05.20.2019
数的同数の状況でシュートチャンスを作るトレーニング/FC市川GUNNERS U-12が実践するアタッキングサードの攻略方法
COACH UNITED ACADEMYでは、FC市川GUNNERS(ガナーズ:前アーセナル サッカースクール市川)U-12で監督を務める、南里雅也氏のトレーニングを公開中。「アタッキングサード(ピッチを横に3分割した時の相手チームのゴール側のエリア)を攻略し、ゴールを奪うためのシュートトレーニング」をテーマに行う実技の後編は「数的同数の状況でシュートチャンスを作る実戦練習」を実施。ゴール前に進入し、得点を決めるためのトレーニングとコーチングを紹介したい。(文・鈴木智之)
数的優位な攻撃場面ではピッチを広く使い、テンポよくボールを動かす
南里監督はトレーニングの前に「ゴールへ向かう中で、必要になるのがドリブルやパスを使った突破です。ボールに対して複数の選手が関わる中で、ドリブルをするかパスをするのか、シュートをするかという判断が、サッカーの面白いところでもあります。当然、ミスをすることもありますが、チャレンジを恐れずに、ゴールをする喜びを子どもたちから引き出したいと思います」と心構えを語った。
前編でのトレーニングを経て、後編では「5対4」からスタート。横長のグリッドを使い、攻撃側が5人、守備側が4人+GKという設定だ。攻撃側はゴールを目指し、守備側は奪ったボールを2つのミニゴールに入れれば勝ちとなる。
トレーニング前編で「シュートの意識」「相手の守備を突破するためのコンビネーション」に取り組んだため、後編では実際の試合に近づけた設定が用いられた。南里監督は「相手が集まってきたら、サイドチェンジをしよう。攻撃側は1人多いので、テンポよくボールを動かそう」とアドバイスをし、前編のトレーニングで行った「2対1のワンツーからの突破」を意識させる声がけを実施。攻撃側がシュートまで持ち込む場面が出ると「フィニッシュまで行けている。良くなっているから、どんどんチャレンジしよう」と、トライを促す声かけで、選手たちを盛り上げて行く。
また、攻撃側にボールを奪われた後の守備のアクションにも言及し「攻撃側は1人多いので、相手がボールを持ったらパスコースを消しながらプレスをかけよう。攻撃と守備を切り離さないこと!」と、攻守の切り替えの重要性を説明。その後、5対4から6対5へと人数を増やし、実戦へと近づけていく。
数的同数の攻撃場面でも中央の突破を優先する
続いてのメニューは「4対4」。攻撃側と守備側が同数になることで、攻撃側にとってはプレーの難易度が上がる。当然、ボールを奪われる場面も多くなるが、南里監督は「とにかくチャレンジすること」と話し、積極的にプレーするように選手の背中を押していく。そして、前編のトレーニングで行ったカットインや縦パスのコンビネーションが出たときには、大きな声で「ナイス!」と褒めていた。
また、守備側のマークがタイトな状況で、サイドへの横パスを選択する選手に対して「ポジショナルプレーの基本はトライアングルの関係性を作ることだけど、サイドへのパスだけを考えていると、相手は守りやすい」と説明。正面にいる相手をずらして、縦パスを入れるように促していた。
トレーニングの最後は、実際の試合に人数を近づけた「7対7」で締めくくり。ここでも、選手が突破など積極的なプレーをしたのを見逃さずに声を掛けていく。一貫して、チャレンジする姿勢を褒める姿は、指導者の視点からも参考になるだろう。
南里監督はトレーニング後、感想を次のように語った。
「後編では、一度にプレーする人数を増やし、実践に近づけていきました。指導者が考えるよりも、選手が自分を俯瞰して見ることは難しいものです。数的同数やスペースが狭い状況になると、慌てることもあります。そうなった時でもボールをしっかりと動かして、中央を優先しながらサイドを使い、数的優位を活かすための認知、判断もテーマとして取り入れています。良いシーンだけではないですが、皆さんの参考になればと思います」
トレーニングの全容は動画で公開中。トレーニングの構成、テンポ、声掛けの内容、タイミングなどは、ぜひ映像で確認してほしい。
【講師】南里雅也/
埼玉県社会人リーグ1部でチームを保有し選手と指導者として12年活動する。その後、ジュニア世代からの育成に着目し、GRANDE FC(埼玉)・FC PROUD (東京)・アーセナルSS市川(千葉)を経て現在の「FC市川GUNNERS U-12」の監督として指導にあたる。自チームの活動のほかに『プレミアリーグU-11』の運営と『Football Leaders in Tokyo』を主催し、育成年代の活動に注力を注いでいる。
取材・文 鈴木智之