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「選手の主体性」と「テクノロジー」が日本の部活を変える/これからの部活動の在り方とは?

2月9日。スポーツの壁を越えて繋がるコーチ・リーダーのためのカンファレンス「SCJ Conference 2019」が開催されました。分科会「部活動のこれからを考える」では、部活動の顧問・部員向けのスポーツスキルシェアを軸としたプラットフォーム事業の検討を進めている川崎大氏、昨年「部活動サミット」を主催し生徒が主体的に部活に取り組む静岡聖光学院ラグビー部の風間悠平氏、NPO法人スポーツコーチングイニシアチブの小林忠広氏が登壇。

学校の課外活動としての部活動のあり方について議論がなされている昨今。指導者・部員・保護者にとってよりよい部活動とはどんな姿か、明日からどんなことが実践できるか。これからの部活動を考えました。

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部活動のアップデートに必要なことは

小林:部活動のこれからを考えるということで、少し大きなトピックとなると思います。

「3年後に日本-Japan-が誇れる部活動をみんなで想像/創造する」

ですので、少し目的や焦点を絞ってこんなことを、皆さんと一緒に考えられたらと思います。

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ代表理事の小林と申します。僕たちNPOのミッションは「スポーツで人を育み、未来を築く」で、スポーツでいい人材を養い、その方々が日本のこれからを作ることを掲げています。なぜやっているのかというと、スポーツにおけるネガティヴな体験は未だにはびこっています。残念ながら今のスポーツ現場の現状です。選手が指導者から怒鳴られたり体罰を受けたり、そうした言動がスポーツを続ける機会を損なってしまう。こうした環境を変えたいと思い、NPOを立ち上げました。

一つ、部活動として考えたいことがあります。スポーツ庁のガイドラインで部活動の短時間化が定められたことが昨今の話題だと思っています。

大事なことは部活動で得られる効果を高めるために、インプットである活動時間が減少するけれども、限られた時間でアウトプットを高めるということ。シンプルに紐解くと、「先行事例」「ツールの導入」「指導力の向上」が、成果を高めることにつながると思っています。

まさに静岡聖光学院の成功事例の学びや、川崎さんが取り組もうとしている部活動をアップデートするためのツール、そして皆さんがどう指導力を向上していくか。そうしたところで部活動の成果を高めることに寄与できると思っています。

選手が主体的に考える環境作り

小林:では早速、風間くんにバトンタッチをしたいと思います。現役高校生なので羨望の眼差しと、温かい応援する気持ちで見守っていただけたらと思います。よろしくお願いします。

風間:こんにちは、静岡聖光学院の風間と申します。私たち静岡聖光学院ラグビー部は週に3回しか部活動がありません。しかもその練習時間は、夏は90分、冬は60分しかできません。そしてテスト期間は、一週間部活動ができません。テストは年に定期テストが5回、実力テストが7回あるので約7週間はありません。また一週間の夏合宿はありますが、春休み・夏休み・冬休みの長期休暇の部活は基本ありません。

私たちは文武両道を掲げています。その取り組みとして、英語検定対策の合宿があります。部活動とは切り離したところで英語の勉強をしています。また週に一度、ノートの提出があります。ラグビーだけでなく勉強も含め、文武両道を成し遂げるために自分が何を必要としているかを具体的に書いています。

部活のない日は週に4日間あって、自分でマネジメントする必要があります。その中で主体練と勉強の選択があります。主体練とは、各自の弱点の克服のために自ら考えた練習のことです。仲間と自分の弱点を共有して、いま何が必要なのかを意識して練習をしています。勉強は毎日やっている人もいればそうでない人もいて、自分の必要なことを考えて取り組んでいます。

主体性の体現としては、花園県予選から試合前のアップ内容全てを選手で決めました。試合中もコーチ陣から指示を受けず、選手のみで問題点の改善やどのように戦うかを話し合いました。

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ここまでグラウンド内の話をしましたが、僕たちはグラウンド外のことに一番気を使っています。それが「環境美化」です。目的の一つは、細かいことにも気がつけるようになるために教室の環境整備などをしています。もう一つは、日本一の魅力のあるチームになるという目標達成のために取り組んでいます。主な取り組みとしては、ロッカーの上のものを無くしたり、教室内のゴミ拾いをしたりしています。

荷物整理にもこだわっています。 部室では①何がどこにあるか一目でわかる、②必要なものがすぐに取り出せる、ことを意識しています。もし荷物が見つからないと、60分という時間の中では無駄になってしまうので、そういったところまでこだわっています。

部活外のコミュニケーションで学び合う風土をつくる

小林:ありがとうございます。皆さんも聞きたいことが山ほどあると思うのですが、モデレーターの特権としていくつか気になるところを質問したいと思います。そもそもこうしたことをやるのは大変だと思います。どうやってチームの仕組みとしてみんなで支え合いやっているのでしょうか?

風間:高校3年生だけが一方的に言っても変わる限界があると思うので、下級生からも意見をもらうことを大切にしています。上下関係をいい意味でゆるくして、何でも言い合えるようにしています。

小林:入ってきた一年生にどうやってその関係を説明するのでしょう?もしかしたら今までが、ガチガチのヒエラルキーのある部活だった場合は戸惑ったりしないんですか?

風間:新チームになったときに中3から高校2年までが一緒にお昼を食べるなど、ラグビー以外のところからコミュニケーションを取るところから始めました。

小林:誰かがやれと言って始まったわけではないと思います。なぜそういうことが必要と思って始めたのでしょうか?

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風間:やはり、後輩の気づきから学ぶことがありました。そういう関係を作るためにはコミュニケーションをとっていこうということで、まずはポジションごとにご飯を一緒に食るなど、小さいところから始めました。

小林:主体練ではできないことをみんなの前でやるのは、場合によっては恥ずかしいと思います。わかっていてもやらない人もいると思うが、どうやっているのでしょうか?

風間:コミュニケーションが取れているので、お互いに何でも話し合えます。弱点を伝えて、手伝ってほしいというのもあります。コミュニケーションから入れば、恥ずかしさもなくなると思います。

小林:少し手持ち無沙汰だと思うので(笑)、ぜひ川崎さんからもお願いします。

川崎:風間くんの話を聞いて、うちの部下でもこんなにうまくプレゼンをしないなと(笑)。

風間くんの言っていた主体性は、ややもすれば内向的になったり、客観が失われて自分たちでやっていることに満足しがちだと思うんです。自分たちだけで限界をつくらずに進化させようと思った時に、苦労があったところ、難しかったなと思うところはどういうところですか?

風間:1年間チームを作る上でやはり波がありました。うまくいかない時に、どう盛り上げるか。ラグビーでもちろん結果を出せば士気が上がりますが、結果が出ないときもある。

そうしたときに日々の私生活や部活動を充実させることが、チームの士気を高めるには大切だなと思っていて。主体性というところで、自分たちだけで満足しないようにもちろん監督からも意見をもらう。このように選手の一方的な主体性ではなく、監督とお互い意見を交換し合いながら活動をしてきました。

テクノロジーとの掛け合わせで、部活動の悩みを解決する

改めて川崎です。よろしくお願いします。立教大学ラグビー部でキャプテンをやった後、住友商事に入社しました。2007年から4年ほど監督を務めた時期がありました。それから5年ほど海外赴任を経て日本に戻り、いまは社内起業制度のメンバーとして新しい技術を検討しています。住友商事の全グループ、327組の中に8組まで選抜されているのが、この「BUKATOOL」です。

どういうものを目指しているかというと、「アマチュア選手が直面しているスポーツの環境格差を無くし、高度なスポーツ環境、対等なスポーツ環境を実現する」こと。非常にいい環境でできているのはほんの一握りですよね。この格差を何とかなくしたいと思っています。

もう一つは「選手の挑戦を常に促し、高い志と広い視野の精神を併せ持ったスポーツ人材を育む」こと。きっと静岡聖光学院さんは、先生や監督の努力によっていい環境を作り、風間くんのような高い志を持ったようないい人が集まっていると思うんです。こうした環境をできるだけ多くの人に届けたいというビジョンとミッションを掲げています。

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様々な機能がある中で、本日は4つの根幹となるものを紹介しようと思います。

1つは「スキルシェア」。あふれているコーチの人材をマッチングして、困った人に提供したいと思っています。ただ、マッチングするにはお金もかかるし時間もかかる。そこで、優秀な人の脳みそをデータベース化したデジタルコーチと呼んだものを開発しています。どんなことを学びたいのかという引き出しを作り、その指導者が現場にいなくても常にその引き出しを見て指導を学ぶことができます。

2つ目は「テックシェア」。テレビ中継のスポーツをみると、ほとんどが背中にGPSをつけてリアルタイムで分析をしています。こういったものを代表クラスだけでなく、1対nと広げていきたいと思っています。また、コンディショニング管理のアドバイス活用にも考えています。

3つ目はこれらの活動を支えとなる「活動費の管理」。一生懸命やっている方は、会社のように財務諸表をつけています。ただ残念ながら、リアルタイムで誰が使っているのかが見えません。そのため「使ったレシートはどこかにいった」や「書類不備があった」といったこともあります。会計の管理も見える化を行い、「チームの弱点が◯◯だから、この備品が欲しい」といったところまでつなげたいと思っています。

4つ目は「応援機能」です。ホームページがあるにもかかわらず、母校のチームの試合があるのかわからないことがよくあります。こういうのをどんどんカンフル剤にして、部活を見える化していきたいです。Jリーグでリクルートさんが「Jマジ!」というのをやりましたが(19・20歳のJリーグ無料招待)、その時に一番多かったのが女性で目的はイケメンだったりします。部活動生も見られて、やっぱり意識が高まります。風間くんもモテたいよね?

風間:はい(笑)。

川崎:動機って真面目だけではないと思うんです。ゲームとの連動など、本当にユーザーが楽しめるものも組み合わせようとしています。急に風間くんのピュアな世界から泥臭い話になりましたが(笑)、これがいま考えているビジネスの話です。

これからの部活動の在り方

小林:今後の部活動に対してどんなビジョンを描いているのか、締めに聞いて終わりたいと思います。

川崎:本当に貴重な機会をありがとうございました。私は会社に入って20年くらいですが、ラグビー部での経験をまずまず感じた社会人生活だと思っています。全体のレベルが上がって「日本の部活って最高だな」と世界で取り上げてもらえる、そういうことに貢献していきたいです。世界から日本の部活を見にくるものにできればと思っています。

風間:部活動を通して、もちろん運動能力の向上もありますが、人間性や社会性を学ぶ場としてあればいいと思っています。人間性・社会性を学べる部活動はまだ多くないと思うので、少しでも増やせるような活動をしていければと思っています。今日はありがとうございました。

小林:部活動に携わっている方も多くいらっしゃると思いますが、その実情や現状をなかなか知ることはできません。そういう意味でも、一つの成功事例として静岡聖光学院の風間くんからお話を聞く場は、いい機会だと思いました。実体験に基づく、現場よりの濃いお話になったのではないでしょうか。もしかしたらこの中から、3年後に部活動を変える人が出るかもしれません。これからも皆さんと、問いを深めていけたらと思います。


【スピーカー】
・川崎 大氏
立教大学体育会ラグビー部GM補佐 / 住友商事株式会社
・風間 悠平氏
静岡聖光学院ラグビー部3年

【モデレーター】
・小林 忠広氏
NPO法人スポーツコーチングイニシアチブ代表理事

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記事提供:一般社団法人スポーツコーチングJapan