12.02.2019
実戦形式で認知と判断のスピードを早める方法/マルバサッカースクールの相手の状況で選択肢を変える練習法
『個の仕掛け』を中心にトレーニングを行い、対人プレーに優れた選手を多数輩出する、マルバサッカースクール。2019年の『バーモントカップ(第29回全日本U-12フットサル選手権大会)』では、マルバ千葉とマルバ茨城がともに3位に輝くなど、スキルの高さは日本でもトップレベルにある。
COACH UNITED ACADEMYでは、マルバサッカースクールの根本久敬コーチに「相手を見てドリブル、またはパスの選択肢を見極める練習法」というテーマでトレーニングをしてもらった。後編のテーマは「数的同数、ゲーム形式の中で判断力を上げるトレーニング」。より実戦に近い設定で、どのような練習メニュー、コーチングのもとに、選手の技術力、判断力を向上させるのかを紹介したい。(文・鈴木智之)
ゴールの方向を見つつ、守備の選手がどう守っているかを見極める
動画後編、最初のトレーニングは「3対3+1フリーマン」。
この練習はフットサルコート半面に7人が入るので、スペースが小さく、おのずと周囲を観て、素早く判断することやファーストタッチを正確にコントロールなど質の高いプレーが求められる。
根本コーチは、攻撃側の選手に対して「パスコースが切られている場所はどこ? 空いている選手はどこにいる? 空いている選手をどう使うかを考えよう。ゴール方向にいる選手を狙えると良いよね」とアドバイス。さらに、「プレーの優先順位としてはゴール方向なので、まずはゴールを見ること。そこから、守備の選手がどう守っているかを観よう」と説明していく。
プレー中には、味方選手にプレーする時間やスペースを与えるために、周りの選手はどうすれば良いかを質問。相手のディフェンダーを引きつける位置に動くことで、味方にスペースを与えること。パスを受ける選手は、周囲の状況を見ながらポジションをとることに言及し、「自分がどこにいればいいか、どのコースに進めばいいかを、周りの選手の状況を観て決めよう」というアドバイスが送られていた。
途中からフリーマンを外し、「3対3」に変更。
それによりマンツーマンになるので、プレー強度が上がるとともに、より周囲の選手のサポートの意識、プレーの判断スピードが求められるようになる。根本コーチは「相手がどこを守っているかを観よう。ギリギリまで相手を観て、プレーを変えよう」と、判断の重要性を繰り返し、伝えていく。
DFの状況を見て前に進むか、その場に立ち止まるのかを判断する
次は「4対4(エリア分け数的優位)」。
フットサルコートを手前と奥の二面に分け、手前のゾーンで3対2を行い、奥のゾーンに進入したら4対4の同数となり、ゴールを目指す(GKは両チームに1人ずつ入る)。
ここでも、プレーの判断について、繰り返し問いかけていく。
攻撃側の選手に対しては「いまは前に進んだ方がいいのか、それとも行かないほうがいいのか。DFが来ているのが見えたから、後ろにパスを戻そうなどを考えて、DFがどこを守っているか、観ながらやろう」と説明し、守備側の選手には「DFは喋ろう。(手前のゾーンでは)相手の方が1人多いのだから、後ろの選手が声を出して、前の選手を動かさなければいけないよ」と指示を送っていた。
しばらくその設定でプレーを続けたあと、難易度を変更。ルールを「奥のゾーンにいる攻撃側の選手は、手前のゾーンに降りてきても良い」とすることで、「さっきと何が変わる?」と質問をし、「スペースの空き具合が変わるよね。それを観ながらやろう」とポイントを伝えていく。
後編の動画では、トレーニングを通じて、周りを観てポジションをとることや、プレーの選択を変えることに対して、重点的にコーチングしていた。攻撃の選手は「守備の選手はどのコースを狙っているか?」を考えてパスコースを選ぶとともに、周囲にいる選手は、ボール保持者がプレーしやすい状況を作ること、プレーするためのスペースの確保など、周囲の状況を観て、素早く判断して動くことへの意識付けを行っていた。
動画を見ていただけるとわかると思うが、マルバの選手の技術(止める・蹴る・運ぶ・かわす)は非常に高い。その高い技術を、状況に応じてどう使うのかをコーチングすることで、より効果的なプレーになっていくのが印象的だった。
技術の向上に加えて、スペースの作り方や状況判断、認知のスピードを高めるためのポイントなど、今回の動画は参考になるところがたくさんある。とくにジュニア年代の指導者にとって、必見の映像と言えるだろう。
【講師】根本久敬/
1979年10月17日生まれ。柏レイソルU-18-柏FCを経て、2005年よりマルバサッカースクールでコーチを務めている。
取材・文 鈴木智之