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ヘディングで高く飛ぶためのコツは「片足」で踏み切ること/箕輪義信氏考案の競り合いに勝つための練習方法

COACH UNITED ACADEMYでは、かつて川崎フロンターレの守備の要として活躍し、現在は川崎市立菅高校のサッカー部監督として、高校年代の指導にあたる箕輪義信氏のトレーニングを公開中。現役時代は『川崎山脈』と呼ばれたDFラインの一員として、空中戦に無類の強さを発揮した箕輪氏による「指導者が知っておくべき、ヘディングの正しい指導法とポイント」。後編のテーマは「競り合いの中でのヘディングの実践方法」と題し、プロで培ったトップレベルの技術を、惜しげもなく披露してくれた。指導者だけでなく、選手も必見の映像である。(文・鈴木智之)

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ヘディングのベースとなる目測を養うトレーニングから開始する

後編のトレーニングは、ヘディングをする上でのベースとなる「目測」を養うメニューから。箕輪氏は「最近の子どもたちは外で遊ぶ時間が減ってきて、ボールの距離を測るのが苦手な子が多い」と語る。かつては公園でサッカーや野球、バスケットボールなど様々なスポーツを遊びの中で行っていたが、現代はサッカーならサッカーだけ、という子が多いのが原因のひとつだろう。

「サッカーは足下でボールを扱うので、3次元にあるボールの距離感を測ることのできる子が減ってきています。そのため、まずはボールの落下地点を見極めて素早く入り、両手でキャッチする練習から始めます」

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この練習のポイントは「落下地点に入ったら動かずに、両手を伸ばして、そこにボールがスポッとはまるようにすること」(箕輪氏)。2人1組で投げ役とキャッチ役に分かれ、5本交代で行っていく。

ボールの落下地点に入るという、ヘディングの基本をトレーニングしたところで、「ジャンプヘッド(正面)」に移行。ここでも2人1組になり、片方が投げて、もう片方がヘディングをする。

箕輪氏は選手たちが実践する様子を観察する中で、「空中で頭を引きすぎていて、上半身が反った状態になる選手が多い」と指摘。その状態ではヘディング時のミートポイント(眉間のあたり)で正確にボールをとらえることが難しくなる。

「正面のボールをヘディングするときに、ボールを引きつけることを意識しすぎすると、体が後ろに下がってしまいます。そのため、真上に跳ぶことを心がけましょう」

そう言って、デモンストレーションを披露。ここでのポイントは「腕の振りと足上げ」だ。

「高く跳ぶためのポイントは、高跳びのように腕の振り上げと足の上げがセットになっていること。片足で踏み切り、勢いをつけてジャンプするのですが、そうすると『慣性の法則』が働いて、全身が前に行ってしまいます。そこで腕を振り上げて、少し後ろに跳ぶ意識を持つと、真上に高く跳ぶことができます。その状態で眉間でボールをとらえて、前に押し出すようにインパクトしましょう」

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高くジャンプをするためには必ず片足で踏み切ること

続いては、正面から飛んでくるボールに対して、片足で跳ぶことを意識したジャンプヘッドのトレーニング。箕輪氏は選手たちに「両足で跳ぶのはやめよう」と指導をしているという。

「ヘディングの競り合いは『高い場所での空間の取り合い』です。当然、相手よりも速く、高く跳ぶ事で、空間を自分のものにでき、ヘディングで競り勝つことができます。高く跳ぶためには、先程もお伝えしたとおり、腕の振りと足の振り上げが大事になります」

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両足ではなく、片足で踏み切ることで高く跳ぶことができると同時に、片足で跳ぶためには、足の踏み変えがスムーズにできないと、急にボールが来た時に勢いよくジャンプすることができなくなってしまう。

「そこで、このトレーニングをします。2人1組で向かい合ってボールを投げ、ヘディングをするのですが、腕を振り上げて跳ぶことと、右、左、右とリズムよく足を踏み換えてジャンプすることを意識させます」

最初は一定の高さのボールを投げ、慣れてきたら山なりやストレートボール、相手のタイミングを外して投げるなど、バリエーションをつけていく。ヘディング役の選手は異なる球種、スピードに対して、目測して素早くボールのコースに入ること、リズムよく足を踏み変えて、タイミングを合わせる動きをトレーニングしていく。

基本トレーニングの最後は「ジャンプヘッドサイド」。ボールに合わせて左右、横に移動し、頭の側面でボールをとらえるヘディングだ。横から来るボールに対して、体をひねるのではなく、眉毛の横の骨が固くなっている部分をボールに当てて、押し出すようにヘディングをする。

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「ヘディングをするときは、腕を上げて、両腕でしっかりと(競り合う)相手をブロックすると同時に、腕の力を使って勢いをつけます。そして片足でジャンプした時に、踏み切らない方の足の膝を上げます」

指導をするときは、「腕を使えているか」「片方の膝がしっかり上がっているか」をチェックしていくという。

「膝を上げ、そこから足と腕を使って頭を押し出して、ヘディングをします。頭の押し出しばかりに意識が行ってしまうと、高くジャンプすることができません。また、首を振ってヘディングをするのではなく、頭を押し出してボールに当てるイメージでプレーしましょう。そうすることで、強いボールを打ち返すことができます」

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動画では実践編として、様々な競り合い(対人プレー)の中で、ヘディングに勝つ技術や腕、体の使い方を箕輪氏が直々に指導している。日本代表レベルの質の高いプレーを習得し、自チームの選手たちのレベルを上げたい指導者には参考になるだろう。加えて、現役選手、とくにセンターバックなどヘディングをする機会の多い選手は、絶対に見ておくべき内容なので、ぜひ動画で確認してほしい。

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【講師】箕輪義信/

1976年、神奈川県川崎市生まれ。1999年に仙台大学から、ジュビロ磐田に入団。2000年に川崎フロンターレへ移籍し、レギュラーに定着すると、2005年には日本代表にも選出された。2008年にはコンサドーレ札幌(現・北海道コンサドーレ札幌)へ移籍し、2011年に現役を引退。2012年より体育教師を務め、現在は神奈川県立菅高等学校サッカー部監督。