね』と言えばいいですし、『見えていた』と答えたのならば、判断のミスをした可能性があります。そこで『他に選択肢がなかった?』という質問ができますよね。質問をすることで、選手の頭の中を整理し、適切なプレーができるようにしていきます」

パスやドリブル、シュートのミスは誰が見ても一目瞭然だ。それを指摘するのは、指導者の重要な仕事ではない。倉本氏は「私はできるだけ、実行のミスについては指摘しないようにしています。それよりも、何をどう見て、プレーを選択したのかという方が大事なのです」と語り、「キックをミスしたことは、本人が一番よくわかっています。そこで指導者に『なんでちゃんと蹴れないの』『しっかり蹴れ』と言われたら、どんな気持ちになるでしょうか?」と問いかける。

5.jpg

セミナーでは、知覚、判断にアプローチするための基準として、「何をどう見るか」についても提案している。倉本氏は「ゴールを見るのは大前提として」と前置きをした上で、次のような基準を提示する。

・ボールを持っていない時→スペース、味方、敵
・ボールが転がってきている時→ 敵(どこから来ているか)
・ボールを持っている時→ アドバンテージを持っている選手(フリーな選手)

「この基準をもとに、これは見えていた? こういうときはどこを見るの? と質問をすると、わかりやすいのではないかと思います」

COACH UNITED ACADEMY動画では、他にも「知覚、分析、判断、実行のミスの種類」「オーガナイズについて」など、指導をする上で知っておきたい、前提部分の知識を得ることができる。記事では2回に渡って紹介したが、ここでお伝えできたのは、限られた部分に過ぎない。ぜひ全容を動画でご確認いただき、明日からの指導に役立ててもらえればと思う。

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

<< 前回の記事を読む 

【講師】倉本和昌/
サッカーコーチ専門コーチ。高校卒業後、スペインのバルセロナに留学。アスレチックビルバオにて育成の仕組みについて学び、スペイン公認上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後は湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャのアカデミーでコーチを務め、2018年よりサッカー専門コーチとして独立。埼玉県サッカー協会の指導者養成講師、国体スタッフも兼任。Jクラブ、大学、高校、町クラブ、幼児など様々なカテゴリーのコーチをサポートしている
倉本和昌氏のセミナー情報はこちら>>