12.09.2019
数的同数の中でDFラインを突破するための攻撃戦術とは?/グループ戦術の中で個人の判断力を高める練習方法
2018年度にU-11が激戦区の東京大会で優勝し、関東大会に出場するなど、強豪の地位を築いているJACPA東京FC。個人の技術と判断を融合させた、質の高いチーム作りには定評がある。
そこで今回はU-11の鈴木宏輝コーチに「グループ戦術をもとに、個人の判断力を上げるオフェンストレーニング」を実施してもらった。前編のテーマは「数的優位、同数の中での崩し方の習得」。シンプルな練習メニューながら、的確なコーチングで選手達のプレーが変わる様子をぜひご覧頂きたい。(文:鈴木智之)
数的優位の状況でも味方が相手の背後に隠れているならパスは出さない
鈴木コーチは「2対1、2対2を中心に、フットサルの戦術を入れながら、崩しの引き出しを増やしていきます。相手と味方の位置を考えながら、ボールを持っている選手、持っていない選手、相手などの判断材料を認知できるトレーニングを行います」と話し、トレーニングがスタートした。
1つ目は「2対1のボールポゼッション」。攻撃側と守備側に分かれ、長方形のグリッドの中で、2対1のボールポゼッションを実施する。決められたスペースの中でボールを保持し続けるためには、「どの位置でボールを受けるか」「どのタイミングでパスを出すか」「守備側の選手はどこにいるか」など、様々な要素を認知する必要がある。
鈴木コーチは「一人ひとりが簡単にボールを失わないこと。パスが通らない状況で無理に出さない。ボールをキープしても良いのだから、ボールを大事にしよう」「もうひとりの選手は、どの場所に行けばパスを受けられる?」などの声掛けを行い、パスを受ける選手に対して、ボール保持者に近づきすぎないことをコーチングしていた。
鈴木コーチは選手達の動きを見ていく中で、途中でプレーを止めてアドバイスを送る。
「味方が相手の背後に隠れているのにパスを出す。そして奪われる。これは試合でもよくあるよね。味方が相手に隠れないように、ボールを持っている選手が動いて(ドリブルで運んで)、味方の顔が見えるところまで行こう」
さらには、パスの受け手に対して、守備側の選手の逆をとる動きにも言及。「(ボールを持っていない)周りの選手はどこに動けばいい?」などの問いかけで、認知、判断に働きかけていく。
パスの受け手には「守備側の選手の後ろ側を走るなどの動きをして、相手の視野から消えよう」。パスの出し手には「身体の向きなどでフェイントを掛けることで、守備の選手の逆をとれるし、パスを受ける味方にも余裕が生まれる」と、駆け引きの重要性を説いていた。
パスばかりになるのではなく、突破できる状況ならドリブルを選択する
次は「2対1→シュート」。ゴールを使い、攻撃側2人、守備側1人+GKの設定で行う。オフサイドありのルールなので、攻撃側のボールを持っていない選手は、どこでパスを受けるかを考える必要がある。
鈴木コーチは「攻撃側はパスとドリブルという、二つの武器がある。守備側の選手がパスコースを切っているときはなにをすればいい?」と問いかけ、選手が答えるとこう続ける。
「縦にドリブルだよね。相手が横を切っているのだから、縦に仕掛けてシュートを打とう。そして相手が縦を塞ぎにきたら、横にパスを出せるよ」
「2対1→シュート」の練習の目的は、シュートを打ってゴールを奪うこと。そのために、どう動いて、シュートまで持ち込むかを考える必要がある。
鈴木コーチは、ボールを持っていない攻撃の選手に対して、「ボール保持者に近いと、相手は守りやすい。幅と深さをとろう。オフサイドにならず、ゴールから遠すぎない位置。つまりDFと同列の位置をとって、ファーストタッチでシュートまで行けるように。ゴール方向に対して、ボールをコントロールできるかな? 目的は点を取ることなので、ファーストタッチでゴールに向かおう」
トレーニングを通じて、鈴木コーチはシンプルな言葉でわかりやすくコーチングしている。このあたりの言葉の選び方や伝え方は参考になるだろう。
ここでは、味方とイメージを合わせるために、声を出してコミュニケーションをとることや、ドリブルの仕掛けで守備側の選手を食いつかせて、パスの受け手がプレーしやすい状況を作ることなどについてアドバイスをしていった。
前編の最後のトレーニングは「2対2→シュート」。設定は同じで、DFが一人増える。ここでは「ゴール前では突破を仕掛けること」の大切さを強調。ボールを保持するのが目的ではなく、ゴールを決めることが目的なので、そこに対してどうパスやドリブル、コンビネーションを使って行くかについてアプローチしていった。
また動画には、鈴木コーチによるフットサルの動きを使った、数的同数での突破のパターンも収録されている。
具体的には「ゴーストップからのワンツー」「パラレラ」「ブロック」「ブロック&コンティニュー」「アラコルタ」「ドリブルアット」などの動き方を実演しているので、ぜひ参考にしてほしい。
鈴木コーチはトレーニングを終えた後に「この年代は個人の突破も大切な要素です。パスばかりになるのではなく、積極的にチャレンジしてほしいと思います。ここで実践した動き方は、選手のプレーの引き出しを増やすためのものです。この動きをベースに、状況に応じて自ら工夫していってほしいと思います」と締めくくった。
後編では「練習ではできるのに試合ではできない」という悩みを解決するために、「試合の中で発揮するために、スピードのある中で判断を磨くトレーニング」を紹介したい。
【講師】鈴木宏輝/
宮城県でFC FRESCA、ベガルタ仙台スクールを指導。2004年から14年、JACPA東京Jrユースを指導し、2019年よりJACPA東京FCU-11のコーチを担当。Fリーグ フウガドールすみだの前身、「BOTSWANA」でもプレーし、フットサルにも精通している。JFA公認A級コーチジェネラル、フットサルC級コーチライセンスを持つ。
取材・文 鈴木智之