08.05.2019
パスとドリブルの判断の身に付け方/8人制サッカーの狭いスペースでフィニッシュまで持ち込む攻撃方法
COACH UNITED ACADEMYでは、東京都の強豪として知られるJACPA東京FC U-12のトレーニングを公開中。2018年度には『全日本U-12サッカー選手権大会 東京都大会』で準優勝に輝くなど、目覚ましい躍進を見せるJACPAは、どのようなトレーニングでチーム力を高め、個を伸ばしているのだろうか?
動画後編ではU-12の斎藤健太コーチに「狭い局面を打開し、フィニッシュまで持ち込む攻撃方法」をテーマに、「ゲーム形式の中での攻撃のリズムの組み立て」を構築するメニューを実践してもらった。(文・鈴木智之)
狭いスペースを攻略するには必ずどこかでワンタッチプレーを入れる
動画後編、最初のトレーニングは「4対4」。グリッドの四隅に四つゴールを置き、相手チームの背後にある二つのゴールを目指していく(ゴールはドリブル通過に限定する)。ポイントは、パスコースやスペースを見つけながらボールを運ぶこと。パスとドリブルの判断。体の向きや位置を作ること。角度や同列を意識して相手の逆をとること。攻守の切り替え、二つのゴールを見る守備となっている。
8人制サッカーはピッチが狭いため、4対4など数的同数で、コンパクトな局面を打開しなければいけない状況が頻出する。斎藤コーチは前編で行った「相手の逆を突くための同列ポジション」をとり、ファーストタッチでゴールに向うコントロールをした選手に「ナイス!」と声をかけていた。そしてパスを出す選手に対しては、受け手の名前を呼ぶことを徹底。コンビネーションを高めることを意識づけしていく。
狭いスペースをワンタッチプレーで打開するためには、パスを出した選手がサボらずに動き続けることが重要になる。斎藤コーチは「どこかでワンタッチプレーを入れよう。ゴールが二つあるので、攻撃方向を変えることで相手の守備全体の逆をとることができる。 縦にパスを入れたところで、全体の連動性のスイッチを共有しよう」と、相手を見てプレーすることの重要性を説いていく。
さらに、次のステップとして人数は変えずにゴールを変更。グリッドの短辺に、新たにひとりずつ選手を追加し、その選手にパスを入れることを目的とする。
ゴールが一箇所になったことで、守備側は攻撃側の攻撃方向を限定しやすくなる。
攻撃側はよりプレッシャーがかかる状態で、守備側の選手と同列をとった状態でパスを引き出し、ワンタッチコントロールでゴール方向へ進み、相手をかわす。そのためのパスやコントロールの精度を高めていく。
ゴールに近い位置では「無理に球際を頑張らない」
トレーニングの締めくくりは「5対5+GK」。シュートの場面が次々に出るゲーム形式で、サッカーの本質である「ゴールを奪い、ゴールを守る」部分にフォーカスしていく。ここでは、ゴールとゴールの距離が近いので、プレーエリアは非常にコンパクトになっている。狭いスペースの中で、これまでのトレーニングで培った技術や判断、コンビネーションを駆使してゴールを目指す。
ここでのキーワードは「奪ったボールをシンプルに動かしてリズムを作ること」。攻守の切り替えを速くすることで「本気で動いたら、5分で疲れる」(斎藤コーチ)というメニューだ。
トレーニングが始まり、まず斎藤コーチが投げかけたのは「常にシュートを意識しよう」という声。その声掛けで選手たちの意識がシュートへと傾き始め、フィニッシュの場面が増えていく。
さらには「球際は頑張らない」という耳慣れないアドバイスが飛んでいた。これは、相手からボールを奪った瞬間、再度取り合いになるのを防ぐためのコーチングで「奪ったボールをすぐに、近くにいる味方に渡す」という意味がある。そうすることで攻撃のリズムが生まれ、相手スペースに素早くボールを運び、これまでの練習で取り組んだゴールを目指す動きが増えていく。「球際は頑張らない」の実演は、ぜひ動画で確認してほしい。
トレーニングはテンポよく進み、「5対5+GK」で終了。斎藤コーチはこの日のメニューに対して、「ゲーム形式の中で、攻撃リズムの組み立てをポイントにトレーニングを行いました」と振り返り、次のように続けた。
「8人制サッカーでは、狭い局面を打開するプレーが必要になります。その中でパス技術や攻守の切り替え、攻撃リズムの組み立てなどが重要です。今回紹介したトレーニングから、それらを学んでいただければと思います」
【講師】斉藤健太/
仙台大学を卒業後、株式会社ジャクパに入社。22年間、JACPA東京FCの指導に携り、2018年度のJA東京カップを制するなど、U-12コーチを担当した。
取材・文 鈴木智之